湘南鎌倉総合病院
  • 湘南鎌倉総合病院ホーム
  • 湘南鎌倉総合病院アクセス
  • 湘南鎌倉総合病院お問い合わせ
  • 湘南鎌倉総合病院プライバシーポリシー

ブログ

2016年

6月

30日

国立がんセンター 都道府県別がん分析

国立がん研究センターから2012年度のデータをもとに地域別のがんの発症率を出し比較したものが公表されました。ホームページでも見ることができます。
年齢構成の差を調整して比較しても、がんと診断される人の割合を示す発症率は男性では秋田、和歌山、石川の順で高く、女性では東京、福岡、石川の順。また死亡率は男性では青森、佐賀、大阪、女性では大阪、青森、福岡の順であるという。
部位別では胃がんは男女ともに東北、北陸から山陰にかけての日本海側で目立ち、肝臓がんは男女ともに山梨県や西日本で目立つ。これは胃がんは食塩摂取量と、肝がんは肝炎ウイルスの感染者数が多い地域とほぼ一致するようである。
発症率が高くても死亡が少ない県では検診や地域での保健指導など、地域毎での取り組みや地域連携が進んでいるのではないかと分析されていた。神奈川県はどうかというと、全国平均よりも男女ともに割合が低かった(全国を100として男性83.8、女性86.1)。これは良いのか悪いのかは不明。人口の割に検診を受けている人が少ないのかもしれない。

2016年

6月

28日

公開講座 in 本郷台

モネのような光景ではありませんか。私の好きな河口湖湖畔でとった風景です。

さて2か月に1回病院の公開医学講座の役回りがあり、マーケテイング戦略、患者サービスの一環として外に出て講演をしています。血液疾患は循環器や呼吸器、消化器と比べても患者は少ないから、それほどたくさんの方が聞きにくるわけではないのですが、悪性リンパ腫は頻度が多いこともあり、他の病院で治療を受けている方や知り合いが治療を受けていて・・・と質問にこられるかたもいる。皆さん私の話はどちらかというと復習みたいな感じだ。
質問の中で「どんなことに注意して生活したらよいか?」と聞かれた。でも再発を完全に防ぐものなんか存在しない。私が10年以上診させていただいている患者さんがいるのでそれらの人をみていると、「この人はほぼ大丈夫」と思ってても5年目に再発した人もいるし、他のがんがひょっこり見つかる患者さんもいる。また抗がん剤治療が関連する骨髄異形成症候群になってきた人もいる。何かのサプリメントがとても良かったと思った人はいないし、特別な食事をしていた人もいたがかえって逆効果にみえた。ただ私の患者さんでは他の病気に対しても責任があるから少なくとも5年、またそれ以降も3~6か月に1回は来院してもらい診せてもらっている。かかり続けていてもらっていたことで症状が出るより早く対処できたかな~と思う人もいる。いったいいつまでフォローすべきかは難しいことであるが、よくなっても半年に1回くらいは顔をみせておいてもらったほうがこちらも忘れないし、途中経過がわかるということもある。またご家族のほうが先に具合が悪くなることも多く、人生わからないものだな~なんてよく思わされている。

2016年

6月

21日

東京西徳洲会病院にて医療安全の講義

東京西徳洲会病院は東京昭野市にある我々の関連する病院で、当院で勤務していた外科や外傷整形外科などの医師がそこで働いています。オープンして10年になりますが、当院の外科部長だった渡部医師が院長として赴任され現在も改革を行っているところです。稼働ベットも着実に増え、成績もあがってきているとおききしました。
昨年も医療安全の講義に招かれましたが、今年もお招きいただきました。我々がどのようにとりくんでいるかを紹介しながら改善していくためのヒントをお話しさせていただきました。170名近いかたが集まり、当院に比べて熱心、というよりトップの力が浸透しているのだろうなと思いましたし、話もみなさん熱心にきかれるのです。そして昨年よりも積極的な感じ、またアンケートをとってみると昨年よりも医療安全の大切さ(基本)が自らがとりくむべきことであるという姿勢に変わってきているように感じました。患者誤認をとにかくなくしたい、医療の質をあげたいというトップの姿勢が伝わりました。何をどうしていきたいのか?トップのゆるがぬ目標、メッセージというのはとても意味のあるもの、組織の方向性をきめる大切なものであると感じました。

2016年

6月

20日

世界難民の日 6月20日

6月20日は世界難民の日である。世界で6500万人の難民がいるという。フランスの人口より多いそうだ。1950年からで今が最も多い数字である。シリア情勢が不安定でありシリアから1170万人、イラクから490万人、ソマリア、アフガニスタンからも多いらしい。それだけ安心して住める国が世界でなくなっているというわけだ。すべて戦争や政治的不安がもとになっている。独裁的であってもまだ秩序が保たれていたときのほうがよかったのかもしれない。イラク戦争から脈々と続く世界的な不安定さ。そこにもたらされる地域の崩壊。自分のこれまで作りあげてきたものを捨てて、故郷を捨てて生きなければいけない人々。影響を受けているのは一般の人々。世界的に権力を持つ人、国を治める人々の責任は大きい。ニュースでみていて本当に気の毒だと思うが、でも他人事、遠い国のことであるように思われる。トルコが250万人、ドイツも14万人もの難民を受け入れているが、日本はたったの27人。もっと人々をうけいれなくては・・・という意見もあるが、日本国民は自国の経済に大きな負担をかけてまで移民をうけいれるかというと実は他国以上に排他的なのではないかという気がする。じゃあもっと近い国でもし同じことがおきたら?北朝鮮で同様のことがおきたら? そんなことを考えながら報道されるニュースをみていた。

2016年

6月

15日

B型肝炎の活性化に注意する薬剤はたくさんあります。

悪性リンパ腫でR-CHOP療法を行う血液内科医は以前からB型再活性化には注意を払ってきた。治療前にはB型肝炎の抗体、抗原をもっていないか必ず測定をし、ウイルスがいれば抗ウイルス薬を投与しながら治療をするし、また抗体が陽性なだけであれば途中ででてこないかウイルス量を測定する。(これが時に落ちてしまうのだ)

最近は抗がん剤治療も様々なものが増え、また高齢者でも副腎皮質ホルモン(ステロイド)を大量を使用することもあるしリウマチでは免疫抑制剤がたくさんでており、それにより免疫抑制がかかり結核をはじめとした感染が問題になっている。これらはいずれもB型肝炎再活性化のリスクがある薬剤である。完全には予防できないとされるものの、治療前スクリーニングによりHBVウイルスの再活性化のリスクが高い人を把握ししっかりモニターし早期に治療を開始することが重症化を防ぐうえでも必要であるとされている。下に添付文書上にB型肝炎ウイルスの再活性化の注意喚起のある薬剤をあげておきます。(すべてではありません)やはり血液内科医が扱う薬剤が多いのがわかります。再度使用している患者の肝機能見直してみようと思います。

シクロスポリン(ネオーラル)、アザチオプリン、タクロリムス、サイモグロブリン、各種ステロイド
<抗がん剤、造血器腫瘍関連>アーゼラ、テイーエスワン、フルダラ、トレアキシン、ベルケイド、メトトレキセート、ポテリジオ、リツキサン、マブキャンパス、ジャカビ、ファリーダック
<リウマチ薬>ヒュミラ、オレンシア、アラバ、レミケード、エンブレル、シンポニー、シムジア、ゼルヤンツ、アクテムラ、リウマトレックスなど
<参考:Bristol-Myers Squibb 資料>

2016年

6月

14日

ダニによる感染症:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

虫刺されの季節がやってきた。蚊やダニには注意!と防虫スプレーなどがよく店頭に売り出されている。
ディートはアメリカ疾病センター(CDC)でも有効性が証明されている物質で米国では30%以上の高濃度のものがあるというが、日本製品は濃度が低く最高でも12%程度(薬事法で決まっている)。濃度が高いほど忌避効果の持続時間が長いようである(海外製品のほうが長時間効くってこと)。乳児への使用は避けたほうが良い。また、変わりにユーカリ油もディートと同様の効果が認められるらしい。

さて平成23年に初めて特定されたSFTS。一時重篤化する症例があることから話題になった。私は経験がないが、血球減少が著しくくることから血液内科に紹介されることもある疾患である。このSFTSはウイルスに感染することにより引き起こされる病気で、マダニが媒介する。主な症状はマダニに咬まれてから6日から2週間程度の潜伏期間を経て、発熱と消化器症状がみられる。重症化し死亡例も報告されている。平成25年1月に初めての症例が確認され、現在までに全国では20府県で176例(うち47例で死亡)(平成28年4月27日現在)。発症は西日本に多く、死亡例も決して少なくない疾患だ。多くの場合ウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染しているが、感染患者の血液・体液との接触感染も報告されている。<続く>

続きを読む

2016年

6月

11日

WHO分類2016についての講演会 in 横浜

造血器腫瘍(血液のがん)の分類はWHO分類が今は主体になっている。患者さんの診断をする時、病理所見だけではなくその他のデータなども参考にしながら、しばしばこの分類に我々血液内科医は立ち返る。2008年以降新しいものが出されていなかったが、2016年5月、血液学の権威ある雑誌『Blood』にその概要が出された。
リンパ系(リンパ腫、リンパ性白血病)、骨髄系(骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、MDS)に大きく分かれてレビューが載っている。そのリンパ系のサマリーを、WHO分類の編集に日本人として参画された名古屋大学の中村栄男先生が横浜にきて講義してくださるということで、病理の勉強会であったが参加してきた。
サマリーとしては新たな疾患単位としての提唱はないものの
(1)初期疾患の認識:follicular lympoma in sutu, Mantle cell lymphoma in situ
(2)小児の濾胞性リンパ腫、EBV関連リンパ増殖性疾患(高齢という言葉が外れる)
(3)び漫性大細胞型とバーキットリンパ腫の境界型、び漫性大細胞性リンパ腫とホジキンリンパ腫の境界型
   といった境界型の疾患に対するより詳細な明記
(4)新しくわかった疾患関連遺伝子の診断への導入;
有毛細胞性リンパ腫とBRAF,マクログロブリン血症とMYD88、マントル細胞リンパ腫とSOX11といったことをサマライズされていた。特に注目はピロリ陽性のマルトーマはピロリ除菌で80-90%が治癒するがそれをもうMALTOMAではなくて H.Pyroli-associated clona proliferationという疾患になるということであった。腫瘍と良性疾患に近いものとしっかり分けて過剰な治療を避けようという趣旨があることを述べられていた。
とても勉強になる講演で、改めて自分で論文を読んで把握するのに役立ちそうであり、また新しい情報を研修医にも伝えていかなくてはならない。

2016年

6月

10日

水銀血圧計はもう使わない?

外来診察の時に「以前のように血圧って診察室で測らないんですね」と残念がられたことがある。医師がコンピューターばかりみていて患者に向かない、触れないとよく言われるが、血圧すらも測らなくなったせいもあるだろうか。
当院では旧病院ではまだ使用していたが、JCIという国際病院評価を受けるにあたり、水銀血圧計は落とすなどして壊れるとその処理も大変ということで、すべて機械(各部署においてある)に変更となった。水銀血圧計は処分されたはずである(どこかよその病院にいったかも・・・)。
ところで日経メデイカルに情報が掲載されていたが、水銀に関する水俣条約から2020年以降水銀を使用した機器の製造、輸出入が原則禁止となり、廃棄処分も高騰化してくるであろうとのこと。国内の診療所に対して日本医師会が調査したところ、水銀血圧計が20万台レベルで存在することが予測されるという。水銀血圧計を使えなくなるわけではないが将来破棄できなくなるかもしれないので、処分を検討する医師もいるであろう。だんだん水銀血圧計がみられなくなるようになるのは確実。では水銀体温計は?私もまだ保有しているが使ってはいない。その指針は出ていないが、国がまとめて回収するようになるのでしょうか(当然実費で)。

2016年

6月

10日

ヒアルロン酸 関節内注入の効果は?

血小板が減少している患者さんが変形性関節症にて悩んでいて相談をうけた。関節内にヒアルロン酸いれるのどうですか?と。

さてさて、血小板数がいくつだったら安全に関節内にいれられるという研究はないが、一般的な穿刺検査や穿刺処置ではだいたい5万/μL以下ではしないほうが無難である。患者さんにはそのように伝えた。

じゃあ、輸血してやってみる価値は?
実はヒアルロン酸の関節内注入に関しては諸説あり、いくつかの研究論文も出ている。論文的にはそれほどの効果はなしというのが今の説である。

2015年12月に出た論文。ヒアルロン酸を変形性関節症の関節にいれて本当に症状が改善するかどうか研究論文をまとめて解析(メタ解析)したもの。19の研究論文(治療群で30人以上いる、4週間以上フォローアップしている論文)を拾ってきて解析すると、ヒアルロン酸の関節内注入は痛みのスコアを29%改善する効果はもつものの、ノンブラインド(患者が薬が入っているかどうかがわかる方法)で行った研究ではその効果の実感が非常に良くなる結果が出ている。ということから、治療効果は少しはあるがプラセボの面が大きいのではないかと述べている。(J Bone Joint Surg Am 2015 Dec 16.)
またもう一つの論文。最近でたもの(J Bone Joint Surg Am 2016 Jun 1.)。痛みのある変形性関節症に対してヒアルロン酸を投与するかステロイド(トリアムシノロン)を投与するかランダム化比較試験(どちらに投与するかランダムに選ばれる研究方法)を行った論文である。110人を対象に行われた研究で、両群ともに6か月のフォローアップで投与前よりも改善はみられ、2週間でも改善の程度はステロイドの群で大きかった。ただしその後では両群に差はなかったという。
結論からいえば少しは効果がある人もいるし、ない人もいるというところか。臨床の先生では感覚的に30%くらいは改善し、20%は効果なしといっていた。2013年アメリカの整形外科学会はヒアルロン酸は効果なしとの声明を出している。10年以上前から同じようなテーマのことが出てくるので、決着はつききっていないということかと思う。
この患者さんには輸血してまで効果が期待出来るものではないかも・・・とお伝えした。

 

2016年

6月

09日

井津建郎氏のアジアでの慈善活動 BS-1にて紹介

2016.6.9 NHK BS1夜10時からの国際報道で井津建郎氏のことが紹介されていた。
1949年大阪府豊中市生まれ。現在ニューヨーク州在住の写真家である。慈善事業家としても知られている。 

1993年から1996年にかけて写真作品制作のためにカンボジアを度々訪問。カンボジアへ何かの形でお返しをしたいという思いからシェムリアップに小児病院を建設することを決意。1996年 アジアの恵まれない子供達を助ける為、非営利団体フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーを設立。初のプロジェクトとして、1999年アンコール小児病院を建設・開院。運営にも携わっている。2014年 ワールド・オブ・チルドレン・アワード 保健賞 (この分野ではノーベル賞のような賞だそうである)を受賞された。

この日NHK-BSで紹介されたのはフレンズウイズオウトアボーダーが設立した、ラオス ルアンブラバンに昨年できた小児病院。この1年で1万人以上のこどもを治療。物資、スタッフが十分ない中で、本当に医療を求めている人のために身をささげて働く姿が紹介されていた。かつての徳洲会病院の救急をみているようだった。

彼がその番組の中で語っていた言葉に心がひかれた。彼がタイでみた病院。よい病院であったが、医療者はいてもその人がお金が払えない人であると見て見ぬふりをし治療をしない。同じ国に住む貧しい人が医療を必要としていても提供しない、そんな医療に疑問をもったと。
ラオスの病院はそういうことがない病院にしたいと語っていた。

<医療の原点>を井津建郎氏は立派に語っていた。私たち日本人も人々に高度な医療を提供して満足しているようであるが、お金で差別はしないにしても、本当に必要な人にみてみぬふりをして提供していないのではないか、逆に必要ない過剰な医療をしているのではないかと考えてみたのである。

そうはいっても、何とかしたいという気持ちを実現させるのとただ思うのとではまったく大きな違いである。20年もそのような仕事を続けておられることに素直に感動した。

 

2016年

6月

07日

チャンスは常に困難という衣装をまとった形で現れる

徳州新聞は毎週発行されている無料の印刷物で、患者さんも待ち時間を利用してよく読まれています。以前は政治色が強いものでしたが、今は各病院がどのように工夫して独自性をだし活動しているかということが紹介されています。また"直言"は各病院長が書いていますが、苦労されている院長の言葉には重みがあり、しばしば良い言葉に遭遇します。
さて、今回5月30日の文章は徳洲会理事長の鈴木隆夫先生が執筆されていました。
鈴木先生はアメリカで外科レジデントを勤めあげチーフレジデントとなり、その後帰国して茅ヶ崎徳洲会病院院長に若くしてなられました。地域の救急を担うなくてはならない病院に作り上げ、その後も徳洲会の病院立ち上げに尽力されてきました。私が若かりし頃は当院にいらっしゃることも多く、病理の心得がある鈴木先生が我々が行った病理解剖の検体を土曜日の早朝から寒い剖検室にて一緒にみて教えてくださったことを思い出します。その当時も切り出しをしながらアメリカのことを語ってくださったのを覚えています。今回の直言ではその頃の苦労を書いていらっしゃいましたが、とても良い一節がありましたので紹介します。
<チャンスは常に困難という衣装をまとった形で現れる>
良い言葉ではありませんか。困難がきたとき、真摯にそれに向き合えって対処をすればそこから学ぶことは必ずあり、自分の成長につながる。
年をとって身をもって体験しないとこの言葉の良さは分からないかもしれません。

2016年

6月

04日

多発性骨髄腫のlecture meeting in 東京

紫陽花の季節がやってきました。家庭の庭や公園、道路など様々な場所で色とりどりの紫陽花が楽しめ、歩いていても楽しくなります。
さて、この日東京駅近くのカンファレンスルームで、東日本の骨髄腫を診ている先生方が症例を出し合いながら語る会『Lecture Meeting for Multiple Myeloma』が開かれました。基礎研究から各骨髄腫の治療薬の効くメカニズムを解明されている自治医科大学の古川雄祐先生、日本赤十字社医療センターの鈴木憲史先生のお話しがあり、その後一般臨床の先生方による症例提示がありました。

昨年panobinostat, ファリーダックという薬剤が治療抵抗性の骨髄腫の治療薬として発売されました。下痢が副作用としてあり全身倦怠感も強いこと、ベルケイド、デキサメサゾンと併用すること、スケジュールの複雑さなどからなかなか使用頻度が急激には増えていないようなのですが、それをどのように骨髄腫の治療にいれていくかという点が議論されました。
上手く使われている先生の話では副作用に慣れ、そのマネージメントを上手くすることが大切のようです。血小板低下がしばしばおきますが、そのメカニズムは血小板が巨核球からうまく引きちぎれて分離出来ないためだそうです。同じことはベルケイドでの血小板低下でも起きているそうです。また全身倦怠感が強い、これは炎症性のサイトカイン、特にTNFαが増加することとも関係しているようで、少量のステロイドが投与時に入るようにしてあげるのが良いだろうと。患者さんは5日目がきついということが多いようです。
またこの薬剤、副作用の出方に個人差が大きいそうですが、これはCYP3A4(肝臓における酵素)による代謝を受けるからで、デキサメサゾンを併用するときには血中濃度が下がる、マクロライド(クラリスロマイシンなど)、アゾール(真菌の薬剤)などを使用するときには効果が増大することも知っておかなくてはならないとのこと。
また鈴木先生のお話はこれまでの治療の歴史を述べられ、近年治療薬のコストが増大している骨髄腫治療をこれからどうしていくのが良いのか。一部の人は治る。その医療経済の面からも出来る人(治療に耐えられる人)は早めに出来るだけ深い寛解(治療薬を強く効かせて骨髄腫細胞を減らした状態)にいれて、その後3年位で治療を終わらせるようにもっていくべきではないか、と述べられていました。私もそれには同感です。
骨髄腫は生存期間が長く伸びている分医療費もかかり続ける。これからは蛋白が増加してきたらもぐらたたきのように治療を続けるという方式ではなく、スケジュールを決めて医療資源を大切に使用しましょうということを推奨していきたいということでした。海外では新規薬剤が日本ほど自由には使えないようです。

2016年

6月

03日

当院が鎌倉市観光協会と外国人観光客への医療協力に対して提携を結びました。

鎌倉市、公益社団法人鎌倉市観光協会及び湘南鎌倉総合病院の3者は、訪日外国人観光客に安心・安全に鎌倉観光を楽しんでいただくため、緊急時などにおいて高品質の医療を必要とする外国人観光客の受入れ等の協力に係る協定書を締結したと報道があり、締結式が6月2日に行われ院長が式典に参加された。
つまるところ「外国人救急対応よろしくお願いします」ということなのである。ますます外国人が増えるということか・・・。先日もERに日本語も英語もだめな外国人のかたが搬送されてきていた。院内には韓国語、フランス語、ロシア語、中国語が話せるかたがいるが、それ以外のアジアからの訪日観光客も増えているからな~。
これからオリンピックも控えているし、医療もますます国際化。それと同時に日本ではあまり見かけない疾患に今後遭遇することになるかもしれないということである。珍しい感染症や日本には少ない遺伝的疾患の発作(私たち血液内科医であれば鎌状赤血球症の溶血発作など)などを診ることにもなるかもしれない・・・。医療の国際化の波が現実的になっているということである。  

2016年

6月

02日

第34回 神奈川若手血液研究会in 湘南鎌倉総合病院

神奈川若手血液研究会は神奈川県内のだいたい40代位までの先生がたで構成される血液内科医のための勉強会で、20年近い歴史があります。私も1人で当院の血液内科をしょっていた時にこの研究会に声をかけていただき、一緒に勉強する機会を与えていただきました。最近ではそろそろ私も出席するのに恥ずかしい学年となってきました。
玉井先生が当院にきてからはこの研究会の幹事の一人となってもらいました。今回当院が当番幹事となったため、当院の院内ツアーもいれながら研究会そのものも院内で開催しました。症例2例と国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫先生による講演を行い、その後はケータリングサービスを用いての情報交換会を行いました。ホテルではなく病院内でやるのは時に趣を変えて行うという点で良いと思いますが、やはり気が付かない点、準備など大変なことが多々あり・・・。企業のかたも、そして秘書の村松さんもごくろうさまでした。無事に会は終了。皆さんにも楽しんでいただけたと思います。
顔と顔のみえる関係は患者紹介の上でも大切であり、グループ研究などを行っていくうえでも人間関係は大切です。神奈川県は規模の点でも大学数という点でも、そして立地も恵まれている場所であると思います。末永く続いてくれる研究会でありますように(ただもう私はでられないような気がする・・・)。

2016年

5月

26日

Usmani先生によるexpert meeiting in yokohama

Usmani先生が日本骨髄腫学会にあわせて来日された。それに伴い横浜で少人数の骨髄腫meetingが行われ参加してきた。
Usmani先生はアメリカにおいて若い骨髄腫研究者の一人である。これからの続々と登場する骨髄腫に対しての新規薬剤に対してその使用経験、臨床試験の結果などを話された。深い奏功を得ることが長期生存につながるデータを改めて示し、アメリカの研究グループであるSWOGのデータをだされVRd(ベルケイド、レナリドマイド、デキサメサゾン)がRd(レナリドマイド、デキサメサゾン)よりも完全寛解率、VGPRも高いことを示されていた。生存率にもそれは寄与していた。強力なレジュメとして使用しているようで、今後日本でもでてくるCalfilzomibとその他の薬剤のコンビ(KMP,KLd)も成績が期待されるが、心毒性には注意したほうが良いといわれていた。また抗体療法に期待がかかるが、この抗体薬は単に細胞を殺すというだけでなく、T細胞性を誘導することがわかっているとのこと。何らかの免疫的な作用があるかもしれないということでした。
個人的に質問したこととしては、2次発がんがレブラミドベースの治療では7-8%みられるが、その検診のようなものをやって固形がんをみつけたりしているのか?ということ。答えはNO。他の人とそれほどがんは多い感じはしていないと言っていましたし、まあ血液がん(MDS,白血病)あたりは注意するなんて感じで、しっかりした検査を推奨はしていないようでした。またポマリドマイドはレナリドマイドとおなじような機序の薬剤ですが、ポマリドマイド耐性になったあと似た系統であるレナリドマイドを使用することは可能か?という質問に対しては、使用できるが他のものを使用するか、レブラミドにCalfilzomibなどを加えると言っていました。
また非常に治療に難渋する髄外腫瘤。どのレジュメがいいかと聞いてみたが、どれというものはないようでした。進行していることが多いからです。VTD(ベルケイド、サリドマイド、デキサメサゾン)などをするといっていました。

ますます複雑化していく骨髄腫治療。治療している側ももうどれがいいのやら。ただし慢性的な疾患になってきた骨髄腫だからこと治療による副作用をできるだけ軽減し、長く元気に生きていけるように主治医のさじ加減というのも大事になるでしょうか。経済的なことも質問してみたかったのですが、どうしても治療成績優先の討論になってしまいました。アメリカの人も次から次へいろんな治療全部やれるのでしょうか。保険はカバーしてくれるのか?経済面を臨床家は気になっているはずです。

2016年

5月

23日

テロメア短縮と骨髄不全

テロメアとは、染色体の先端に存在するキャップのようなもので染色体を守る働きがあります。テロメアは「TTAGGG」という塩基配列の繰り返しから成り立っています。これが長いほどヒトも長寿になるとされますが、テロメアは年齢とともに短くなっていきます。しかし幹細胞、生殖細胞、ガン細胞の3つにあるテロメアは短くならないとされています。テロメアが障害をうけると話しは別です。細胞がアポトーシスに向かったり染色体の不安定性をもたらします。
そのテロメアの修復にはテロメラーゼ複合体が関係しています。これがうまく働かない状況になるとテロメアは短くなります。これが老化に関係したり一部の病気に関係していることがわかっています。テロメアの短縮による疾患を総じてtelomeropathyとか、telomere maintenance”disordersといわれています。この疾患では我々のみるような骨髄不全のほか、肺線維症、肝線維症などがおきたりがんのリスクが多くなるとされます。

このテロメアに関係する疾患として<先天性角化不全症>という病気があります。爪の萎縮、口腔内白斑、皮膚色素沈着を3徴とする先天性造血不全症候群である。この疾患ではこれらの古典的症状を併せ持つ典型例以外にも、多彩な全身症状を呈する例から血球減少のみの例まで多彩な臨床像を示すため診断が難しいことがあります。近年の遺伝子変異のスクリーニングにより、特発性再生不良性貧血患者や特発性肺線維症と考えられていた患者のなかに、この病気の不全型が含まれている事が明らかにされています。本症における死亡原因としては造血不全が最も高いとされます。爪の萎縮と皮膚色素沈着が10才までに出現し、20才までに骨髄不全が出現し、30才までには90%の症例が骨髄不全を発症するとされます。若い造血不全の中に隠れているかもしれないということです。その病態も細かく解明されています。診療の参照ガイドがネットでもみることができますのでご参照ください。

さて20世紀半ばから再生不良性貧血に対して蛋白同化ステロイドであるダナゾールは経験的に使用されてきました。私も輸血量が減る症例を経験していますが、男性か兆候や肝障害など副作用もある薬剤です。なぜきくのか?と思ってきましたがどうやら性ホルモンにはテロメラーゼを直接制御する作用があるということなのです。

ダナゾールが投与され血球回復していくときに、テロメアの長さがどうなるのかを人で研究した論文が有名な医学雑誌NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINEについ最近発表されました。とても興味深いデータなので次回紹介します。

2016年

5月

21日

非常に稀な疾患だが隠れているはず ゴーシェ病

ゴーシェ病の勉強会がこの日行われた。神奈川県内の先生方が集まり、症例経験のある先生が発表してくださった。
ゴーシェ病はグルコセレブロシドが組織に蓄積する疾患で、非常に稀な病気であり私も診たことがない。小児の疾患と思われているが若年成人の血小板減少、肝脾腫のある患者さんの中に隠れているらしい。ユダヤ人のアシュケナージという家系には多いが、日本では33万人に1人程度。血小板はそれほど低下していなくて、10万以上のこともしばしばあるという。海外では血液内科医がみていることも多いそうだ。
診断がつけば酵素補充療法を行うことで、QOLを著しく下げる骨病変の進行を抑えることが出来る。日本でも一度血小板減少の人に調べてみてはどうかという案もでている。当院にも大勢の血小板減少で脾腫をもつ患者さんがいる。簡単な採血にてスクリーニング検査が出来るので、該当する患者さんがいたら調べてみたいと思う。

2016年

5月

21日

ジャカビ使用の実例についての講演会 in 東京

ジャカビという薬剤はリキソリニチブといい、造血の際の細胞のシグナルの伝わる経路であるJAK-STATを阻害する薬剤で、骨髄線維症、真性多血症に保険適応が通っている血液内科の薬剤である。骨髄線維症や真性多血症では、その経路のシグナルが過剰に働いていることから血球が増加すると考えられている。
この薬剤、使用して患者さんに感謝されるのは脾腫がとれること。その効果がとても早く、1か月以内に現れる。脾臓が大きいと腹部膨満はあるし、胃が膨らまないので食事もたくさんとれないし、時に腹痛もある。尿も近いし・・・などたくさんの症状があるのだが、それが改善して食事がとれるようになる。また骨髄線維症ではサイトカインが関係し栄養状態の悪化、全身倦怠感がみられるとされるが、それも著しく改善する。
ただ一時的に血球減少がおきるので(使用開始後3か月以内が多い)こまめに血球を調べ、容量調節をする必要がある。腎機能が悪い人もゆっくり始めたほうが良いし、血小板が5万以下の人では使用しにくいので、そうなる前に使用したほうが良い。私の患者さんでは腹囲と体重をしばしば測定してもらって、その効果を数字でも実感してもらうようにしている。また良い薬剤(飲み薬)なのであるが、とても高額である。他にも薬剤があったり輸血もするなど患者負担が多いなかで、出来るだけ高い効果で薬剤数は少なく、ということを考えてあげることも必要だ。
私は多血症に使用した経験がまだないが、痒みがなかなかとれない症例、倦怠感が強い症例などにとても効果があると他の先生が発表されていた。まずは瀉血主体に治療するものの、症状が改善しないかたには使用してみたいと思う。
今日は東日本の血液内科の先生で実践的にがんばっていらっしゃる先生が参加していたが、以前の私のように一人で病院の血液病棟、外来を担って頑張っていらっしゃる先生が多くいた。昔を思い出して心でエールを送っていた。

2016年

5月

20日

湘南鎌倉内科合同歓迎会2016

当院内科に今年は13名の後期研修医がきてくれました。5年ほど前までは考えられなかったことで、風向きが変わっていると感じます。新しい病院になったこと、また国の制度で総合内科的な研修医を義務付けるように動きがあること、そして当院の内科がそれにふさわしい研修プログラムをもっていることが挙げられると思います。また各専門科が充実してきたこともあげられます。
しかし、これだけ入るとまったく名前が覚えられません。失礼ではありますが初期研修医の先生と間違えていた人もいました。血液内科には岡田先生が1年間長野の病院から研修にきてくれています。当院に若手の先生達が入ってくれることで、その他の関連病院や離島病院に人をまわすことができます。このようなマグネットホスピタルとしての役割をになっていくことが、今後も大切であると思います。

2016年

5月

20日

感動はどこからでるもの?

感動は他から強制されるものでも命令されるものでもありません。あくまでも自分自身、いのちから出てくるものです。
これは相田みつをさんの言葉です。先日訪れた
相田みつを美術館にて展示されていました。

日常の中にも感動があり、それは自分の感じる感度、レセプター(受けるセンサーとでもいいましょうか)があるかないかで感動できることの種類も量も異なります。子供のうちから身の回りにある様々なものを大人とともに感動することで、人は感動というものを身につけていくのではないでしょうか。感動は自分の価値基準の中からでてくるものです。

また‭、人に感動を与えることはお金がなくても学歴がなくてもできます。逆に高い地位にあって知恵があっても、人に感動を与えられるかどうかはわかりません。一瞬では感動を与えられないかもしれないけれど、それが続くことで人を感動させることもあります。見ている人はみています。

私が最近感動したものを考えてみました。
  まじめに一つのことにとりくんでいる姿
  時間がない中家族のためにやりくりする姿
  誰もが嫌がることをいつも率先してやる姿
  病と闘っている次から次に問題のある患者さんの姿
  美しいフラワーセンターの花々

小さい感動ではありますが、どれも自分にやる気を与えてくれるものです。自分が感じることに鈍になっていないか、このように感動したことを思い出してみるのもいいかもしれません。

 

2016年

5月

18日

病院も経営戦略の時代

病院も経営を考えなくてはいけない時代となっています。あと5~10年は高齢者による疾患で入院はまだまだ満床という時代があるでしょうが、いつかは高齢者が減少してくる時がきます。その時に勝ち残れる病院となっているか?そのために考えている病院は世界的な病院の質の認証を行うJCI認証を取得したり(当院も取得し昨年更新した)、外国人獲得のための工夫をしたり、特に強い領域を作って患者さんを集める努力をしています。聖隷浜松病院は私の地元である浜松で中核になる病院であり、また先ほど述べたJCIを取得した病院。同級生も活躍している病院ですが、そこがある取り組みをはじめたとニュースになっていたので、それを紹介します。

聖隷浜松病院では待ち時間を有意義に過ごしてもらおうと、B棟地下1階で無料のミニ講座「ホス地下」を始めた。毎月1回程度、昼前の約30分間医師や看護師が病気の知識や日常に生かせる予防法などを紹介する。初回は脳卒中をテーマに、脳卒中科の大橋寿彦医師が脳卒中の病名の意味や脳梗塞の種類と治療法を来院者らに解説。薬剤師が治療薬の薬効や食材との飲み合わせについての注意喚起もし、看護師は予防法として家庭での血圧測定を勧め予防体操も行った。
これは同病院の医師や職員でつくる「利用者満足度向上委員会」が企画したという。豊富な食材が並ぶデパートの地下階(デパ地下)になぞらえ病院(ホスピタル)の地下で同病院の抱える豊富な人材が知識を提供し、来院の楽しみにしてもらう狙い。名づけてホス地下。
その効果についてまたお聞きしたいと思います。待ち時間の有効利用は当院でもなかなか難しい問題です。

 

2016年

5月

15日

診療に当たる人に対するリスペクト

ばらがきれいな季節がやってきた。大船フラワーセンター(神奈川県立フラワーセンター大船植物園)も真っ盛りで、大輪の花がみごとに咲きあふれている。春のばらは華やかさがある。

さて最近思っていることで、愚痴を一つ。
院内で症例を検討したり外部に発表したりすることはしばしばある。我々が他の症例から学ぶことは多く、それは大切な機会である。それがいけないというのではない。しかし一つ忘れてはならない、大切なことがある。治療の責任を負うのは主治医であるということ。血液疾患の患者さんは経過が長く再発もあり、治療がうまくいって終了というわけにはいかない。一時的に患者さんの診療に関わることと、・初から最後までその人の治療・人生も含めて考え問題に立ち会っていることとは大きな違いがあること。そして現在もその診療に当たっている人に対してリスペクト(尊敬)の気持ちを忘れてはならないと思う。
一部の人がデータをまとめるのに一度診療したら、または当院に勤務していたら使用する権利があるのだと言っていたのをきき、愕然とした。何でも歴史を大切にしない人、国、組織はだめである。そういう意識も教育していく必要があると思う。

2016年

5月

15日

熟して自然に落ちるのを待つ

リハビリは今でこそ”いかに入院早期に行うかが大切”といわれていますが、これはごく最近の傾向です。かつてはリハビリなんて麻痺になった人、整形外科、外傷患者さんのものと思われていた時代もありました。しかし脳卒中でも早期に集中的にリハビリを実施したほうが後遺症やねたきり防止につながることはわかっていますし、入院中の患者さんの活動性をいかに落とさず、そのままの元気さで退院にもっていけるか。高齢者入院では在院日数の鍵を握る大切な診療の一環です。当科で抗がん剤治療をされるかたでも、ひとたび熱がでたりして動けなくなれば筋力は低下してしまうので、治療開始と同時にリハビリのスタッフには介入してもらっています。また患者さんはリハビリ中にポロリと気持ちを話されたりするのです。

さて、まだリハビリがそれほど必要とされていなかった時代からリハビリ一筋で、その必要性を実践し国にも訴えてきたリハビリ医の草分け的存在の石川誠さん。長嶋茂雄監督もリハビリに入院されたという都心の初台リハビリテーション病院の経営をされていたかたです。リハビリがまだそれほど広くに認められていなかったときからリハビリ医として日本でその重要性を示し実践されてこられ、かつ国に対しても数字で実績を示し、回復期リハビリテーションの診療報酬を訴えてこられたそうです。そのかたの日経ビジネスの有訓無訓に書いていた言葉がとてもよかったので紹介します。

<新たな試みを始める際に大事なのは、あせらず待つこと。熟して自然に落ちるのを待つ>。正しい種をまいているとの自負があれば気長に待てるし、奇人扱いも笑い飛ばせます。

あせらず気長に正しいことの努力継続する。そして熟すのを待つ心のゆとり。自分に言われているような気がして、すっと腹に落ちた言葉でした。

 

2016年

5月

13日

チロシンキナーゼ阻害剤による血管合併症

慢性骨髄性白血病の治療はチロシンキナーゼ阻害剤の登場により大きく予後を変え、患者さんは長期生存が得られるようになっている。今は複数のチロシンキナーゼ阻害剤(グリベック、タシグナ、スプリセル、ボシュリフ、ポナチニブ)がでているが、薬剤による副作用プロファイルが異なる。
その中で最近話題になっているのが血管系の副作用である。薬によりその頻度が大きく異なる。これまでの臨床研究をさかのぼり、どのくらい動脈性の副作用(動脈閉塞など)がでているかが論文でまとめられていた。

チロシンキナーゼ阻害剤を使用していない人での年間100人中の動脈性の副作用の比率は0.8人なのに対してimatinib(グリベック)は 0.1人、dasatinib(スプリセル) 1.1人、bosutinib(ボシュリフ) 0.4人。それに対してnilotinib(タシグナ)2.8人、ponatinib(ポナチニブ)10.6人と高い。私の患者さんでも若いのにタシグナにて下肢動脈閉塞をきたした人がいた。
そのメカニズムが完全に解っているわけではないが、タシグナにはアテローム形成促進の作用があること、また血管新生を抑制する作用があることがわかっている。また血糖値を上昇させる作用もある。これらにより動脈硬化を促進させるとともに自然治癒を抑制し、動脈閉塞にいたるのかもしれない。またすべての人がなるわけではなく高血圧、肥満、喫煙、高齢のリスクがある人ほどおきやすい。よってタシグナ、ポナチニブを使用する場合ではそれらのリスクの高い人は動脈合併症の話をし、リスクを下げる対策、もしくは他剤への変更を検討したほうがよい。またスプリセルでは頻度は少ないが肺高血圧症、ポナチニブでは動脈、静脈血栓症がおきる市場から一度消えたことがある。
予後がよい疾患となっただけに予後に影響を与える合併症には注意しなくてはならない。
参考文献:Feb5,2015 Blood 125(6)   2016 Jun;57(6):1300-10

2016年

5月

10日

骨髄線維症の髄外造血

骨髄線維症では骨髄が線維化するために骨髄以外の場所で造血がおきる。それを髄外造血というが、主な場所は脾臓であり巨大な脾腫になってくる。
それ以外に体の中で造血がおきる場所は?というと、肝臓もしばしば造血の場所となる。骨髄線維症でALPが高くなるのはそのためである。
調べてみるとこのような骨髄で正常な造血が行われないとき、体の中のあらゆる臓器でも(骨髄以外)造血はおきるらしい。そこに若い細胞(前駆細胞)が生着しリンパ節、胸膜、心膜、腹膜、消化管、尿路、中枢神経でも造血が行われることがあるという。皮膚も稀ではあるがおき、発疹が出ることもある。死後に評価された症例を解剖で調べてみると肝臓、脾臓のほかに椎体(背骨)周囲(特に胸椎)が多く、ついでリンパ節、後腹膜、肺、尿路、皮膚の順にみられたそうである(UP TO DATEより)。よって骨髄線維症で椎体周囲に腫瘤などが出来たとき、そこが造血部位になっている可能性を考慮する必要がある。
また骨髄線維症の患者さんから主な髄外造血の場所である脾臓をとってしまったりすると、次の造血の場所である肝臓で急激に造血が盛んになり、肝機能が上昇したり急な肝腫大がみられたりする。さらには肝不全になったりすることがあるので注意が必要である。骨髄線維症の脾摘の成績は、合併症などで悪いことが知られている。
また、骨髄線維症では末梢血の中にCD34陽性細胞(若い前駆細胞)が正常人の400倍もあることが知られている。病気が進行するほど多くなるそうである。興味深いデータである。

2016年

5月

06日

アメリカの救急診療での抗生剤医療の実態は?

アメリカでは国家行動計画として薬剤耐性菌を抑制するために、2020年までに不適切な抗生剤使用を50%減らすという国家目標をたてた。日本もこれに追随する形で2020年までに33%を減らすことが目標としてだされた。とはいえアメリカでも「抗生剤使用の実態は?」ということで、2010-2011年の救急医療ケアの調査をもとに調べたデータが発表された。(JAMA. 2016;315(17):1864-1873)

18万4000件にも上る受診歴のうち抗生剤が処方されたのは12.6%。なかでも頻度が高いのは副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎。これら急性期の呼吸器感染では1000人中221処方の抗生剤がだされていることになるらしいが、うちガイドラインに即して正しく処方されているか調べたところ約半数が不適切使用だったという。また全疾患、全年齢でみたとき1000人あたり年間で506処方だされており、3分の2は適正使用であったという(3分の1は不適切)。スエーデンは抗生剤使用の少ない国であるようだが、そこでのデータは1000人あたり328処方というからまだまだである。

これらの実態を踏まえてアメリカでも抗生剤の処方内容が今後4年以内に大きく変わっていくであろう。やはり一番は特に健康なかたの上気道炎、咽頭炎、鼻炎に対する抗生剤処方の制限ではなかろうか。
薬剤耐性菌は体力の落ちた高齢者、免疫が著しく低下した我々の病棟の患者さんでは治療選択が制限されたり何れも効果がなかったりと難しい。なかなか治癒しないし全身状態の回復も遅れる。院内感染の広がりも問題だ。日本でも厚労省がどのように指導していくのか見守りたい。

2016年

5月

06日

薬剤耐性菌に対する話題 伊勢志摩サミットでも

いよいよ日本で開催されるサミット(伊勢志摩サミット)が迫ってきた。8年ぶりの日本が議長国。政府の皆々さま、がんばって!という気持ちですが、その中での話題に薬剤耐性菌が取り上げられるというので注目。
薬剤耐性菌はそもそも不必要な強力な抗生剤を使用することにより起きてくると考えられていて、対策としては適切な抗菌薬使用を国全体で行っていくしかない。とはいえ呼吸器感染症で風邪でも抗生剤が頻繁に処方されているのが日本の現状で、免疫抑制状態の抗がん剤治療をうけている患者さんには、前もって抗生剤をだしておくことも多い。それらの習慣を大きく変革するには、国主導で行っていくしかない。オランダなどでは医師の抗生剤使用がもっと厳しく制限されているときく。米国では2016年3月に抗生物質が効かない薬剤耐性菌に対抗するための国家行動計画を発表。そして日本政府も4月1日初の行動計画を公表し、抗生物質の国内での使用量を2020年までに2014年比で3.3%減らす数値目標を新たに掲げた。サミットでは薬剤耐性菌の問題を首脳宣言に盛り込みたいと考えているようだ。
具体的な対策として医師や薬剤師に対しては適正使用についての教育研修を行い(勉強はするがある程度の規制が必要かも)、市民にも風邪には抗生剤は効果がないことを普及啓発していくという。
風邪に対する抗生物質神話がなくなる時代も近いのでしょうか。

 

2016年

5月

05日

新緑の美しい天園ハイキングコース

鎌倉はご存知のとおり山に囲まれた地域であり、散策やちょっとしたハイキングなど歩ける場所がたくさんあります。天園ハイキングコースは鎌倉アルプスとも呼ばれているそうですが(知らなかった)、人気のコースです。出入り口は色々あり、住宅街の今泉台を登っていったり北鎌倉の建長寺と瑞泉寺など二階堂方面に下ることも出来ます。起伏も大きく全長約4キロ?なかなか歩きごたえのあるコースですが、足腰が痛いと難しいコースです。新緑の美しい中、鎌倉を代表する本格的なハイキングコースを久々に病院の健脚ガール(当然私より若い)とともに登ってきました。
山を歩く人々とすれ違いざまに挨拶するのも良し、幼い子供たちが親と一緒にがんばって登って気持ちよく挨拶してくれるのも良し。そうだ、今日は子供の日。富士見平からはうっすら富士と美しい相模湾が見渡せ、心地よい風が吹き抜けていきました。当たり前にみられるこの新緑、やっぱり山と緑と海が見える鎌倉は人も羨む場所なんでしょうか。他人によく言われます。「鎌倉、良いところに住んでるね~。」「また鎌倉のこと、テレビで特集してたね~」と。なかなかテレビをみる機会はないですが、確かに昨日もやっていました、混んだ小町通りを通らないでいく裏道だとか。確かに今日は祝日なのもあり、鎌倉駅は大混雑。江ノ電に乗るために長蛇の列が出来て、みな待ってました。
ようやく若手に仕事を任せて地元のことを味わう余裕が出来てきたからこんなことが出来るのですが、どこかで仕事に行かなくて申し訳ないという気持ちになってしまう自分もいます。

2016年

5月

05日

濾胞性リンパ腫の治療 watch and wait

非ホジキンリンパ腫の中で濾胞性リンパ腫というタイプはび漫性大細胞型についで2番目に多い。ただその治療戦略は様々であり、専門家でも悩むところである。ゆっくり進行するものが多いが、その分化学療法の切れ味は悪く、完治は難しいとされる。そのため進行していても”watch and wait”という、治療をしないで様子をみるということが以前から治療の選択肢として行われてきた。しかし、そうは言っても最近では進行期の人は治療をしたほうが病気が進行しないで未治療でいられる期間も長くなるため、することも多い。
さてそんな中、『British journal of haematology』に濾胞性リンパ腫ステージII-IVの人を調べた成績がだされた。(Br J Haematol. 2016 Mar;172(5):724-34)2004年から2007年アメリカのある地域で治療を受けていた濾胞性リンパ腫の患者さんを調査。治療した人とwatchful waitingの人(未治療で経過観察)を1754人比較して、生存率がどうだったか調べられた。
治療はリツキサン単独(副作用が少なくて我々も濾胞性リンパ腫にはよく行う)、リツキサン+他の治療が行われていた。結果は当然治療をしたほうが病気と一時的にでもおさらばする期間は長くなり、次の治療に入る時期もより延ばされたのだが、8年の時点では全生存率(病気があろうがなかろうが生きている率)はともに74%(なかなか良い成績である)で両者に差はみられなかった。筆者たちはこの新しい時代であってもまだwatch and waitは一つの選択肢として存在すると述べている。
私の患者さんでがんセンターと当院の両方受診している濾胞性リンパ腫のかたがいるが、骨髄にリンパ腫細胞がいても量が少なく、また血液データにほとんど異常がないということでがんセンターの方針で経過をみている人がいるが、進行してくる様子はない。ただし放置していてよいというのではなく、どこかで急に悪性度が高くなることがあるのも濾胞性リンパ腫を含む低悪性度のリンパ腫の特徴であるから、5年といわず長期的にフォローする必要があると思う。高齢者のかたにみられる濾胞性リンパ腫では症状があまり強くなかったり、あるいはたまたま腹部の中に発見されたというかたもいて、そのような場合には経過をみても良いのかもしれない。

2016年

4月

24日

湘南鎌倉バースクリニック 開院に向けて

旧湘南鎌倉総合病院近くに、5月1日<湘南鎌倉バースクリニック>がオープンします。産科に特化した病院で5階建て19床。当院の産科の先生方、助産師達が待ち望んでいた病院です。
本日近隣住民及び出産予定の方々などに内覧会が開催され、私は近所の人として見せてもらいに行ってきました。
新しいから当たり前ですが、とにかくきれいでカーブ状に並んだ個室はまるで横浜プリンスホテルのよう。個室も広々としているし、贅沢に空間を使っている。採光も工夫されて明るい感じです。部屋は畳のついた個室もあれば洋室もあります。食事もヘルシーで、まるで旅館の食事のよう。1階と2階は吹き抜けで明るい空間となっており、コンサートや母親学級など色々な催しものもしていくそうです。
ただしリスクのある分娩は今後も当院で行うことになります。両院をカバーしなくてはならない産科スタッフも大変でしょうが、これだけの施設を前に頑張る意欲も出てくることと思います。成功をお祈りいたします。

 

2016年

4月

22日

レボレードの副作用 血栓症

<レボレード>は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に認められた、トロンボポエチン受容体作動薬という位置付けの薬剤である。かつてはITPの治療というとステロイドか脾摘、あとはどれもなかなか効果がなくて・・・ということが多かった。
今はピロリ菌が陽性であればピロリ除菌、まだステロイド治療の位置付けも高く、さらにその後というと脾摘はリスクが高いこともありこの<レボレード>という薬剤(内服)が治療選択として上がる。
当院では重症の血小板減少にて入院される患者さんも多く、比較的早期から使用されることも多い。
さてこの薬剤、血小板産生の親である巨核球を増殖させ分化を促進するのであるが時に急激に血小板を増加させて血栓症を来たすことがある。私はレボレードを使用する場合には最初は少量から、しかも1週間毎に来院してもらって急激な上昇や強い頭痛などがみられないかを診ている。
発売後5年経過し、国内での使用成績調査がまとめられた。それによると、血栓症を発生しやすいリスクが高い人ではそうでない人と比べて8倍程度起こりやすい。リスクの高い人とは①血栓塞栓症の素因がある人、つまり抗リン脂質抗体症候群、②高齢③家族歴④血栓症の既往、といったところである。ということで、レボレードを使用する前には血小板減少の原因として抗リン脂質症候群の要素がないかどうか、これまでの既往歴にも注意して問診する必要があると思う。

2016年

4月

21日

高齢者の運転

前回の話からの続き。
認知症傾向がある患者さん。家では色々な問題がおきているようだが運転はもともとよくなさっていたそうで、近所へ行くには車を運転しているということだった。え~、大丈夫なのかしら??
危険な時とっさの判断は無理だろう。パニックになってしまうに違いない。危険だ。こういうことがか重なってニュースになるような大きな事故が起きているのではないか・・・。私はすぐにでも止めさせたいが、認知症の患者さんには「反発しないように、理解してもらえるように時間をかけてゆっくり説明することが大切だ」と先日購入した本に書いてあった。そこで患者さんにはダメというのではなく、やんわりと危ないことはないかと聞き、少し気を付けて、だんだん運転は止めないとね、と話した。
ちょうど4月20日の日経新聞に高齢者の運転についての記事が掲載されていた。運転免許証の返納を促す取り組みが全国で広がっているという。運転免許センターに看護師を配置して医療的に問題がありそうかどうか見極めたり、その後粘り強く説得することで返納率が増加しているのだという。しかし実際には交通手段がなくなることで活動範囲が狭まったり、病院に行けないなどの問題も出てくる。これに対してタクシー料金を補助する制度を始めている自治体もある。
高齢者の事故はニュースにはならなくても多発しているという。普段の診療の中からも、怪しいと思うときには我々医師がアドバイスしていくことも必要であろう。

 

2016年

4月

20日

長期に患者さんをみていると・・・

私の外来には長期に診察させていただいている患者さんも多く、お付き合いが10年以上のかたもいる。私も同じように年齢を重ねているのだが、患者さんの中には徐々に認知症の傾向がでてくるかたも現れた。どうも我々血液内科医は認知症の方々を治療する機会、観察する機会が少ないため(抗がん剤治療をするという点では、ある程度理解出来る患者さんにすることも多い)、その管理は不得手である。でも逃げてばかりでもいられないと、先日開催された日本内科学会総会で認知症の本を複数買って読んでみることとした。それですぐに技術が上がるというわけでもないが、少しは診断や使用する薬剤のコツが掴めたらと思う。

ところがである。先日元気に治療を終えて数年経った患者さんが、ひょっこり来院された(しばらく外来に来ていなかった)。顔つき、身なりが変わっていてびっくりした。同じことを何度も繰り返して確認される姿は、私でも認知症の診断が容易だ。しかも患者さんは一人で来院された。認知症の進行には他の原因、つまり頭部に出血や水頭症、脳転移などの病変がないかどうか、また電解質異常、麻薬など薬剤が関係していないか確認をする必要がある。それらをみてもすべて正常であった。今後の生活指導などを考えていくことも臨床医には求められることである。さらにびっくりしたのが、まだ慣れた道は運転しているということであった・・・。ここからの話は次回に続けます。

 

2016年

4月

19日

たかが便秘されど便秘

便秘は化学療法を行う患者さんでは頻度の高い副作用である。私は研修医に<たかが便秘、されど便秘>といつも言っている。ステロイド、ビンクリスチンという薬剤を使用するCHOP療法という悪性リンパ腫のコモンな治療では、治療初期にほとんどの患者さんが便秘を自覚する。薬剤が影響すると考えられているが他に食事摂取の低下、環境の変化なども便通に関係する。

さて、なぜ便秘が良くないかというと便が出ないと硬い便が肛門付近にたまる。それが局所の血流粘膜の低下をきたし、また必死に出すときに粘膜を傷つける。場合によっては浣腸する(血球減少している人にはできるだけしないようにする)。それが免疫力が低下したときに発熱の原因となり、ひどくなると肛門周囲膿瘍をきたす。
また便秘だからと下剤を大量に使用すると、蓋をしていた固い便が出たあとに下痢が始まり、また食事が摂れないということになるのである。全身管理に影響してくるのだ。
またあまりにも固い便がなかなか出ないときには直腸に潰瘍が出来、大量の鮮血の下血をきたすことがある。これらは宿便性潰瘍と名付けられている。また便秘がなくても長期臥床をしている基礎疾患のある高齢者には直腸潰瘍が出来ることがあり、急性出血性直腸潰瘍という病名が付けられている。急性出血性直腸潰瘍はストレスや臥床などによる直腸粘膜の血流低下を基礎に発生すると考えられている。いずれの疾患も大量出血をきたすため、速やかに診断して内視鏡でクリッピング術などの積極的治療を行う必要がある。しっかり止血できれば治癒傾向は良好であることが多いが、ダメな時には外科的に出血している部分を結紮、時には切除の必要なこともあるという。
<便秘の管理は抗がん剤治療ではとても大切であります。>

2016年

4月

17日

熊本を中心とした震災被害と患者への影響

また日本で大きな災害がおきてしまった。まだ東日本大震災からまだ5年。報道をみているとまだまだ強い余震が続き、収まる気配がない。被害はまだまだ続くだろう。大分、愛媛のほうまで震源域が広がるのではないかという気がする。
地震に関しては興味があり昨年木村政昭氏の書いた本をよんでいた。火山の活動と地震のつながりは歴史からも関係はあると思われる。1昨年から昨年は九州で火山活動が活発化していたこと、今回も阿蘇山から噴煙があがっていることとも無縁ではないであろう。とにかく早く収まってほしい。

医療機関もこれだけライフラインがとまってしまうと非常に困難を極めているであろう。あまり報道されてこないが、透析、抗がん剤治療といった特殊医療の継続、病院の建物の損傷、物品の不足。職員の安全、通勤の問題。予測されないことが次から次へとおきるはず。職員の方々の困難を思うと自らに置き換えても考えきれない。
またこれだけ余震があると、医療者も含めて精神不安がおきてくる。常にゆれている感じがとれず変なめまいの感覚が続く。東日本大震災のとき、テレビで津波の映像が毎日のように流されそれをみているうちに気分がだんだん沈んできてうつ病、不安神経症の再燃がみられたかたもいた。今回も家々の崩壊や土砂崩れの場面が何度も放映される。ほとんどのテレビ報道が熊本地震になってしまっている中で、患者さんにはテレビずっと見すぎないようにねと話している。気分は決して明るくはならない。
また実は日本ばかりではない。中南米のエクアドルでも現地で4月16日M7.8の巨大地震がおき77人の人が死亡している。とにかく早く収まってほしい。こればかりは天に(地に)祈るしかないのか。

 

2016年

4月

15日

マントル細胞リンパ腫の講演会

マントル細胞リンパ腫は最近色々新しい話題が出てきていて、今回横浜でマントル細胞リンパ腫(MCL)だけに対するカンファレンスが行われたが、とても良い講演で勉強になった。お二人の演者が特別講演をしてくださった。
一人は東海大学病理の中村直哉教授がマントル細胞リンパ腫の病理について、もうお一人は京都大学の錦織桃子先生がマントル細胞リンパ腫の治療をoverviewしてくださった。
マントル細胞リンパ腫の病理診断はcyclinD1が陽性でmantle zoneが広がっていれば診断は簡単だと思っていたら、どうもそうではないらしい。
mantle zoneが広くなる疾患としては反応性のリンパ節腫脹でもみられ、他にCasleman diseaseや一部のホジキンリンパ腫でもみられる。またcyclinD1が陽性な造血器腫瘍には骨髄腫、Hairy cell leukemia、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫があるということである。
組織の形態にもび漫性に細胞が広がるもの、結節がより目立つものまであるが、びまん性が予後が悪いということ、またMIB1の高さと予後が関係してるということであった。
診断、治療の話ではマントル細胞リンパ腫(MCL)ではt(11;14)が有名であるがそれが疾患早期におこり、その後前癌病変としてのin situ MCLという病態(マントル層がcyclinD1に染まる)、その後classic なMCL それも結節型からびまん性型でだんだん進行していく。これは病理の予後予測と一致する。一部はおそらくp53が関係するblastoid typeがある。症例でも採取部位が異なると像が違うことがあり、MCLではしばしば消化管に病変がくるが、その病変とリンパ節の病理像が異なることがあるという。

治療はhyperCVADの成績が良くないこと、high dose AraCが有効であること、低悪性度としてのマントル細胞リンパ腫だがゼヴァリンはAMLが発生することが多いこと、フルダラビンが入るプロトコールは感染症などで予後が悪く位置付けが低くなってきていること、すでに骨髄腫で用いられるベルケイドがMCLに対して使用されているが、今後その使用がまた増えてくるか、あるいは新規薬剤が組み込まれてくるかということのようである。とにかくMCLはリスク評価が難しいリンパ腫であると言われていた。

 

2016年

4月

14日

低悪性度リンパ腫の組織型転化(Histlogic transformation)

■Histologic transformation (HT)
低悪性度リンパ腫。この中には濾胞性リンパ腫、マルトーマなどが含まれるが、これは経過の中で悪性度の高いものに組織を変えてくることがある。これをhistologic transformation(HT)という。低悪性度リンパ腫は生存期間が5年~10年と長いため、長い経過中にはHTが37%前後起きるといわれている。

HTになりやすいのは進行している症例、grade3の濾胞性リンパ腫、FLIPIが高い症例などである。すべてのリンパ節や病変が一度にHTになるわけではないので、活動性のあるところをPETで検査して、そこを生検するほうが良い。濾胞性リンパ腫が急激に大きくなったときには、出来るだけ生検をするようにしている。

初期治療のメニューはHTに影響しないようである。アドリアマイシンが入っていてもいなくても変わりはないようである。transformした場合には、いきなりその腫瘍になった場合と比べて治療成績は良くない。よって自家移植が出来る症例では、出来るだけしたほうが良いという研究結果が出ている。またリツキサンの維持療法が濾胞性リンパ腫で時に行われているが、HTのリスクを下げることはないようである。臨床試験にはこの組織型が除外されてしまうことが多いので、正しいHTの治療成績が出にくいという。

2016年

4月

10日

シャクナゲの花が見事です。

今年は開花宣言が早かった桜ですが、その後の寒さの影響もあって長く見られたり、また先に咲いた木と遅れて咲いた木があり、同じエリアでも場所を変えれば楽しめるとニュースで言っていた。通勤の際に通る道から見える大船フラワーセンターの桜と桃がきれいなため、今日は帰りに寄ってみた。
園内はさまざまな花が咲き誇っていて、花の競演という感じ。桜も八重桜、しだれ桜、ソメイヨシノ。どれも散り始めていたが複数楽しめ、チューチップも色とりどり。しかしなんといっても圧巻だったのはシャクナゲ。美しいピンク、ローズに咲き誇る花々は今が見頃です。
これほど多く美しいシャクナゲが咲き誇るのを見る事は、なかなか出来ません。ピンクの色合いのなんと美しいこと!機会があれば早く見にいかれてください。病院の帰りにも少し立ち寄ってみてください。

2016年

4月

09日

骨髄バンクチャリティーコンサート in 円覚寺

毎年この時期、骨髄バンクチャリティーコンサートが円覚寺で行われており、今年も参加してきた。今年で24回目を迎える。
当院の血液患者の会での講演をお願いした斉藤住職が後援していることを知ったのは、もう13年ほど前になる。それからのご縁で毎年ご招待いただき、また患者さんの一部にも紹介させていただいている。方丈の間に250名位であろうか多くの方が座り、ピアノ、バイオリン、チェロの三重奏を聴く。ピアニストの方はゲストで毎年変わるが、ヴァイオリンの三戸素子氏、チェロの小澤洋介氏は初回からずっと続けており、24年もすごいことである。なかなか継続できるものではない。
今年も前から2列目に座った。演目は耳慣れた音楽が多く、親しみやすかった。ピアニストの高田匡隆氏の演奏は力強く鍵盤が跳ねるような演奏で、素人の私にもその素晴らしさが伝わってきた。海外を13年も渡り歩いてきた若い演奏家で、ソロの演奏を聞いてみたいと思う。
演奏の最中にカエルの鳴き声がケロケロと外から聞こえてきた。音楽が止まるとピタリを鳴き声も止まり、不思議だった。カエルが鳴くには早い時期だが、カエルと桜と演奏と。この3重奏もなかなか出会えない面白いいものであった。

2016年

4月

06日

周期的に白血球が減る病気:周期性好中球減少症

外来には白血球数が少ないという主訴の方が多くいる。1回目の測定では低下していたが、次の時は大丈夫。「たぶん感染症などで一過性ですね~」なんて終わりにしていると、ある疾患を見落とすことになるかもしれない。
周期性好中球減少症という疾患がある。21日間周期で好中球数が変化する。典型例では好中球減少期に好中球絶対数は100/µL未満となり、同時期に一致して発熱、全身倦怠感、口内炎、皮膚感染、上気道感染などを反復し、3~5日で回復する。好中球減少時には単球増加を認め、両者が相反した周期を示す特徴がある。さらに周期性好中球減少症では血小板や単球、網状赤血球も周期的に変化する。

実はこの疾患、ある遺伝子の異常が関係していることが解っている。その遺伝子異常は先天性好中球減少と同じ変異である。ともにELANE(好中球エラスターゼ遺伝子) mutationが関係している。同じ遺伝子変異でも症状の起きる時期などが異なるというわけだ。

ともあれ単なる好中球減少ならいいが、周期的に発熱・口内炎・全身倦怠感を訴えるような場合には本疾患を念頭におく必要がある。好中球減少時の感染症のほとんどは数日以内で好中球の増加に伴い自然軽快するので、血液検査がなされない場合には単なる感染症として放置されることが多い。そのため本疾患の診断年齢は不定であり、早い場合は幼児期前半、遅い場合には20~30歳を越えてから診断される例があるという。
私自身はまだ遭遇したことがない。臨床的に周期性好中球減少症を診断するには週1回の末梢血液検査を数週連続で検査することが必要で、疑ったら遺伝子検査で確定診断するようである。さらにおもしろいことに骨髄像は周期によって骨髄系細胞の所見が異なってくるので(当たり前だが)、骨髄像から診断へのアプローチには注意が必要である。
本症はELANE遺伝子のヘテロ接合性変異で常染色体性優性の遺伝形式をとる。約1/3の症例で家族歴を有している。

2016年

4月

04日

若い先生たちと病院前で夜桜見物

桜の季節である。14F病棟から見る山桜は霞がかかったようで美しく、日に日に新緑と混じり合いながら山の色が変わっていく。また病院の周りにはマンション群があり、その中には桜が美しい場所があるが、若い先生達は忙しくてなかなか桜見物にはいけない。帰る頃はすでに真夜中、もしくは院内宿泊。
そこでこの日仕事が比較的早く終了(といっても夜8時だが)したため、病院前のコーナンに向かう小道の夜桜が満開であるのを確認してあった私は、それ行くぞと皆を誘い飲み物片手に夜桜見物に出掛けた。写真はどうも皆寒そうな女医集団である。今年は当科でもう一人女性の岡田先生が研修でローテーションを開始したため、女性が多い科となっている。

2016年

4月

03日

糖尿病薬のメトフォルミンが大腸ポリープを予防するかも

悪性リンパ腫の患者さんなどを長期にフォローしていると、糖尿病の管理、血圧、高脂血症ひいては心臓病の管理もついでに、ということはよくある。ステロイドを使用することも多い当科では、ステロイドによる糖尿病の患者さんも多い。
さて、その患者さんからある質問があった。「メトフォルミンって大腸ポリープ予防になるらしいですよ~。」
まさかと思ったらなんと日本、しかも横浜市立大から論文が出ていた。雑誌も『Lancet Oncology』という有名な医学雑誌だ。
その内容は、多施設で以前大腸ポリープがあり、糖尿病のない人にメトフォルミン250㎎を1日1回(糖尿病で使用する量よりも3分の1程度)投与するか、何も投与しないかで1年後のポリープの出来方を比較したもの。
151人が試験に参加。全体のポリープ数、線種の数はメトフォルミンを飲んだグループのほうが明らかに低かった(38%vs 56.5%)。 筆者らは副作用も強いものはなく、ポリープ予防効果があるのではないかと述べていた。
また、メトフォルミンという薬剤。もともとは中世の頃より多年草マメ科のガレガソウに糖尿病の口渇、多尿などの症状が改善されるとして薬草として用いられてきたもの。最近では動物実験で長生きになる研究結果が出て、
アメリカでも人に対して臨床試験が行われるそうだ。メトフォルミンを用いた糖尿病患者は、そうでない場合に比べて8年長生きであるという研究結果も出ている。
メトフォルミンは昔からある薬剤で、現在でも数多くある糖尿病の薬剤の中で安価であり、比較的副作用が少ないことからよく使用されている薬剤である。本来の血糖を下げる働きの他に、もっとおもしろい働きが解ってくるのかもしれません(老化予防にポリープ抑制ということを考えると、何らかの炎症を抑制する作用がありそう)。

2016年

4月

02日

新初期研修医に医療安全講習

新1年生(初期研修1年目)がこの4月に22名入職しました。すでに3月末から様々な部署によるオリエンテーションが始まっています。この日は約半日いただいて、医療安全の実践をグループワークで学んでもらいました。
採血を行うことが多いのは新1年生の研修医。そこでの患者間違えや容器の取り違えなどが実際に起きています。そのようなことを小さい問題のうちに対策を考え、意識を変えるということがとても大切です。
以前に比べると今の新研修医は医療安全に対する意識が学生のうちから高いように思います。座学ではなく、グループワークを通してチームで考えたり作業をする大切さなどを学ぶことも、この実習で大切なことです。
また、毎年この時間の初めに今の気持ちを書いてもらっています。どうして医師になったか?どのような医師になりたいか?なぜこの病院を選んだか?当たり前の質問ですが、これらを2年間保存して卒業の時に渡します。この今の気持ちは、働いて1、2か月もすれば医療サイド側になったものの考えになってしまうからです。今は純粋に医療関係者になる前の、一般人の気持ちなのです。その初心を忘れないようにするために、毎年時間をとって書いてもらっています。
フレッシュマンの姿をみていると、こちらもエネルギーをもらえます。4月はソワソワ、病棟もバタバタ、わくわく、となんだか落ち着かない月です。

2016年

4月

01日

HTLV-1のキャリアのかたへ

厚生労働省の科学研究費補助金で行われているがん対策推進総合研究事業として、HTLV-1キャリア(ウイルスを持っているが発症していない人)を対象としたweb登録サイト<キャリねっと>の運用が始まったと手紙がきました。
HTLV-1は九州地方や中南米に多いウイルスで、これに罹患した人の一部は年数を経て悪性リンパ腫や白血病を発症します。これを成人T細胞性リンパ腫、成人T細胞性白血病(ATL)と言います。ウイルスは母乳または精液を介して感染します。かつては九州に限局した病気とも思われていましたが(今も九州地方ではATLの発症がその他の地域より明らかに多いですが)、人の移動も多いために都心や関西の大都市でも患者数が多くなっています。HTLV-1キャリアが全国でどの位いるのかは、発症していなければ何も症状がないために把握しきれていないのが現状であり、100万人以上いるとされています。
国は登録サイトを開設してキャリアに自主的に登録してもらい、実情把握に努めたり情報ソースになることを期待しているようです。ATLのキャリアをどのくらいの頻度でフォローしなさいというものはなく、通常は発症も60歳以降に多いため、定期的なフォローが早期発見につながるというデータもありません。
私は年に1回検診がてら来ていただいていて、病院とのつながりをもってもらようにしています。関心があったらサイトを除いてみてください。

 

2016年

3月

31日

習い事から学べること

習い事から学べることは数多い。その技術・知識もさることながら、人間関係・上下関係・忍耐力などなど。
ある若い先生と話しをしていて習い事の話題になった時に、とても良いことを言っていた。
<習いごとをして分かったことは、ただの趣味レベルよりもっと高いレベルになろうと思ったら、それなりの努力と自分の創意工夫が必要だということ。そういう考え方が勉強でも何にでも役にたつと思う>と。
ふ~む。なかなか良い言葉ではありませんか?
例えば吹奏楽の楽器演奏するのに肺活量の弱い、小柄な女性では練習量も男の人より多くしなくてはならないし、肺活量アップのためのトレーニングの工夫、技術の工夫を加えないとそれ以上にうまくはなれない。常にそのことを考えていないと上手くなれないだろうし、また上手くいかなくてそこを越える努力、工夫をしてこそ得られるものもある。また努力というのなら誰もが言うことであるが、そこに創意工夫が大切であるというのも、関心したところである。
自分の心にも問うてみた。習い事、日々の仕事。努力はするが創意工夫が足りてないかもな~。

 

2016年

3月

30日

iPSの細胞培養を宇宙でも

久々にiPSの話題です。というのも、すぐ近くの横浜市立大が先端医療センターとしてiPSなどの研究を始めているのは知っていましたが、今回横浜市立大と宇宙航空研究開発機構(JAXA ジャクサ)は、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から肝臓を作製する宇宙実験を、国際宇宙ステーションで2018年度にも始めるという発表がされました。
宇宙で細胞を作るとどうなるのでしょうか。

宇宙でiPS細胞由来の細胞を培養する実験は世界初だそうです。重力の影響を受けない宇宙で臓器を作る技術を開発し、将来地上で移植用臓器を作る研究に活かすというから驚きです。iPS細胞を使った再生医療も発展はしてきていますが、複雑な立体構造を持つ臓器は細胞を装置内で増やしても重力などの影響で大型化しにくく、移植に使える大きさにするのは難しいそうです。そこで重力のない場所で細胞を増やしたらどうなるか。臓器まで作成してしまうとなると、病気によっては”治す”より”取り換える”という時代になるかもしれませんし、そもそも服を着替えるように臓器を取り換えるようになるのでは、と考えたりもします。

 

 

2016年

3月

26日

内科後期研修医卒業式が開かれました。

今年度の内科後期研修医卒業式が鎌倉パークホテルで開かれ、3人の卒業生の門出を祝いました。初期研修後3年間当院で各科ローテート、チーフレジデントを終え、今日の日を迎えました。彼らは血液内科も3か月ずつローテーションして学んでくれました。
この日は当院の内科スタッフだけではなく、湘南厚木病院・東京西病院といった応援に行った先の先生がた、以前の内科を支えてくれていたメンバーが遠くは岡山から集まりました。卒業生がそれぞれスライドを作り、自分の思い出や学んだことをプレゼンテーションするのですが、本当に彼らはプレゼンテーションが上手い。ネット時代というのか、TED時代というのか・・・。年々そのレベルが上がっており、次の人達は大変だ。とても楽しませてもらった卒業式でした。

2016年

3月

25日

心臓血管外科部長 田中正史先生 日本大学心臓血管外科 主任教授に

当院心臓血管外科部長の田中正史先生が日本大学心臓血管外科主任教授にこの4月より就任されることとなり、祝賀会が開催された。一般病院から選出されたとはすばらしいことだと思う。
田中先生とは輸血を多く行う診療科ということで、輸血の問題がおきたときに話し合いをさせていただいた。実は心臓血管外科の手術で体外循環をすると、血小板の低下はまず起き、赤血球は溶血を起こしやすくなる。血液が体外循環で異物に触れることで白血球系・補体系は活性化し、炎症反応を惹起する。しばしば血球の問題がおきるのだが(海外では血液内科へのコンサルトは心臓血管外科が多かった)、その多くは心臓血管外科の先生が対処されている。

さて、スピーチの中で田中先生は<学生の時から教授になって母校の心臓血管外科を立て直したいと志してきた>と話されていた。そのために多くの病院を渡り歩き、大学院にもいき、論文を書き、海外留学をされた。その時期がちょうどやってきて、見事勝ち抜かれたということである。湘南藤沢徳洲会病院、葉山ハートセンターを含めた湘南心臓外科グループを作っていたまだその途中であり、心残りはあるとはいえ学生の時からの夢を叶え、これから20年かけて医局を作りあげていくそうです。外から行かれ、大きな大学であることから勢力争い・人事なども大変であると思いますが、頑張っていただきたいと思います。

2016年

3月

23日

ikarosと急性リンパ性白血病と分類不能型免疫不全症

細胞は自然に成長・分化するのではなく様々な因子によって制御されており、その制御分子に<転写因子>というものがある。したがって、転写因子の異常は細胞分化を抑制し、ひいては癌をひきおこす一つのメカニズムとなる可能性がある。
<Ikaros >は血球分化、とりわけリンパ球の正常な分化(幹細胞からリンパ球への分化)に必須の転写因子である。我々血液関連の疾患と関連があることが解ってきている。実験レベルでは骨髄球系の白血病細胞、T細胞性の白血病細胞にはIkarosの遺伝子発現に異常はなかったが、B細胞性の白血病細胞では転写因子として機能するための大切な場所(DNA結合部位)が欠損していることがわかっている。この機能欠損とB細胞性白血病の発症が関係しているのではないかと考えられていて、実際フィラデルフィア染色体陽性の、予後の悪い急性リンパ性白血病の80%でIkaros遺伝子の変異があるとの報告もある。
そんなIkaros であるが、最近の論文で(N Engl J Med 2016; 374:1032-1043)分類不能型免疫不全症(CVID)とIkarosとの関係が発表された。 CVIDは成人前後で頻回の副鼻腔炎や呼吸器感染などを繰り返す原因不明の疾患で低ガンマグロブリン血症を呈し、時に自己免疫性疾患を呈したり悪性リンパ腫などの腫瘍を合併する。家族性もある。Bリンパ球数は正常だが形質細胞が低下し、抗体産生がうまく行われない。NIHのKuehnらは6家系26名の患者を対象として全エクソーム解析、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション等により、B細胞の減少したCVID患者の遺伝子基盤を解析したところ、転写因子IKAROS遺伝子IKZF1に6種のヘテロ変異を同定した。またヘテロ変異がある29名中2名でALLが発症した。著者らはCVIDとIkarosとの関連を結論づけた。
ここでリンパ球の分化に関連する転写因子ikarosの変異がCVIDという免疫異常にも関連し、また急性リンパ性白血病とも関連しているという、わくわくする面白い繋がりがみられた。

2016年

3月

22日

脆弱性のある骨髄腫の人の治療

多発性骨髄腫の患者さんは平均年齢が70歳程度。すでに他の疾患をもっているかたも多いが、逆に非常に元気なかたもいて年齢だけでは決めることができない。
骨髄腫はこの5年ー10年で大きく変わり、治療薬剤も数多くあり慢性疾患のようになってきた(それでも予後の悪い人はいる)。いかに上手くその人にあった治療を選択し、合併症や副作用をコントロールして快適に生活してもらえるように援助するか、ということが大切になってきた。特に高齢者ではそうだ。
また、治療薬を長期に続けられないといくら良い薬剤であってもその効果は限定的になってしまう。そこが血液内科専門医の腕のみせどころである。最近『blood』で紹介された論文では、最初の治療は一般的には3剤で入るほうが寛解の率が高く治療成績の向上が望めるが、脆弱性のある高齢者では2剤(ベルケイド+デキサメサゾンやレブラミド+デキサメサゾン)が適切だろう。さらに初回投与量も減量しながら行うのが良いと述べている。腎機能障害があればベルケイドを選択、進行が急速な場合にはベルケイド、そうでなければ内服治療で行えて頻回に外来に来なくても済むレブラミド、神経障害がある場合にも良いと紹介されている。
実臨床でも高齢者のかたには私は2剤で入ることが多く、85歳以上のかたでもレブラミドを少量投与している。また時には昔からあるMP療法もうまく織り交ぜなら使用している。
骨髄腫も診断時から複数のクローンがいるとされており、治療によりそれらのクローンが時に変わりながら増えてくる。治療薬を変えてみるとまた効果が現れるのはそのためでもある。治療は効いていて副作用も許容されるレベルであれば、もっと強力に効かせるために薬剤を変更するのではなく、今の治療を続けていくのも高齢者には有用だと述べている。
また来年度も骨髄腫は新薬が出てくる予定である。ますます患者さんはその恩恵を受けられるようになる。

2016年

3月

19日

湘南鎌倉総合病院 女医会 in 北鎌倉

この日、年1回の湘南鎌倉総合病院女医会が開かれた。女医は非常勤も含めると50名近くなった。かつては10名前後でほぼ男性と同じ扱い。専用の当直室もなく、男性と同じように医局ソファーで寝転がったりしていた。女子力ゼロの時代もあったな~。徐々に女医が増えるに従い、皆の要望をまとめて病院に要請していくために女医会を開いた。最初の会はもう10年以上前になる。また男子が聞いたら顔が青ざめるかもしれない情報交換も行われる。これも身を守る手段の共有である。
この女医会も我々アラフィフと次の世代を担う30代の女医がうまくMIXしてきた。我々アラフィフが女医のキャリアを見せていかなきゃならないし、またうまく次に譲りつつ、さらにその診療科や病院が発展出来るように裏方役も務めていかなくてはならないと思う。我らの血液内科は神奈川県内、全国的にみても女医が増えているように思う。男性医師にない気配りが出来、必要とされる人材になれるように皆でがんばりましょう(この終わり方は徳州新聞の直言の最後の決まり文句だ・・・)。

2016年

3月

18日

薬剤師の勉強会で講演

京都の枝垂れ桜です。あと2~3週間で見頃を迎える季節となりましたが、昨年の写真を整理していて見つけました。

さて、この日薬剤師向けの勉強会で骨髄腫の話を講演させていただきました。そのために複数のレビューを読みましたが、血液の領域ではこれからの薬も含めて骨髄腫に対するスポットはまだまだ当たる領域であると感じます。アメリカ血液学会が出版する『Blood journal』は世界的な学術雑誌ですが、基礎から臨床までの論文を収めた毎週発行される質の高い雑誌です。その中での”How I treat” シリーズは臨床家に支持されている、とても良いレビューです。骨髄腫に関するよいレビューがこの数年たくさん出ていたので改めて読み、今回の発表前に自分なりにまとめを作成しました。随時ホームぺージの中でご紹介しようと思います。
また、本日の講演会では薬剤師の患者教育の取り組みが紹介されていました。今後それに対する加算も付き、医師が薬剤の説明をするのではなく薬剤師がより積極的に説明し、副作用にも対処するようになっていくことになりそうです。当院の外来化学療法を行うオンコロジーセンターでは薬剤師、看護師が治療中に副作用を尋ね、治療の対処について主治医にアドバイスしたり、患者さんからの電話連絡にも対応してくれています。すでに先進的な取り組みをしていたということですね。

2016年

3月

17日

湘南鎌倉総合病院H27年度研修医卒業式

当院の初期研修医、ならびに後期研修医の卒業式がこの日行われた。毎年多くの研修医が巣立っていく。初期研修医(2年間)だけでも毎年17~18名、全部合わせたらどこかの大学の医局より大きい、一大組織である。
医師としての最初の姿勢を作るのは、この初期研修の時だ。「患者さんのために」と医師なら誰でもその言葉を口にするが、本当に”患者さんのために”を実践するかはピンからキリまでだ。当院は徳田虎雄先生が<命だけは平等だ>のスローガンのもと最初にそれを実践し、成長してきた。患者さんにはやさしい病院だと思う。最近はそれが職員全員に浸透していないと批判もいただくが、それでもそれを実践している上級医は多い。その上級医とともに若いときに業務をすることは、研修医の医師としてのベースを作るうえでとても大切なことである。
院内に残る先生も多くなったが、外部に出た人たちはその姿から湘南鎌倉総合病院がどんな病院なのかを示してくれる存在となるし、当院に残る人は将来を担う医師になっていってくれると思う。毎年自らも振り返りながら、若い人たちに触れることもで自分も成長させてもらっているということを感じるこの卒業式である。

2016年

3月

15日

Ai と人間の碁の戦い

米グーグルが開発した囲碁の人工知能(Ai)「アルファ碁」とトップ級プロ棋士のイ・セドル氏の5局勝負は2016年3月15日、人工知能の4勝1敗で終わった。この勝ち負けに関してはこれから色々な議論がされるのであろうが、第4戦で勝利したイ・セドル氏は、勝つための手法として一流棋士が使用しない、一般的な庶民の方法を試みた。それに対して経験をもとに上達を続ける「ディープラーニング(深層学習)」能力をもつ人工知能は、その学習がなかったがために慌ててしまったとか。
最近は人工知能により失う職業などの話題が巷によく出ている。人間は今後どうなるの?
私には分からないけれども、この<想定外>にヒントがあるように思う。つまり学習していなくてももっと幅広い経験や、全く関係がないようにみえる知識から関連付けて答えをみつける。それが人間の経験値というものだ。
逆にAiは習っていなかったら答が出しにくい。しかし彼らもそこから学習する。そして進化する。関連付けのない全く違う知識も学習させられていったとき、人間のように深く考えて結論をだし、行動するようになるのか?

開発者さえその危険を警告する一方で、可能性への期待も高い人工知能である。

2016年

3月

14日

プロとアマの違い

3月14日、もう春じゃないかというこの時期に箱根周辺、丹沢山系に雪が降り積もり、雪の降ったラインがきれいに水平に見えました。でも真冬の時期に比べると富士山がややくすんで見えます。これはやはり春になっている一つのサイン。

さて医学界新聞で連載をされている青柳有紀先生の文章が好きでいつも読ませていただいていたのですが、今回で終了とか。残念・・・。3月14日号に書かれていた文章が良いなと思ったのでご紹介します。
”プロとアマの違いは?”一流のプロ(料理人に例えて)は毎回一定基準を超えた質の高い料理を出します。それに比べてアマは時にはとんでもなく美味しいものが本に沿って作れば出来るかもしれませんが、それを繰り返し一定のレベルでは出せない。ばらつき(variation)が大きい。そこがプロとアマの違いなのだといいます。
それが医師である我々の診断にも当てはまるであろうというのです。確かにいい例えだなと思います。
年数の経った医師とそうでない医師(当然年を経るだけではなく、実臨床をふんでいないとなりませんが)。研修医のほうがとんでもなくヒットする診断を思いつくこともありますが、逆に簡単な疾患をあえて難しく考えすぎてしまう、そういうばらつきもあると思います。カンファレンスでは良いことを言うのに、目の前に患者さんがいるとその冴えがみられない研修医もいます。我々はそのばらつきを減らすために、一つのやりかたとしてシステマチックなアプローチ(この順番でこのように患者問診をしなさいと、いうようなやりかた)が必要だと青柳先生は述べています。このような手法はアメリカの医学教育が得意だと思います。
ただこれだけではだめで、上級医になったらそれ以上のスキルが求められるといいます。確かに想定外のことばかり。これだけの人間のvariationがあれば病気、症状にも大層なvaritationがあります。これらにも慌てずに対応できるのがより洗練されたプロなのであり、それが経験なのだと思います。
また、ある先生と話しをしていたときに「プロとはcommonな状況だけでなく、想定外な状況・いかなる困難な状況に対しても答えをだす方法を考えて答えをだし、実行していくこと」だと言っていました。医療にも結び付く話だと思います。

 

2016年

3月

13日

メルトダウンの事実 NHKスペシャル

今年3月11日 東日本大震災から5年。テレビ番組では色々な特集や取材が組まれていたが、観るのがなんだか辛くて途中で止めてしまうものもあった。
あの時のことを思い出す。
私は外来診察室にいて書類を記入していたらカタカタカタカタと机が小さく揺れはじめ、そのあと大きな横揺れになった。すぐにオンコロジーセンターに行った。上から配管されている酸素の管がぶらんぶらん揺れ、リクライニング椅子で点滴治療をしている患者さんは倒れてはいなかったが、揺れて怖がっていた。点滴棒からぶら下がる点滴も揺れていた。一部トイレが使えなくなりエレベーターは動かず、私の患者さんが中に閉じ込められた。帰宅出来ない患者さんはオンコロジーセンターに泊まってもらい、おにぎりと水道水で夜を過ごしてもらった。21時過ぎに電気が復旧したが、復旧しなければ深夜0時で燃料がなくなり自家発電もままならないと言われていた。人工呼吸器が使えなくなり、我々が手動でバック換気をすることも考えていた。すでにその頃、福島原発のメルトダウンは始まっていた。
3月13日放映されたNHKスペシャル『原発メルトダウン 危機の88時間』をみて、今知ったことも多い。東日本全部が人が住めない、日本国の半分が使い物にならなくなるかもしれない、格納容器そのものの爆発破損の危機がせまっていた震災直後88時間。現場の危機感たるや、戦争以上の緊張状態であっただろう。自分の命も仕事とともに失われるかもという、特攻隊のような気持ちだった人もいただろう。作られた番組とはいえ当時の人々の混乱の中で、しかし国のため何とかその危機を脱しようとしていた真実が、我々にも分かりやすく伝えられていた。これを記録として残して語り継ぐことが大切だ。そしてこんな危険な原発を、せめて他国に売るなんてことはしてほしくない。

2016年

3月

13日

一隅を照らす

病院の夜桜ですが、なかなかうまく撮れませんな~。玉縄桜もそろそろ終わりを迎えております。
さて「一隅(いちぐう)を照らす」という言葉は、私の好きな京都東山にある天台宗 青蓮院門跡にある屏風に書かれてある言葉でした。小さな部屋の隅でも光り輝く人間でありなさい・・・なんて意味にとっていましたが、改めてその意味に触れる文章に出会い、大切にしたい言葉として皆さんに紹介したいと思います。
比叡山を開かれた伝教大師・最澄(767-822)の著書『山家学生式』よりの出典です。 『山家学生式』は、伝教大師が日本天台宗を開かれるに当たり、人々を幸せへと導くために「一隅を照らす国宝的人材」を養成したいと、熱意をこめて著述されたものです。
「径寸(けいすん)十枚これ国宝に非ず、一隅を照らすこれ則ち国宝なり」。
「径寸」とは金銀財宝のことで、「一隅」とは今いるその場所のことです。 お金や財宝は国の宝ではなく、家庭や職場など自分自身が置かれたその場所で精一杯努力し、明るく光り輝くことの出来る人こそ何物にも変えがたい貴い国の宝である。一人一人がそれぞれの持ち場で全力を尽くすことによって、社会全体が明るく照らされていく。自分のためばかりではなく人の幸せ、人類みんなの幸せ求めていく。「人の心の痛みがわかる人」「人の喜びが素直に喜べる人」「人に対して優しさや思いやりがもてる心豊かな人」こそ国の宝である、そうおっしゃっています。そしてそういう心豊かな人が集まれば明るい社会が実現するというのです。 
「一隅を照らす運動」は伝教大師の精神を現代に生かし、一人一人が自らの心を高めて豊かな人間になり明るい社会を築いていこうということを目的に、1969年より始まったそうです。一億総活躍社会なんていう言葉よりも、この言葉のほうが良い社会を作るうえで現実味があると思います。
先日もブログに書きましたが、どんなに老いたかたでも・どんな病気されて弱ったかたでも、その姿・頑張ったり辛くてもそれを表に出さないその姿が、人に勇気を与えたり安心を与えたりすることが出来るのです。これが一隅を照らすということではないでしょうか。

2016年

3月

12日

恩師 森啓教授の退官式にて

森教授は私が初期研修医の頃から、長期にわたり当院の血液疾患の診断、治療を指導してくださった血液内科の先生である。私も先生のもと(昭和大学藤が丘病院)で、短期間ではあるが勉強させていただいた。
先生は医師としての生涯をずっと臨床に従事されてきた。患者さんの前に常に顔をみせ、その人との人間関係を大切にし、家族・その人の生活環境とともに人を治し癒す。それを実践されてきたかたである。私がこれまで出会った医師の中で、最も患者さんに寄り添う医師である。
上になればなるほど現場から離れることが多くなる。でも教授になっても決して驕ることなく、この日も病棟で仕事をされていたということである。先生に診てもらった人は幸せであったろう。どんなに良いデータのある薬剤が出来ても、それを現場で適切な人に適切なタイミングで、適切な量を使えなければ患者さんへ本当の恩恵は届かない。そういう現場の先端にいる医師には、研究で名前を馳せるというのではなくとも森先生のように立派なかたが大勢いる。
私もいつまでも森先生を師と仰ぎ、患者さんの傍に寄り添う現場の医師であり続けたいと思う。先生の最後の挨拶は心温まるもので、涙が止まらなかった。ごくろうさまでした。これからも一臨床医として仕事を続けられるとのことでした。

2016年

3月

11日

高齢者にみられるクローン性造血

暖かくなったと思ったらまた寒くなり、1日で10度も最高気温の差がある寒暖の差が激しいこの頃です。梅の木の向こうでめじろのカップルが体を寄せ合っています。

さて、急性白血病は若い人に多いと誤解されている一般の方は多い。ニュースで芸能人が報道されるからでしょうが、実は急性白血病の平均年齢は65歳前後。じゃあ、高齢者になぜ急性白血病が多いのか?それは正しくは証明されていないが、ヒントになる理論はあります。
2014年に大きな医学雑誌に複数論文が出されました。健常人でも一部の高齢者では血液を調べると、ある遺伝子異常をもった同じクローン(祖先が同じ)の細胞が増殖していることが判明しました。65歳以上では約10%にそのようなクローン造血がみられるそうです。しかもこの遺伝子異常は急性骨髄性白血病でみられる遺伝子変異と共通なもの(DNMT3,TET2,ASL1)があること、そしてこのような人たちはそれらのクローンがない人と比べて血液のがんになる確率が高いということが解っています。じゃあ異常がある人すべて、やがて急性白血病になるのか?というとそうでもないのです。一つの遺伝子異常では急性白血病にはならないとされています。今、仮説としてはそういう遺伝子異常のあるクローンがいるところで、さらに一つ、二つと遺伝子異常が加わることで、急性白血病になるのであろうと考えられています。また、おもしろいことにそのようなクローン造血をしている患者では冠動脈疾患や脳卒中の発生比率も高いそう。老化の機序の秘密がそこにありそうな予感が大いにします。
でも、まだその遺伝子異常があるうちに(しかもまだ発症していないうち)予防投与をしたら白血病にならないのか、予後は良いのかどうかは全く分かっていません。

2016年

3月

11日

麻黄のはいった漢方薬

患者さんに麻黄の入った漢方薬を処方したところ、問い合わせがあった。甲状腺薬を飲んでいますが大丈夫ですか?と。
最近は飲み合わせを気を付けて、薬剤を調べる患者さんもいる。こちらの知らないことを指摘されることも多い。
麻黄はエフェドリンの減量であり、発汗、鎮咳をもたらす生薬である。風邪に用いられる葛根湯、麻黄湯、鼻汁などの症状改善に用いられる小青竜湯、脂肪太りに用いられる防風通聖散、皮膚疾患に用いられるヨクイニンなどに含まれている。このエフェドリン作用により動機、血圧上昇などの交感神経賦活作用があるため、甲状腺機能亢進症の人、また甲状腺を補充するための薬剤を服用している人では、その交感神経症状が強くでるかもしれないので注意ということのようである。少量から初めてみてくださいとお伝えした。ちなみにエフェドリンは運動選手のドーピングや、薬物中毒を調べるときにトライエージ(尿検査)でも引っかかる。注意が必要である。

2016年

3月

11日

Ai勉強会 in 湘南鎌倉総合病院

当院では死亡時画像診断(Ai: Autopsy imaging)を積極的に行っている。3年前に委員会をたちあげて院内にシステムを構築した。それを用いて運用し、年間70件程度行っている。
死後の画像を読むのは難しい。というのも心肺蘇生を受けて肋骨が折れることもあるし、肺うっ血(肺に水がたまる→画像では白くなる)を起こすこともある。撮る時間により血液が凝固したりして様子が変化する。それらもあり読み慣れていないと診断は難しく、また訴訟に用いられる可能性もあるためレポートの言葉使いや診断にも気を配る必要がある。
当院では自分達で診断が難しい症例についてはAi情報センターに送って、読影していただいている。その代表理事である山本正二先生を毎年この時期にお招きし、当院で行われた症例につき講演をお願いしている。本日はその講演会が院内で行われた。
Ai情報センターの読影レポートは非常にしっかりしている。単独の医師での読影ではなく、難しい症例は複数の医師により読影。また以前のCTを取り寄せて比較したりして、出来るだけ診断に導くための努力をされている。単なる読影ではなく、診断推論だな~と思う。読影経験の多さと、そこからくる診断技術はやはり信頼し得るものがある。
また、本日の講演で山本先生は「Aiは震災などが起きた時の個人認証にも使うことが出来るだろう」と述べていた。検診のレントゲンや歯医者で撮られたレントゲンとAiを比較することで、個人の特定に(今日は東日本大震災から5年目)用いることも可能だという。
昨年10月から医療事故調査制度が始まった。まだまだ現実的にはあまり動いていないようだが、山本先生の所へは徐々に調査に関係する読影依頼が増えてきているという。今後各病院でもAiを撮ることが増加するであろう。山本先生からのアドバイスとして「とにかく全身を撮ること(頭から足の先まで)。処置をしたらチューブ類などは抜かないでそのまま。臨床情報をできる限り集めて提供。」ということでした。
当院の画像の取り方は良く出来ている、とお褒めの言葉もいただきました。

2016年

3月

09日

認知的不協和と医療

澄み渡る空のもとでの成田山の本堂です。成田仕事の最後お別れの日に寄ってお祈りをしてきました。
さて、自分自身の環境に対するさまざまな知識や思考などを認知要素といいます。個々の認知要素が互いに矛盾や葛藤を生じ、自分の中で不協和な状態になることを<認知的不協和>といいます。
当初患者さんが思い描いていた理想の医療現場の姿と現実とのギャップに認知的不協和が生じやすいことは、医療の現場では多々経験することです。それらの一部が患者とのクレーム、問題に発展します。医療現場はテレビで放映されてこのようなものというイメージが一般のかたの中にあるので医療関係者でない人がいざ入院になったり病気したりすると、これって何~~~となるはず。ところが医療関係者はそれが当たり前だからいちいち相手が何に不安になっているか全部理解することができない。
そのような環境において、認知的不協和を解消するためには、「改革するか」「順応するか」「辞めるか」。患者側からであれば、(1)改革する →投書して提案(2)順応する →我慢する (3)辞める→病院を変えるということになるでしょう。ここで(2)の時に、すごくいい人でがまんし続ける人もいます。それをくみ取ってあげるようにする、不安をなくすように話をきく、それは訴訟にならない、クレームを減らすうえでとても大切なことであり、病院満足度を上げるものなのです。
また患者さんが<この先生でよかったはずだけど、この病院でよかったか・・・>というあとになって生じる認知的不協和。ときに、同室者の人の一言、(あの先生ってとてもいい先生だよ、評判いいよ)というのも<うそでなければ>患者さんの認知的不協和を解消するのに役立ち、治療には信頼を与えプラスの方向に働きます。自分の先生がいい評判だとうれしいですよね。こういう術も大切な医術だと思います。

 

2016年

3月

08日

赤芽球癆と妊娠

赤芽球癆とは血液を作る工場である骨髄で赤血球だけが産生されなくなる病気で、様々な原因が知られている。原因が特定出来ないものを特発性、その他に薬剤、胸腺腫関連、悪性リンパ腫関連、ABO不適合幹細胞移植後などが知られている。シクロスポリンなどを用いた免疫抑制療法を一般には行い、治療薬の効果は高いが中止すると再燃することも多い、やっかいな病気である。
ところが稀に妊娠に関連してもおきる。症例は非常に少ないが、若い女性で赤芽球癆になったら妊娠を疑うこと、と書いてある。妊娠のいずれの時期にもおき、多くの人は出産すれば3か月以内に自然に貧血は治る。それまで輸血で頑張る、というのが治療である。子供に影響はでない。ただ、問題は次の妊娠でも再燃する可能性があること。そのような場合に主治医だったらどちらを薦めるか。とても難しい問題だ。

2016年

3月

07日

リオオリンピック サッカー 2人の監督の明暗

左の写真は、軽い雪が降ったあとそれが溶けてまたこおり、氷背負いの梅の花です。珍しいのでぱちり。

女子サッカーはオリンピックに出場できないことが決定。でも素人目にも中国や北朝鮮のチームの動きがとてもよいことのに比べて日本はさえないのがわかった。残念ではあるがこれが結果だと思う。女子サッカーの監督も引退される。長い間お疲れさまでした。

男子サッカーは厳しいといわれながらも手倉森監督が<思い>でたぐりよせたオリンピックの切符。今時の人である。私と同世代で親しみがわく。テレビ出演されてインタビューで答えている姿から東北のかたの素朴さと同時に強さが伝わってくる。なでしこジャパンが当時ワールドカップで勝ったときのように、またスケートの羽生弦選手が東北の思いを常に忘れずリンクで滑るように、日本のため、東北の人のため、どうしても勝ちたいという気持ち、精神力がチームを強くし一つに結束。今回の勝利を導いた。

手倉森監督の談話から。
経験が人を弱くするのか、それとも強くするのか。人間を形成するのは過去。未熟だった選手に、<目の前で起きることは全て必要なことなんだ>と選手に言い続けた。ロッカールームで震災当時の話をする、試合前に被災地の映像を見せる、といった直接的なことばかりではない。障害を持つ子供や末期がん患者の病棟への訪問、寺院での座禅。あえて遠征先にバングラデシュを選び、劣悪な環境下でのプレーも強いた。<いかに自分が恵まれているのかを強く思え、と伝え続けました。そして仲間のために、国民のために戦うんだと。最後は、表面的な人間は1人もいなくなったと思います>と述べている。

我々も組織が大きくなったり複雑になると、いろんな人がいて、それぞれベクトルの向き(つまり同じ向かう目的)が違う。それをそろえていくのが難しいことと常に感じます。しかしそれでもできる人はいる。やはりその人の<真剣に思うこうしたいという思いの強さ>が人を組織を変えることができるのでしょうか。
インタビューをみながらそんなことを感じていました。

 

2016年

3月

05日

日本医師会主催 かかりつけ医育成のための勉強会

平成28年4月より日本医師会では「日医かかりつけ医機能研修制度」を実施する。国としてのかかりつけ医の普及推進の方針に従い実施される。
「かかりつけ医機能」として
(1)患者中心の医療の実践
(2)継続性を重視した医療の実践
(3)チーム医療、多職種連携の実践
(4)社会的な保健・医療・介護・福祉活動の実践
(5)地域の特性に応じた医療の実践
(6)在宅医療の実践
の6つを挙げ、これらの機能に沿った形で研修内容が組まれており、「基本研修」「応用研修」「実地研修」の3段階に分類されている。この内容がなかなか奥深く、でも重要な点を挙げていると思う。
「基本研修」は日医生涯教育認定証の取得
「応用研修」は
1.かかりつけ医の倫理、質・医療安全、感染対策
2.健康増進・予防医学、生活習慣病、認知症
3.フレイル予防、高齢者総合機能評価(CGA)・老年症候群
4.かかりつけ医の栄養管理、リハビリテーション、摂食嚥下障害
5.かかりつけ医の在宅医療・緩和医療
6.症例検討
が挙げられている(我々病院医も勉強したい内容である)。
医師会では4月より本シラバスに基づくテキストを用いた座学の研修会を開催する。
                                   <次へ>

続きを読む

2016年

3月

03日

松方弘樹氏 脳リンパ腫治療

俳優の松方弘樹さんが脳リンパ腫になり、抗がん剤治療が開始されたとの報道がありました。
脳リンパ腫について、NCCN(アメリカのがんのガイドライン)から抜粋したものをまとめてご紹介します。

脳リンパ腫は全体の脳腫瘍の3%を占めるもので非ホジキンリンパ腫が多く、脳実質だけでなく脊髄、眼球にも広がったりします。脳実質に入るのが90%以上、目に入るのが10-20%程度とされます。HIVに多いリンパ腫としても知られていますが、免疫不全がなくても発症します。症状は色々で43%が意識障害、33%が脳圧亢進症状(頭痛など)、14%がけいれんというデータがあります。診断は脳の生検が一般的です。脳圧を下げるためにステロイドを使用すると頭痛が減少したりしますが、リンパ腫であると縮小してしまうこともあるので、診断がつくまでは脳浮腫が強くなければ待ちます。
診断がついたら眼科的な検査、髄液検査、他に転移していないかを考えて、CTなどの検査を行います。その後治療としては大量メトトレキセートを含んだメニュー(単剤で行うことも)を行います。副作用としては腎障害が問題となり、大量の輸液が必要です。また放射線療法も適応となりますが、60歳以上では認知症を含めた神経障害の頻度が高いため、まずは化学療法(抗がん剤)を行うことが多いです。残存病変に対してあとで照射を追加することもあります。

当院では脳だけにあるリンパ腫の患者さんは脳神経外科で治療されることが多いですが、精巣や副腎、乳房からのリンパ腫は脳にリンパ腫として出ることもしばしばあり、これらは当科で治療をしています。
私の患者さんに精巣から脳転移した患者さんがいますが、80歳を超えても抗がん剤治療を(減量していますが)続けていて元気です。松方さんも頑張っていただきたいと思います。

2016年

3月

01日

鎌倉に戻りました。

成田富里徳洲会病院の応援が終了。3月1日からは私と交代で当科より玉井医師が行くこととなった。科としてはまだ大変な時期が続く。
治療している患者さんからは「かなり不安だった」「緊張していた」という言葉をよく言われた。治療中の立場なら当然のことだろうなと思う。ある患者さんは家族に「先生がいない間何も起きないように出掛けるな。大人しくしていなさい」と言われて、外出すら控えていたという。玉井先生の患者さんにも同様の気持ちを味わわせることとなるだろう。出来るだけ皆でカバーしなくてはならない。
他の皆も休みをあまりとらずに頑張り、皆で痛み分けをしていました・・・という言葉を聞き、たしかに私だけが大変だったわけではなく、血液内科のスタッフ、研修医の皆が大変だったことを忘れてはならないと思う。

さて、この2か月間はブルドーザーのように外来診療をこなした2か月間でもあった。鎌倉の時に比べては時間はあるはずなのだが、普段診療をしているのとは違う患者を診ることもあり、疲れた。自分に足りない点も自覚し、まだまだ学びが必要であると思った。転院のための病院探しも本当に大変な気持ちが分かった。救急患者を転送させるのに8件電話をかけて全て断れたこともある。
「もういなくなるのですか・・・。ようやくかかりたい病院と先生にあえたと思ったら・・・」とお世辞かもしれないが患者さんから言われると、後ろ髪をひかれる思いもあった。女性の先生がいないだけに、よりそう思うとも言われた。良い診療をすれば、まだまだ必要とされるということである。

何か自分にプラスになったかは、もう少し経ってからわかるだろうか。3月2日からは朝から晩まで連日働き詰めの、鎌倉モードに戻ります。

2016年

2月

29日

プロトンポンプインヒビター(PPI)は貧血の原因となる。

逆流性食道炎は高齢者に多い胸やけをおこす代表的な疾患で、患者さんもよく知っている病気である。これに対してはプロトンポンプインヒビター(PPI)が効果が高く、オメプラゾール、タケプロン、ランソプラゾールといった名前で処方をうけている患者さんも多い。効果が高いので医師も処方することが多いと思うが実はこの薬剤、色々と副作用がある。
 ある医学記事では鉄欠乏性貧血の原因としてこの薬剤あることが書かれていた。PPIは胃酸の酸の濃度を下げてpHが上がる。そうすることにより鉄の吸収もVitB12の吸収も悪くなる。長期間の使用は特に高齢者は控えたほうが良いとされている。バレット食道と食道裂孔ヘルニアがひどい場合には利益が増すと考えられれば長期的に使用するが、それ以外は高齢者では8週以内の使用にとどめ他の薬剤(H2ブロッカー)に変更し、さらに中止していくことが望ましいとされる。H2ブロッカーでもビタミンB12の吸収低下はおきるが、その比率はPPIよりも低い。2年以上PPIを服用している人のVitB12不足は、胃薬を飲んでいない人と比べてオッズ比1.65、2年以上H2ブロッカーを服用している人ではオッズ比1.25 で不足がみられるという( 2013 Dec 11;310(22):2435-42.) 。
PPIの長期的な副作用にはClostridium Difficileの感染症や低Mg血症になりやすかったり、骨塩量の低下により骨折のリスクが高くなる。また心血管系のイベント(つまり心筋梗塞など)のリスクを高めるという報告( 2015 Jun 10;10(6):e0124653)、腎機能障害を長期的に高めるという報告( 2016 Feb 1;176(2):238-46)などが出ているし、誤嚥性肺炎もおこしやすいという。これらから私も症状改善のために出しているPPI を一時中止したり薬剤変更を見直す必要性、またよく分からない貧血のときの鑑別として、長期間処方されているこれらの胃薬を思い出す必要がありそうである。 

2016年

2月

23日

成田富里徳洲会病院の院長の覚悟

こちらは成田富里徳洲会病院の11階からみた眺めである。美しい夕日と、なんと富士山がみえたのである。さすがに鎌倉からみるよりも小さいが、空が広くてこんなにもきれいな夕焼けとともにみえたので感激してしまった。11階はまだオープンしていない病棟で、入り込んで景色に夢中になっていた私は出られなくなってしまったというオチもついている。

さて、2か月間の応援終了ということで院長と数人とで食事に出かけた。成田富里徳洲会病院の院長先生が我々の仕事を労い、食事会を開いてくれたのだ。
考えられないほどの少ないスタッフで2015年9月に開院。年齢を理由にはせず当直もこなし、そして絶対救急は断らないという姿勢を打ち出して働いている院長。皆も院長がこれだけ頑張っているからと口々に言い、忙しくて文句を言いたくても頑張っている。手伝っているこちらも文句をいいたくても「またもう少し頑張ろう」という気持ちになってしまう。
 私はこの日、院長にどうしても聞きたいことがあった。なぜこのような悪い条件の中で、しかも急な話で院長を引き受けたのですかと。こんなこときく奴はなかなかいないだろう。でも、是非その時の気持ちを聞いてみたかった。
話を聞いていて「誰もやれないというなら自分がやってやる。困難だからこそやってみる。見ておれ!」という覚悟が感じられた。必要なのは覚悟と勇気だ。
あと素晴らしいと思ったのは、外科医でありながら救急をすべて受け入れるとなると整形外科の患者も診ないといけない。そのため肩の脱臼整復もやれるようになった。まだ学ぶことはあり、進化し続けていると言うのだ。その姿勢が素晴らしい!困難で文句ばかり言うのではなく、自分の背中をみせる。今はあまり師の背中をみて学ぶということは言われない時代だが、でも下の者は上の姿勢を見ているものだと思う。

2016年

2月

21日

成田エクスプレスのサービス大丈夫?

この数日はやや暖かくなり、知らぬ間にもう梅も終わりそうな感じである。
さて、成田富里徳洲会病院の応援にいって1.5か月が過ぎた。時々成田エクスプレスを利用しているが、以前利用した時と変わったなと思うのは、車内の切符チェックがなくなったこと。乗務員が回ってくるのが著しく少ない。これも経費削減なのか?
この日乗ってみたら天井から下がっているTVモニターが走り出すとカタカタと鳴り、案外響く。まずはネジが外れていないかと不安になり、ずっと鳴っていると静かな中で気分が悪くなってくる。席を変えてもらいたいと4車両歩いてみたが、みつけられない。どこにもいないのだ。グリーン車にまで行ってみたら、グリーン車内も部品の音がカタカタとうるさい。いったいこの車両は整備されているのか?と不安になる。
ようやく乗務員がまわってきた。モニターから音がしていますといってもあまり気にする風はなく(実際音は聞いている)、席を替えてほしいと言ったらその車両の一番端へと。音がまだ聞こえる場所なので別の車両はだめか(東京駅から大勢乗ってくるとはいえ、たくさん空いた席があるのは確認済)というと、客がまだ乗ってくるかもしれないからだめだ、それなら東京駅まで(まだ2駅くらいあった)立っていろと言う。東京駅過ぎて空いていれば自由に動いてもよいと。立っていろ?何というサービス精神。横須賀線のグリーン車だって、こんな音しない。がっかりした。もっと客として図々しく立ち振る舞うしかないのか?
天下の成田エクスプレス様のサービスは決して良いとは言えないサービスだったし、人が少ないことは逆に異常事態等に十分対応出来ない可能性がある。車内の異常に気づきにくいということは、整備点検漏れにもつながると思った。

2016年

2月

20日

リンパ腫でPET検査をやるとき その2

玉縄桜と病院の建物です。少し散りかけています。
さてリンパ腫でPET検査をやるとき、治療後の評価としての話です。
治療後には評価として一般的にCTを行いますが、今は新しいLugano評価というものがあって、CTにPET検査をあわせる治療評価基準が出てきています。CTでは腫瘤状のものが残っていても、活動性が残っているのかどうか不明なことがあります。それを見るためにもPET検査を行って陰性であったほうが、より確実な治療効果寛解ということが言えます。
ところが治療後すぐに評価してしまうと擬陽性、偽陰性となることがあります。G-CSF(白血球をあげる薬剤)を打ってしまうと3週間位は骨髄がPETで光ってしまうようです。よって行う時期も考えなくてはなりません。感染症があるとそこも光ることがあるので注意が必要です。
またPETが不得意な臓器として脳、腎臓、心臓、腸管(生理的に光ることがある)が挙げられます。そのためCTとともに評価することも大切です。残存病変に対しては放射線治療を追加したり、あるいは全体的に残っていれば新たな化学療法を引き続き行ったりします。
治療の途中で行うことでそのまま同じメニューを継続して良いのか、寛解しやすいのかを判定するやりかたをしている国もありますが一般的ではないこと、日本ではコストも高い(10万円程度)ため途中で行うことは現実的にはされていません。

2016年

2月

19日

リンパ腫の人にPET検査をやるとき その1

患者さんから質問を受けた。「リンパ腫の人ってどんな時にPET-CT検査やるのでしょうか?」
それについてまとめてみます。

悪性リンパ腫の人にPET検査をやるときは大きくわけて
1.初診時(診断時)
2.治療後(治療評価) 
3.海外では研究などで治療途中で効果判定に行う 
とされます。
まず1.について。悪性リンパ腫には色々な組織があり、PET検査が陽性で出やすいもの、そうでないものがあります。ぜひやったほうがよい組織型はホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型、濾胞性リンパ腫 gradeⅢ、 低悪性度リンパ腫から急激に進行した場合です。低悪性度リンパ腫(濾胞性やmarginal zone lymphoma、小リンパ球リンパ腫)や末梢T細胞性リンパ腫では陽性に出にくいともいわれます。初診時にPET検査をすることにより、CTだけの時に比べてステージがより進行期に入るのが8~20%あるとされますし、骨髄浸潤は感度が高いこと、また活動性の高い組織がどこか分かり、生検するときの参考になります。しかしバーキットリンパ腫やびまん性大細胞型で進行速度が速い、また合併症が出ていて治療を急ぐべきときには治療開始が優先されます。治療後については次回。

2016年

2月

18日

組織で働かない人も必要 働きアリの研究から

「働かないアリ」の研究に取り組んでいる北海道大学の長谷川英祐氏の研究が、テレビ番組で紹介されていた。
働きアリに個々に識別をつけて長期間観察。全員がこまこまと動くと思いきや、中には見つくろいばかりしているアリもいるらしく、これまでの研究で2割のアリはほとんど働かないことをみつけ、発表されている。しかも2割の働かないアリを隔離すると、今度は働いていたはずのアリから2割がまた働かなくなるらしい。そしそれらの働かないアリのいる組織のほうが、長く存続すると述べていた。これが人間にそのまま置き換えられるわけではないであろうが、人間の組織も同じだろうか。ふーむ。
働き蜂のような人だって、多くがのんびりする組織の中では変わるかもしれないし、働き蜂ばかりの中に入れられたら自分以上にもっと働く人にこれまでの”一番働く”という役割を譲るかもしれない。また長谷川氏が例として挙げていたのは、野球チームやサッカーチーム。今働いてなくても、控えに良い選手が複数いたほうがいざというときには交代出来るし、そういうチームのほうが強いですよねと言っていた。
特に忙しい環境にいると、働かない人がいるとイライラしてしまうことがよくある。あてにするからもっと頭にくる。でもこの研究を頭の片隅に置いておき、組織が長持ちするためにはフル頑張りしていない人も必要なのだと割りきることも、大切ではないかと思う。

2016年

2月

16日

ワーファリンと新規抗凝固剤、脳出血はどちらが多い?

昔からあるワーファリンは、抗凝固剤として心房細動の脳梗塞予防や一般的な血栓予防に使用されてきましたが、個人によりその効果に大きなばらつきがあり、食事の影響を受けやすいなどの問題がありました。現在新規抗凝固剤が複数発売されるようになり(イグザレルト、エリキュースなど)、腎機能障害がなければ微調整があまりいらない薬剤であり、コストはかかるもののその簡便さから使用されることが多くなってきています。でも微調整しなくて良いというけれど、本当に個人差はないのか?出血のエピソードは少ないのか?ということが疑問としてあり、これまでの研究でもいくつかそれに対する答えは出ていました。

今回neurologyに発表された研究ではイグザレルト、エリキュース(第X因子阻害剤)、プラザキサ(直接トロンビン阻害剤)を飲んでいる人と、ワーファリンINR2.5で調整した人の脳出血の比率、程度を比較したもの。脳出血のサイズはワーファリンのほうが多く、またその障害の程度もワーファリンのほうが重たかったようです。ワーファリンに使い慣れていて、隠れた腎機能障害もある高齢者にコントロールなしで使うことに抵抗がありあまり使用してこなかった私ですが、もう少しワーファリン対象者に新しい抗凝固剤を考えてみてもいいのかなとも思いました。                               Neurology 2016 Jan 2686:360.

2016年

2月

15日

ITPにはプレドニン?それともデキサメサゾン?

ITP(特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少性紫斑病)は免疫が関与する血小板減少症の総称で、特に原因がはっきりしないものをいいます。抗体が関連し、血小板が破壊されることがメカニズムとされてきましたが、最近の研究では巨核球(血小板の親玉)の成熟障害や血小板産生障害、またTリンパ球による血小板の破壊などがあるとされます。治療は日本ではピロリ菌が陽性であればピロリ除菌をしますが、それでも効果がない場合にはステロイド治療が第一選択の治療となります。一般的にはプレドニンを0.5㎎-1㎎/kgを使用しますが1か月以上使用することも多く、ムーンフェイスや血糖が高くなるなどの副作用がでます。そこで他のステロイド剤としてデキサメサゾンという半減期に長い力価の高いステロイドを短期間で使用した場合と、通常のステロイド治療にて効果に差があるのか、副作用がどうなのかを調べた研究が報告されました。January 21, 2016; Blood: 127 (3) 

まずは
(1)大量デキサメサゾン群の患者さんには40㎎/日を4日間、もし血小板が3万以下だったり出血があれば40㎎/日を4日間もう一度
(2)プレドニンの群は1㎎/㎏/日を4週間その後減量していく方法。

初期反応は(1)群のほうが(2)群よりも良く反応がはやい。血小板が10万以上になる率も(1)のほうが50.5%に対して26.8%とよかった。長期における治療効果の持続は両者ともに同じ、副作用はこれまでみられたものと同じで大量デキサメサゾンのほうが不眠や気分の変化、プレドニンのほうでは高血糖、高血圧、不眠、ムーンフェイスなどが挙げられた。

この研究成果が妥当であると判断されれば、ステロイドの治療期間を短くしたほうが副作用も少なく患者の負担もなくなるので、初期における治療は今後プレドニンからデキサメサゾンに変わる可能性があります。

2016年

2月

12日

小野正嗣氏のドキュメンタリーから

NHKにて小野正嗣氏の<郷里>に対する思いがつづられた番組が放映されていた。小野氏は「九年前の祈り」で平成26年度第152回芥川賞を受賞。舞台は作家の故郷である大分県佐伯市の“浦”と呼ばれる小さな集落で、浦の人々から聞いた土地の逸話を小説化したもの。私は小説を読んだことはなかった。ドキュメンタリーは彼の兄と故郷を重ねあわせながら描かれていた。
彼の兄は地元の学校を卒業し、独身でまじめに働きながら弟へ仕送りをして支え応援し、まわりの誰からも「いい人だね」といわれ、静かな集落の生活を送っていた人。丘の上の墓をいつもお参りして守っていた。世の中に名前の出ることもないその人にも地元では生きる場所があり、必要となる場所があった。家族にも、村の人にとっても大切な人だった。‭そしてその兄は脳腫瘍にて長く生きることなく亡くなった。
私はその番組を通して<郷里>ということよりも、描かれていた兄を思う皆の気持ちに魅かれた。どんな人間にも幸せに生きていける場所がある。大切に思われて、派手でなくても他人に認められ生きていける居場所。それを大切にしようよと語りかけられている感じがした。

年をとったといって寂しがる患者さん、病気になってしまって迷惑ばかりかけ、何の価値もないという患者さん。どんなに年をとっても子供にとって親は大切な存在。病気をした患者さんだってその姿から励まされている人(我々も含めて)は周りにいるのです。その人の存在は目の前の人でなくても誰かの役に立ち、必要とされていることがある。そこに自分の居る価値を見出してほしいと思います。

2016年

2月

11日

2016年診療報酬改定

来年度からの診療報酬改定の骨子が発表された。国としては大きく舵取りを本気で行うつもりであろう。大病院のベッドを減らして患者を地域へ、在宅へという方針である。

まず、大病院にかかるのはこれまで以上にハードルが高くなる。紹介状なしで大病院にかかると5000円以上はプラスになる。よって、良いかかりつけ医をもつようにしていくことを推奨するというわけである。これまでも紹介状なしでは受診できない病院もあったし、また紹介率を高める誘導策が行われてきたが、それよりももっと具体的に患者負担を明確にということである。しかしこれまで定期的に受診している人、それらの人が少々の風邪、腰痛などの軽症の症状で大病院を受診することについてはどうなるか不明だ。大病院における軽症の患者さんは出来るだけ減らしたいが、その受け皿としての開業医の先生の仕事量、各科含めた色々な主訴に対する対応が診療所で十分行えるかどうか。また、患者さん自身で重症かどうか(高齢者の発熱が肺炎かただの風邪か?)判別は難しいことも多いだろう。患者さんも検査好きから脱却しなくてはならない。テレビの街頭インタビューでは、必要あればお金かかったって大病院行きますよ~と言っていた。
さて、もう一つ大きく取り上げられていた点はかかりつけ薬局をもち、薬剤や副作用、飲み合わせの管理をするということである。それは確かに良い。患者さんはたくさん薬を貯めていたりする。また本当にポリファーマシー、たくさんの薬剤を飲んでいる。まずはそこを改善するところから。
エビデンス(研究データ)が良いといっていると処方するが、こんなにたくさんの薬剤を飲んでいる状況でのエビデンスじゃないよな、とお薬手帳をみせてもらって思うことだ。薬剤は8種類以下にまずは抑える努力をしたい。薬局にはその一役を担ってほしい。ただ以前あったことだが、どうしても必要で患者さんに説明して始めた薬剤なのに、薬局側での副作用説明で患者さんが怖くなり、使用したくないと言ってきた。さて、その責任はだれがとるの?ということがあった。薬剤師さんとも院内の勉強会などの交流を通して、顔の知れる関係であるとより良いのかもしれない。

また、在宅診療も在宅だけで開業できるようになった。しかしその基準も厳しいようだ。在宅の優秀な先生がいらっしゃれば、こちらも退院の選択の幅が広がる。テレビでは経営のために長期入院させていることもあるというが、本当にそんな病院多いんだろうかと思ってしまう。逆に転院、退院させたくても移る先がなくて病院においていることのほうが10倍以上多いのが現実だ。少々難しい患者さんでも受け入れてくれる後方支援病院がない限り、急性期病院のベッド削減は入院出来ない患者を多数生むことになる。

2016年

2月

07日

サイバーショック NHKスペシャル

紫陽花の木の芽が吹きはじめています。
さて、2月7日放送のNHKスペシャル<サイバーショック>を見た方はどのくらいいらっしゃるだろう。日本全体がこのサイバー攻撃に対して賢くなる必要があると、実感させられた番組であった。
日本年金機構の情報漏えいに対し、マスコミ各社は同機構の情報管理のずさんさなどを指摘していたが、NHKの調査で同時期に同じように攻撃を受けていたのが1000社以上にも上り、すでに2万件以上の情報が流出しているという。同じことをされていた企業がたくさんあったというわけだ。それらの中には製品の開発設計図の詳細であったり、日本の軍事関連情報、JR北海道の安全業務体制などが含まれていた。さらには病院でもウイルス感染がおきていて、情報が流出していたという。
専門家はサイバー攻撃は富の移転、これまで長年蓄積してきた知の富を一瞬にして奪うものだという。
これは明らかに国際的な<泥棒>だと思う。国境なき場所での泥棒は規制がききにくいというわけで、国ぐるみで行われている可能性も指摘されている。国力増強のために国が後方支援して情報をゲットし、有力企業に流すことだって国際競争社会の中では行われることもあるだろう。かつてなら鍵をかけないで出掛けていた日本の田舎でも今ではそんな家がないのと同じように、自分たちの身のまわりで本当にサイバー攻撃が行われているのだという知識、認識を持ち、それぞれの組織、企業セキュリテイーのレベルを上げ、そこに予算を割いていくしかないのであろう。
紹介されていた被害を受けた病院では、セキュリテイーのレベルを上げるために月60万程度の費用のかかるプランの導入を検討しているということであったし、また職員が容易にメールを開かないように教育をしていくという。当院でも調査が必要かもしれないし、職員教育はとても重要であると思う。

2016年

2月

05日

CMLと妊娠

年に1回湘南地域の一般病院の先生方と、あるテーマで小さな勉強会を開いている(神奈川県南血液セミナー)。普段の診療の何気ない疑問をテーマにしてdiscussionを行う会であり、今回は慢性骨髄性白血病(CML)の薬剤(チロシンキナーゼ阻害薬TKI)を中止した症例に対する討論を行った。
今やCMLは内服にて病勢が安定し、10年以上安定した生存を望める疾患となった。現在の話題はどんな人が薬剤を中止出来るのか?という問題に移っている。治療薬を中止するメリットは、個人の経済的な問題とあわせて国の保険財政の問題にも関わる。今は中止するのであれば臨床試験に入ることとされている。しかし年金になったので薬の継続が大変になったと、経済的な問題で続けられない人も出てきている。妊娠を考えたときには臨床試験にも入りにくく、これまた難しい問題となる。今回は症例とあわせて文献的に調べて発表した。
男性患者さんの場合は何日中止しなさいというはっきりした基準はなく、報告されている症例でも新生児に問題は起きていない。女性患者さんの場合には、ある文献では薬剤中止して3か月はwash out期間で妊娠を回避すると書かれている。TKIを飲んでいて妊娠が分かったときには流産の率は高く、報告により30-50%程度にもなる。また奇形児が産まれている例も報告があるので、妊娠中はTKIは止めるべきである。中止中は1-3か月に1回細かく末梢血でBCR-ABLをモニターして、MMRというレベルになったら妊娠中であればインターフェロン、白血球フェレーシス、時にハイドレアなどを行うことが推奨されている。授乳中にも50-90%移行するので、TKIを内服しながら授乳は行わないとされる。
慢性骨髄性白血病の患者さんも病気になったときには妊娠など考えられなくても、病状が落ち着いてくればそれらを考えるようになる時期がくる。20代ー30代の患者さんも多いので、臨床家もこれから遭遇することのある問題として提示した。

2016年

2月

04日

JAL doctor登録制度?

この制度、おかしくない?と思った医師は多いのではないでしょうか。機内での「お医者様はいらっしゃいませんか?」という放送がなくなる・・・?その放送が悪いこと??日本医師会とJALが提携し、医師であるかどうかを登録するからその放送はもういらなくなるというのだが・・・。
必ずしも物品も人も揃っているとは言えない機内で1人で急変患者の対応、診断まで出来る自信のある医師ばかりでないことを、何も分かっていないと思う。そこにまで責任はないわけであり、機内で働くのは善意であろう。また救急コールにより医師以外の看護師や他の人だって集まってサポートしたほうが良いこともある。
私も一度、アメリカにいく機内でそのような場面に遭遇したことがある。食後で寝にはいりかけたところに何度もコールがあり、名乗りでた。満席で診察する場所などなく、患者さんを床に寝かせて診察。確か心電図もなく血圧計だけがあった。当然挿管道具などない。点滴も出来なかったように思う。
患者さんは食後のアルコールで一時的に気分が悪くなり嘔吐・徐脈になっただけであったが、これがもっと深刻な方で飛行機の行先変更するか判断しろと言われたら、困っていたと思う。そのとき他の日本人のかたが機長とやりとりしてくれて、私は患者さんの診察をすればよく助かった覚えがある。
ただ、今は80歳代でも海外旅行にいく時代である。機内は閉ざされた空間であり、体調を十分見極める必要のある乗り物であることを忘れてはならない。

2016年

2月

01日

インフルエンザの流行

インフルエンザの流行が叫ばれている。鎌倉の学校でも学級閉鎖、学年閉鎖がおきている。各入学試験も続くことから、学生だけでなく家族みんなが気を使わねばならず、大変な時期である。
さて、そういう私もちゃんとワクチンを打っていたが、電車に乗ることが多かったり、また風邪の人を診ることも多かったのでインフルエンザに罹患してしまった。先週の成田富里の外来では39度近く熱が出ていてインフルエンザの迅速検査をしても出ないかたが50%以上であったため(発症からの時間の問題もあるのだが)、他のウイルスによる風邪も流行っていると思っていたし、自覚症状では前日に咳がひどかったのでインフルとは症状が違うと思っていた。翌朝起きるのも大変であったが、何とか病院へ。同僚の内科の先生に「インフルちゃんとチェックしてくださいよ!」と言われ渋々受けたところ、なんとインフルエンザA陽性。自分の診断も出来ないのか~と情けなくなった。インフルエンザ迅速検査の綿棒が鼻腔に突き刺さるのも辛くて、思わず手が出てしまった。イナビルの処方をうけ帰宅。初めてイナビルを吸ったが、タミフルとどちらが効くんだろう。体温計を購入し、水を買い込んで帰宅。その後から熱が出てきて39度まで上がり、約2日熱は続いた。ワクチンって症状軽くしてくれるんじゃなかったの~?と素人のような愚痴をいいながら寝ていた。頭痛も強かった。
まぁこういう時に患者さんの気持ちが分かるわけで、医師も時に病気をしなくてはならない。血液の患者さんはしばしば化学療法中に熱が出るのだが、こんな高熱じゃ味もよく分からないし食べられるわけがない。食いしん坊の私ですら食に対する興味が失せた。冷たい水が一番おいしかった。頭も冷やすのも苦痛をとるうえでは大切。我慢してねといつも患者さんに言っているが、でも症状緩和はしてほしいよな~と感じた1週間でした。
外来などの業務を代わっていただいた先生方、ありがとうございました。

2016年

1月

31日

2つの病院で働くということの弊害

湘南鎌倉総合病院のある地域は植木、玉縄という地域だが、そこで品種改良された玉縄桜は早咲きの桜であることが知られている。一部の木ではすでに花が開いている。
さて、ようやく1か月間の成田での生活が過ぎた。日によって自分の気持ちがコロコロと変わるが、今週は涙が出てくるほど辛く、小さなことにもイライラしてしまう自分がいる。何が辛いか・・・。
まずその1.単身赴任のような2重生活は体が疲れを覚える。こちらの生活に慣れたと思うと、また違うところでの生活。掃除はあまりするほうではないが、こまめに汚れを拭き取ったりということがないので、1週間経つと汚れが目立つ。また、その週掃除をしないと2週後になるからさらにほこりが目立つ。成田の家は病院で用意してもらっているが、ベッドが違うと夜中に目が覚めることが多かったり、道路の音が気になって目が覚める。”家”という生活が、体を休めるうえでとても大切なのだということが分かる。
 2つ目は成田で行う仕事とこちらで行う仕事の違いだ。成田では初診で来院された一般内科の患者さんを次から次へと診ていく。他の専門内科の先生はいないから、解らなくてもすぐに頼ることも出来ない。また来院患者も増えているため、自分一人がこなさなくてはならない。これも頑張ってはいるが、だんだん辛くなってきた。鎌倉に戻れば血液内科の治療をしなくてはならない人を1.5日の間に集中して診なければならない。患者さんの見方も違うから、頭の切り替えが必要だ。患者さんの中には症状があっても予約日まで我慢している人がいて、悪くなって来院する。この対処にも時間がかかり、また他の先生に入院をお願いしなくてはならない。鎌倉の外来も毎回50人を超え、ヘトヘトである。さらにここに入院患者さんのトラブル、重症患者さんの面談、病院全体の医療安全問題にハラスメント問題。発狂寸前である。

この1か月で思ったことは、どっしり病院にいなくてはならない人はいなくてはならない。またがんのまだ治療をしている人の主治医は患者に何がおきるかわからないから病院にいなくてはならないのだ。患者が安心していつでも相談できる、安心して治療をする場を提供する。それこそ大切なことであろう。中途半端な仕事はすべきでないと今つくづく感じている。それがとてもつらい。

2016年

1月

30日

2人の後期研修終了

12月、1月と血液内科で働いてくれた研修医の二人が今月で研修を終える。1年目の田澤先生と5年目の冨山先生だ。
当科が他院への応援をするため12月から変則的なチーム編成となり、かつ1月には患者数も増え大変な中を我々スタッフの手となり良く働いてくれました。
本来であれば私がもう少し教育に関わらなくてはならなかったのですが、それが叶いませんでした。
代わりに神戸先生、佐藤淑先生、玉井先生がそれを担ってくれたと思います。
お疲れさまでした。

2016年

1月

29日

Kanagawa MPN forum 2016 in 横浜

1月29日横浜でKANAGAWA MPN Forum2016がシャイアー・ジャパン㈱主催で開催されました。神奈川県の各大学教授が来場予定とのこと、また演題をだしてほしいという依頼があり、当院での本態性血小板増多症の症例をまとめて発表しました。
53例の症例のまとめとなり、平均年齢は世の中の一般統計などより高齢である70代となりました。しかし50代以下の若い症例も8例あり、それらのフォローがきちんとされているのが4例でした。患者さんは健診異常などのデータの異常で来ることが多く、症状をもたないことが多いのですが、血小板数が100万/μLとなると血栓症や胸部症状をもつ例が増えました。また、血小板数が150万/μL以上となると逆に出血が多くなるといわれていますが、当院の症例は150万/μL以上でも出血症例はなく、無症状の人もいました。
経過中血栓症を起こしている人は、ほとんどがバイアスピリンが入っていても血小板数は60-70万/μL程度でした。JAK2変異の測定は全体の34%でなされていましたが、うち半分がJAK2陽性でした。
また、今回は発表にあたり骨髄生検を自分でみてみました(血液内科医は骨髄穿刺のスライドはみても生検のスライドをみることは少ない)。生検の検体は、1cm以下であったり挫滅が強いとなかなか評価が出来ないことがよく分かりました。病理の先生に正しく評価してもらうためにも、1cm以上でしっかりした検体が必要です。またJAK2陽性かどうかをスライドで判断するのは見慣れていない者には分かりにくいのですが、全体的に過形成が強いことは分かります。以上の内容を発表しました。
 また北里大学病院と横浜市大からはアグリリンの使用症例をまとめて発表、特別講演は順天堂大学の小松教授が骨髄増殖性疾患のレビューをして下さいました。

2016年

1月

27日

ヒトパルボB19感染症と貧血

子供の頬が赤くなるリンゴ病として知られる伝染性紅斑が昨年から流行していて、過去10年で最大の患者数であるという。通常は夏に感染が多いが、冬である現在も患者数が多い状態が続いているらしい。
成人だと紅斑はりんごというより頬紅を差したくらいの症状しか出ないことが少なくなく、非典型的な皮疹を呈する。また、歩行が困難になるほどの関節痛を訴えたりする。この感染症はヒトパルボB19というウイルスでおきる。
伝染様式は飛沫(ひまつ)・接触感染で、患者の咳やくしゃみなどを介して感染する。潜伏期間は5-10日。感染早期にウイルス量が多いとされる。また、妊婦が感染すると胎児の組織などに水分がたまる「胎児水腫」や流産の恐れがあるため、ニュースでは妊婦への注意を呼びかけていた。

さて、血液内科医はこのウイルスに対して敏感だ。というのも、このウイルスは前赤芽球といった若い赤血球に感染して増殖する。その若い赤血球がやられてしまうために溶血性貧血、鎌状赤血球症という病気などで元々赤血球が壊れやすく普段から多く作らなくてはならない人は影響を受けやすい。突然重度な貧血に陥ることがあり輸血を要し、入院が必要となることもある。鉄欠乏性貧血の治療中の人もなりえる。これをapalastic crisisという。
通常は赤血球がやられるのだが、白血球も血小板も低下することもある。
ウイルスが排除されれば1-2週間で造血は回復する(末梢血で回復するまでにはもう少し時間がかかる)。しかし免疫力が低下した人がこの感染症にかかると抗体産生が十分でなく慢性的な持続感染を続けることがあり、貧血が長い間続くこともある。
このウイルスが流行っているというので、自分の溶血性貧血の患者さんが罹らないといいな~と思っている。

その他の症状としては、免疫のしっかりした人では25%は無症状、50%はインフルエンザのような症状で筋肉痛、関節痛、発熱がみられる。残りの25%に関節症状と皮疹がみられる。このウイルスでは関節症状が特徴的である。急性発症で左右対照に手の小関節、手首、膝、足に症状がおきる。女性に多く、こわばりがよくみられる。3週間位で良くなることが多い。

急性パルボB19感染症の診断はIgM抗体によりなされるが、抗核抗体、リウマチ因子、EBウイルスIgMが上昇していると偽陽性になることがあるという。成人のパルボB19は見過ごされていることが多いのではないか、と言われている。(UP TO DATEより)

2016年

1月

26日

術後の血小板増多症

脾臓の手術後に血小板数が100万/μLを超えて、コンサルトを受けたことがある。骨髄の病気じゃないですか?というわけである。
血小板はほとんどの人が45万/μL以下に収まっていて、45万/μLを超えてくるとこれは異常か?ということになる。しかし50万/μLくらいまでだと、鉄欠乏性貧血の人や感染症から戻った人などでは、しばしばみられる。脾臓には約1/3の血小板がプールされているので、それが手術でなくなれば一過性には血液中に血小板数が多くなるのは当然である。しかし100万/μLにもなる??経験的には100万/μLともなれば、我らが骨髄疾患だ~と思っていたが、そうでもないらしい。文献的なところでみていると、100万/μLを越しても反応性である率は70%くらいもあるとのこと。その内訳では感染症、脾臓摘出後、悪性疾患、外傷、炎症性疾患などが続くようだ。反応性の場合には症状が少ないことも多く治療は不要のこともあるが、血栓症をきたしたり、100万/μLを超えてくると出血しやすくなるため、血小板のコントロールが必要になることもある。

2016年

1月

24日

1月18日の週間医学界新聞から 

暖冬のお正月はどこへいってしまったのやら、日本の各地大雪。センター試験の時じゃなくてよかったね~。誰も雪で犠牲になってほしくないな、とおもいながらニュースを見ています。アメリカでもこの週末は大雪で、政府機関の業務が停まってしまうほど。大混乱です。

さて「週間医学界新聞」はおもしろい特集、エッセーがあり、よく目を通しています。インターネットでも医学書院のホームページから読むことが出来ます。
さて、ここによく寄稿されている神戸大学大学院感染症部門の教授岩田健太郎氏。1月18日号のエッセーは、「よく言ってくれた!!」と拍手を送りたい、いい記事であったのでここに紹介します。
話は<イギリスの感染症専門医養成カリキュラムコースについて>です。岩田氏は米国で感染症のトレーニングを受けられていますが、友人のイギリス人医師に聞いてみるとイギリスの感染症専門医カリキュラムはすごい!物知りの岩田氏も初めて知ったとのこと。
その教育カリキュラムというのは単なる感染症の専門的な知識としての教育のみならず、一般的な医師教育として診療態度、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、多職種連携チームという項目がカリキュラムに並び、さらにさらに診療は4つのドメインに大別されています。
(1)知識、技術、パフォーマンス
(2)医療の安全と質
(3)コミュニケーション・パートナーシップ・チームワーク  
そして
(4)信頼を得続けること。
大きな項目の中で技術はたった1つを占めるだけで、それ以外に医師として大切な何かをどう学ばせるか、どのように医師というプロフェッショナルを育てていくかがハッキリ分かると。さらに学習項目として慢性疾患の対応、終末期医療への配慮、生涯学習、患者の安全、タイムマネジメント、エビデンスやガイドラインの使いかたから、ヘルスプロモーションや公衆衛生などのアイテムが上げられています。つまり、彼らがどのような医師を育てたいかがカリキュラムからみてとれ、明白であると岩田氏は指摘しています。(4)の信頼を得続けることというのが良いですね。

それに比べて、日本の新しく作られる専門医制度に関してはそのような育てたい医師像が全くみえず、ただ習うべき項目の羅列がカリキュラムにあるのみであると。医師としての人間教育、チーム医療やリーダーとしての教育が考えられていない。よくぞ言ってくれた!という感じ。
さらにもう一つのよくぞ言ってくれた!は、数年のトレーニングでは臨床は出来るようにならない。「診療ごっこ」と「診療」は違うのだということ。診療というのは患者さんのその場をみるだけではなく、その人の生活周辺、長期的な経過も含めて調整を行うことであり、その人の人生にも責任を持つことである。かつ自分だけではなくチームで良いサービスを提供出来るように調整すること。それも含めたことが、大きな意味での臨床医の仕事である。エビデンス、データだけ、臨床の情報だけで患者は治せないと思います。

2016年

1月

20日

がんの部位別10年生存率

国立がんセンターの研究班は、がんの部位別10年生存率を集計して発表した。5年生存率はいつも予後の話をするのに使われるし、5年経つとそろそろ外来も終わりで・・・と言っていることも多い。今回のように10年生存率を出すことで、5年過ぎても生存曲線のカーブが下がる人(つまり再発したりして死亡する人がでること)がいるのかどうかがわかる。
最も予後の良いのは甲状腺がんで90.9%、胃がんは69%、肺も33.2%。肺がんなどはそんなに良いのかと思ってしまった。肝臓がんは10年生存率15.3%と低く、慢性肝炎に合併することも多いためか5年以降も生存率が低下する代表的ながんである。膵臓がんはさらに低く、4.3%であった。
これらのデータはあくまでも1999年から2002年に診療した3万5000人のデータであることから、この10年で分子生物学的な治療がかなり進歩したから、実際にはもっと良いはずだ。

つまり、我々医師はこれだけ多くのがんサバイバー(がんを生き抜いた人)を診ていくことになるわけで、再発の管理だけでなく長期的な抗がん剤の副作用や2次発がん、複数のがんの場合に治療をどうするかなどを管理していくことが求められてくるわけである。私などは例外であるが、多くの病院の医師はしばしば大学などの人事で長期間同じ病院にいない。そうすると長期的なケアは誰がしたらいいのだろう。やはりかかりつけ医にその仕事が求められるようになるのだろうか。
また今回のこのデータをもとに国、厚労省はどのように施策に反映させてくるのか、注目したい。

2016年

1月

19日

アルコールを飲む人の血液異常

アルコールを大量に飲む人は肝臓が悪くなる。肝臓が悪くなると血小板が下がる。静脈瘤ができて出血すれば貧血になる。肝臓が悪いと凝固因子がうまく作れず、また出血しやすい・・・等々、色々血液異常が起きるわけだが、一体どれだけ飲んだらそのようになるか?
あまり詳細な論文はない。ただ、慢性的なアルコール飲酒という量は1日80g。ウイスキーとかなら250ml、ワインならボトル1本750ml、ビールなら1.5L。そこまで多くないと慢性飲酒と言わないのだ・・・。いくら好きな人でも周りに連日これほど飲む医療関係者はいない。

さて、アルコール多飲者では赤血球が大きくなる現象はよく知られている。また肝臓が悪くなると脾臓が大きくなってきて、ここに血小板や赤血球がたまって破壊されることもあり、血小板数低下や貧血になる。アルコール多飲者は栄養障害がつきもので、葉酸欠乏では一番多いとされる。そうするとそれがまた貧血の原因になる。また食道静脈瘤、胃静脈瘤からの出血、アルコール性胃炎というのもあり、じわじわ出血することもある。肝臓が悪いと免疫不全でもあるから感染症にかかりやすく、そのために貧血というのもある。とにかく多くの原因が挙げられる。また、アルコール自身が血小板の親である巨核球に直接的に影響を与えることも知られている。

2016年

1月

19日

血小板増多症と妊娠

関東にも雪がふりました。
さて、特発性血小板増多症という血液疾患があります。骨髄増殖性疾患の一つで、健診でのデータ異常で指摘されたりすることも多い疾患ですが、頭痛や手先の色が悪くなる、または出血や血栓症を起こして診断されることもあります。予後は良い疾患ですが、平均年齢が60歳程度とされる中で40歳以下も20%程度いるとされます。そのような年齢のかたが出産を考えるとするとリスクはどうなのか?と家族のかたより質問を受けたことがあります。
実は血小板が多いと血栓症は出来やすくなるわけで、妊娠した血小板増多症の人の43%に流産があったという報告があります。特に妊娠初期にそれは起こりやすいとされます。前もってバイアスピリンを飲んでいたり、ヘパリンをすると流産の頻度が減るという報告もあるようです。
若い女性患者さんの場合には、担当医は計画的な出産を行う必要があります。また妊娠の経過中に血小板は下がる傾向になるということ。これもおもしろいことですが、理由は不明です。

2016年

1月

13日

こどもの貧困、虐待の話題

子供が顔面にやけどを負い死亡したニュースが流れ、虐待が日常的に行われていたであろうと報道されていた。通報していたのに・・・というまた同じことの繰り返し。
当院にも、特に救急や小児科の現場におやっ?と思うケースがある。おかしな傷、あざ、異様に怖がる顔つき、病気なのに病院に連れていってもらっていないなどなど。院内にも今年度<虐待疑いの症例を検討する委員会>(実は正式名は別にある)が発足し、問題症例につき検討して必要あれば児童相談所に通報したりする。これは決して子供だけでなく、介護されていたり痴呆がある高齢者が受ける虐待も対象となる。

このようなことのおきる背景には複雑な家族関係の他に貧困がある。
今、こどもの貧困は日本でも16.3%に上るという。まともな食事がとれていない家族もいる。市民の取り組みとして<子供食堂>というのが各地で始まっていると、ニュースで紹介されていた。母子家庭など忙しくて親も食事が作れない、そういう親子を迎えて食事をとってもらうというサービス。温かく迎えてくれる人たちがいるだけで、安心というものが得られるであろう。その運営には課題も多いそうであるが、厚労省はこのような取り組みに対して一部補助金をだし、支援していくことを表明している。
ミラノ万博で有名シェフたちが余った食材で貧しい子供たちに無料で食事を提供していた話題をブログにも書いたが、日本でも同様の取り組みがすでに市民中心に始まっている。さらにそれをもっと広げたい、始めたいと思っている人達がたくさんいることは、最近悲しいニュースが多い中で心温まる嬉しい話題だった。

2016年

1月

12日

セルロースナノファイバーは未来の紙、医療にも応用

セルロースナノファイバー:初めて聞かれたかたも多いでしょう。私も恥ずかしながら初めて知りました。
この日、NHKクローズアップ現代で紹介されていた未来の紙、セルロースナノファイバー。ナノテクノロジーとして技術開発、製品化に世界がしのぎを削っている注目の素材です。もとは植物の細胞壁を構成するセルロース。それをより細く、細かくしてナノサイズにまですると互いに結合しやすくなり、軽いのに鋼鉄より強いという性質をもつそうです。さらに熱に強く、原材料は自然界に豊富にあり使用後も環境に戻せるという特徴を持っています。
色々なものへの応用がすでに始まっており、薄いシート型のタブレット端末が出来たりマラソン選手向けの軽い靴、車体の一部に使用することで軽量化し燃費を抑えた自動車、またおむつなどに使えば匂いをファイバーが吸収し、消臭おむつができるという。身体への親和性がいいので人工血管や軟骨へ応用、医療器材への応用など、とにかく幅広い素材に変化できる可能性を秘めているようです。
医療現場からは他にどんな応用が出来るでしょうか。現場の声がいきる可能性があります。皆で考えてみましょう。今からなら実現するかもしれません。

2016年

1月

11日

京大で白血病治療にiPSを用いる研究が始まります。

白血病患者から採血し、そこからキラーT細胞を採ってきてiPS化し(若返らせる)、そこから再度キラーT細胞に変化させて白血病を殺すことが出来るかどうか。動物実験、その後は効果が期待出来れば臨床試験に入っていくのだという。
キラーT細胞はそのまま増やすのは難しいが、iPS化すれば大量に増やせること。またiPS化しても攻撃する蛋白を覚えていて、その性質はそのまま残せるらしい。上手くいけば急性白血病の治療のブレイクスルーになるだろうか。
急性白血病の治療はその他の血液がんと比べてこのところ治療の進歩、薬剤の進歩が遅れている。高齢者にも多いが、今の抗がん剤メニューでは結局毒性が強すぎるため、治療の強度を弱めなくてはいけないことも多い。早ければ2019年にも臨床試験が始まるという。結果を見守りたいと思う。

 

2016年

1月

11日

カリニ肺炎の治療ST合剤は減らせるかも?

ニューモシスチス・カリニ肺炎(PCP)は、ステロイドを長期に投与されたり免疫が低下している患者さん、さらに高齢者の悪性リンパ腫ではしばしば問題となる合併症である。
肺炎になってしまったときに治療に使用される薬剤は通常trimethoprim-sulfamethoxazole(2種類を合わせた製剤 ST合剤:商品名バクトラミン)で、これを高容量(予防投与では1日1T少量内服したりするが)、1日trimethoprim換算で15-20㎎/kgを2-3週間使用する。
腎機能障害、低Na血症、高K血症、肝障害など副作用も多く、投与の際我々は常に注意を払わなくてはならない。そこで、オランダの研究者たちは少し減量してみて効果が同じかどうか調べる研究を行った。Infection 2015 Oct 15; [e-pub]<次へ>

続きを読む

2016年

1月

10日

趣味の多い人々

今年いただいた年賀状をゆっくり読んでみた。
昨年出会った、病院とは違う人々の活動量のなんと豊富なこと!高齢なのに山登りされたり哲学の本を読まれたり、歌舞伎にはまっていたり。料理教室、畑づくり、子供に絵を教えるなどなど。書道をもう30年も続けていて、立派な書を書いていただいた方。
私はもともと他人とつるむということが得意ではないこともあり人間関係の幅が狭いほうだが、それに輪をかけて仕事だけの世界で生きてきて何と人間関係が狭かったことか。人間的に魅力的な方々はたくさん世の中にいる。仕事を本当に頑張ってきたことを恥じる必要はないと思うが、これから自分がどう年をとっていきたいか、考え始めるのに早すぎることはない。そのモデルになるような方々がたくさんいるのだ。観察していてイキイキしていて、話をしてもとても楽しい。大切にしたい友達である。

2016年

1月

09日

成田富里徳洲会病院応援に行っています

2015年9月に、成田市の駅前から10分のところに成田富里徳洲会病院がオープンしました。非常にきれいで大きく良い病院なのですが、スタッフが不足しているため当院から各科順番で応援に行っています。今年1月から4月までは当科が応援に行くことになり、まずは私が1月2月と週4日、外来中心の応援です。電車で片道たっぷり2時間かかるため、成田に週半分住むこととしました。もともと鎌倉に通院されている患者さんには年末からお願いし、外来調整させていただきました。ご迷惑をおかけします。
さて、成田市は今発展中の都市のようです。大きなイオンが出来ましたし、医学部が設立されることも決まっています。また成田空港から一駅で駅前にはホテルも多く、外国人も多くみかけます。
働いてみて思ったのは、成田空港から近いことがあり空港のクリニックからよく連絡がはいり、入院や診察の依頼があることです。外国人のかたもいれば日本人で帰国直後のかた、また海外在住の日本人のかたで出発前の体調不良などなど。また今後パンデミックの感染症などがおきれば最前線の基地となるでしょうし、海外で災害がおきればそこにいく先発隊の拠点としても重要な位置にある病院であり、ポテンシャルがとても大きい病院だと感じました。まだまだ医師を含めたスタッフの不足でフル稼働していませんが、近隣にお住いの方々の期待も高い病院です。
ただ、こちらとの生活の切り替えは大変です。成田から戻ってきた日に鎌倉での外来をまとめてやることもあり、どっと疲れます。患者さんが我慢して症状が悪くなってしまっていることもあり、医師が掛け持ちで仕事をするのはやはり良くないと感じます。医療安全などその他の抱えていた仕事はほとんど出来ずじまい。
自分が今後どのように働くのか考える機会でもあるかもしれないと、現状やれるだけのことをやっていこうと思っています。

2016年

1月

08日

大きな器をもつことは幸せの一つの要因です。

左の花は蝋梅です。蝋細工のような光沢のある花びらをもち、水仙くらいしか花がないこの1月であるが、あまり目立たずに木々にたくさんの黄色い花を咲かせる。でもその清々しい香りは、鼻の良い私なら5mくらい先でもすぐその存在に気付きます。

さて、組織で一番大変な悩みの種は人間関係。組織が小さくても少ない人数だからこそ不安定になると職場の空気に直結し、自浄作用が難しいこともあるでしょう。よく開業した先生が何が大変かってスタッフのやりくりと人間関係、と言っていたのを思い出します。
当院のように拡大を続けていてどんどん大きくなる組織では、当院育ちのスタッフだけではなく大学病院や理念の違う病院で初期研修をうけ育ってきた人が雑多混合しています。それが組織の強みにもなると思います。しかし違いもでてくる。医療はやり方が一つではないので他人のやり方を尊重するという気持ちが必要だと常々意識するようにしていますし、若い先生にも伝えるようにしています。違うやり方でも間違っていなければ認めていく。そういう姿勢が組織がうまくいく秘訣でしょうし、皆が幸せになっていけるための大切な要因であると思います。上級医はたとえ相手が若くても、また若いその他のメデイカルスタッフにも、その仕事を尊重する姿勢を持つことが必要です。

2016年

1月

07日

抗生剤による好酸球増多症

左に見える細胞(赤っぽい顆粒をもったもの)は、好酸球と呼ばれる白血球の一種である。アレルギーの時に増加するが、骨髄増殖性疾患、悪性リンパ腫などでも増加する。
アレルギーは花粉症やぜんそく、アトピー性皮膚炎の他に、薬剤も多い原因の一つである。意外に多いのが抗生剤による好酸球増多症。我々のよく使用する薬剤も関係しています。

アメリカのボストン地域で退院後2週間以上の自宅での抗生剤点滴が必要だった824人を追跡し、過敏反応や好酸球を調べた論文がありあす。そうしたところ25%の人が好酸球増多(好酸球が>500/μL)を示し、30%の人が過敏反応(発疹、腎機能障害、肝障害)を示していたそうです。
ペニシリンやリネゾリド、バンコマイシンが好酸球増多のリスクとして多く、とくに好酸球増多と腎障害を示しているのはバンコマイシンとの関連が多いとの結果でした。
以上から長期間抗生剤投与を必要とする人の中にかなりの率で好酸球増多がおき、また臓器障害も見られるということ。特にバンコマイシンに注意しなくてはならず、そういう目で採血結果を追い、必要あれば早めに抗生剤を変更することが必要であるということです。我々もしばしば入院中の発熱患者さんにバンコマイシンを使用しますが、注意を向けてみたいと思います。                 J Allergy Clin Immunol 2015 Nov136:1288.より

 

2016年

1月

06日

小児がんサバイバーの心疾患は?

各地で異常な暖かさがみられており、水仙がすでに満開になっていたり、梅が咲き始めたりしているという。梅祭りも時期が合わないなんてことがおきそうである。

さてがんサバイバーという言葉をご存知だろうか。我々は小児がんを生き延びた人(がんサバイバー)が、そうでない人に比べてその他のがんの発生率や心臓疾患など長期的にどうなのかということを、内科医が診ていく必要があるという述べてきた。
我々の使用する薬剤には心毒性が多いものがある。放射線を乳がんやリンパ腫でも胸に照射する。それらは心臓の筋肉や血管に対して悪いことをするはず。ということでその発生率をみた報告がある。<次へ続く>

続きを読む

2016年

1月

05日

加工肉と大腸がんの関連は?

WHOが加工肉の摂取が大腸がんのリスクを上げると発表してから、当院の先生でも朝のソーセージの量が減らされた・・・と言っているのを聞きました。やはり肉はがん全体にいけないのでしょうかね~、と患者さんにいわれ、調べてみました。

日本のデータでは国立がん研究センターの多目的コホート研究があります。全国10保健所管内の45-74歳の健康な人約8万人を1995年頃から2006年まで追跡。肉の総量、加工肉の摂取量と大腸がんの関係を調べたものです(大きな研究です)。追跡中1145例の大腸がん(結腸癌+直腸がん)が見つかりました。そこで解ったことは肉量の摂取が多いグループ(週に400-450g以上)では男性の結腸がんのリスクが高くなり、特に赤肉の摂取量が多いグループで女性の結腸がんのリスクが高くなりました。また男女ともに加工肉の大腸がんのリスク上昇はみられなかったそうです。<次へ続く>

続きを読む