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多発性骨髄腫 診断 治療のためのプロトコール  2012年1月

1. 診断のための初期work-up

採血

CBC 目視
LDH
TP.ALB
Ca
BUN、Cre
CRP
β2ミクログロブリン
IgG,IgA,IgM、IgD 蛋白分画 、タンパク免疫電気泳動、

尿

尿定性
蓄尿における1日蛋白量、蛋白分画、蛋白電気泳動
蛋白電気泳動よりも免疫固定法やL-chainのほうが感度がよいとされます。特に遊離軽鎖はFREELITEとして保険採用され(2011年9月)、M蛋白が少量の場合で診断がつきにくい時やALアミロイドーシスの診断、治療終了後のモニタリングに有用であるとされています。

2. 骨髄検査

骨の皮質が非常に柔らかいことがあり腸骨から行う。慣れた医師が行うことが望ましい。また骨髄液がひけにくいことがあり生検もあわせて行う。
検査にはスメアのほかに、フローサイトメトリー、染色体検査にも提出する。
染色体検査で予後の悪いものとして13番染色体欠失、t(4;14),t(14;16) が知られておりFISH法で提出しておくとよい。

3. 全身の骨検査

全身のレントゲン検査を行う
頭部正側
胸部正側 肋骨病的骨折、胸腔内肺外の病変の評価
胸椎、腰椎正側 骨盤正面
上腕骨、大腿骨 左右の正側

PET/CTやMRIのほうが感度が高いといわれるが一般的ではないが疼痛がある部分においては骨病変をはやく認知するためにMRIを検討する。
骨シンチは病変部でも陰性にでることが多く骨髄腫の骨病変評価には有用な検査ではない。

4. アミロイドーシスの検査

多発性骨髄腫には19%程度 ALアミロイドーシスを合併しているとされる。消化管症状がある症例や尿中蛋白が増加している症例ではアミロイドーシスを疑い消化管内視鏡による粘膜生検(胃、十二指腸)検査や皮下組織生検を行う。依頼するときにはアミロイドーシス疑いと記入しcongo-red染色をしてもらう。

5. IMWG (International Myeloma Working Group)の診断基準

(1) MGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)

血清M蛋白<3g/dL
骨髄におけるクローナルな形質細胞の比率 < 10%
ほかのB細胞増殖性疾患が否定されること
臓器障害がないこと

(2) asymptomatic myeloma(smolding multiple myeloma) 無症候性骨髄腫

血清M蛋白3g/dL以上 and/or
骨髄におけるクローナルな形質細胞の比率10%以上
臓器障害がないこと

(3) multiple myeloma (symptomatic) 多発性骨髄腫 症候性

血清and/or尿中にM蛋白がある
骨髄におけるクローナルな形質細胞の増加(10%以上)、あるいは形質細胞腫
臓器障害の存在

(4) nonsecretary myeloma非分泌型骨髄腫

血清and/or尿中にM蛋白を検出しない
骨髄におけるクローナルな形質細胞の増加(10%以上)、あるいは形質細胞腫
臓器障害の存在

(5) solitary plasmacytoma of bone 骨の弧発性形質細胞腫

血清and/or尿中にM蛋白を検出しない (少量検出することがある)
クローナルな形質細胞の増加によるただ1か所の骨破壊
正常骨髄、
病変部以外は正常な全身骨所見
臓器障害がないこと

(6) extramedulalry plasmacytoma 髄外性形質細胞腫

血清and/or尿中にM蛋白を検出しない (少量検出することがある)
クローナルな形質細胞による髄外腫瘤
正常骨髄、
正常な全身骨所見
臓器障害がないこと

(7) multiple solitary plasmacytoma of bone 多発性形質細胞腫

血清and/or尿中にM蛋白を検出しない (少量検出することがある)
1か所以上のクローナルな形質細胞の増加による骨破壊、髄外腫瘤
正常骨髄、
病変部以外は正常な全身骨所見
臓器障害がないこと

(8) plasma cell leukemia

末梢血中形質細胞 > 2000mm3
白血球分画中形質細胞比率20%以上

6. ステージング 2種類が用いられており診断時には両方で評価しておく。

(1)Durie and Salmonの病期分類

病気I  以下のすべてを満たすもの
Hb>10g/dL Caが正常、骨X線が正常または孤立性形質細胞腫
M成分は少量(IgG<5g/dL, IgA<3g/dL, BJP<4g/日)
病期II  病期IでもIIIでもないもの
病期III  以下の1つ以上が認められるもの
Hb<8.5g/dL Ca>12mg/dL  進行した骨病変
M成分は大量(IgG>7g/dL, IgA>5g/dL, BJP>12g/日)

(2) ISS分類

stageI  β2MG<3.5 and アルブミン<3.5
stageII  β2MG<3.5 and アルブミン<3.5 or β2MG3.5~5.5
stage III  β2MG>5.5

7. 治療

M蛋白があったらすべて治療対象ではない。
症候性多発性骨髄腫(病期2期以上)が治療の対象である。
治療を選択する際にはまず大きくわけて末梢血幹細胞移植(PBSCT)が対象となるかどうかを見極める。
PBSCT対象者は65歳以下で重篤な心肺機能障害や腎不全がない患者が対象となる。そのような患者は一度血液内科医、移植医に初期治療、移植のタイミングについて相談したほうがよい。
また治療レジュメの選択は日本では初回治療に保険適応のない薬剤もあることから、海外のガイドラインと同様の治療は行えないことに留意する必要がある。

(1) PBSCTが対象となる患者

まず導入療法を行うが、そのレジュメとしては日本の保険診療にもとづいた選択をするとhigh dose DEX(大量デキサメサゾン) かBD療法(ボルテゾミブ、デキサメサゾン)となる。これらの治療を3コース程度おこなってPBSCTの病院に転院する。かつてよく行われていたVAD療法は海外ではほとんど使用されなくなり日本でも今後使用されなくなるであろう。MP療法は幹細胞採取が十分できなくなるためPBSCTを予定するものには使用しない。

(2) PBSCTの対象とならない患者

高齢者が多い多発性骨髄腫ではこちらの患者が圧倒的に多い

  1. 初期治療の選択肢としてエビデンスとしては
    • MP療法
    • High dose DEX(大量デキサメサゾン)
    • BD療法(ボルテゾミブ+デキサメサゾン)
    • VAD療法(ビンクリスチン、アドリアマイシン、デキサメサゾン)
    • Ld療法(レナリドマイド+少量デキサメサゾン)
    • TD(サリドマイド+デキサメサゾン)
    • MPT(MP療法+サリドマイド)
    • MPB(MP療法+ベルケイド)
    などがある。
    ■日本で2012年1月現在 多発性骨髄腫の初期治療として保険適応のあるプロトコールはMP療法、High dose DEX(大量デキサメサゾン)BD療法(ボルテゾミブ+デキサメサゾン)である。VAD療法をおこなってもよいが、最近使用されてなくなってきている。
    これらをグロブリンがプラトーに達するまで使用するが2-3コースやって効果がないと判断された場合には別の治療に変更する。その際にはレナリドマイド、サリドマイドを含む治療が選択できる。
  2. 維持療法について
    現在その後の維持療法をどの薬剤で使用するか臨床研究が盛んである。
    レナリドマイドの維持療法については主に2つの臨床試験で、自家移植後の維持療法としてプラセボと比較したところ無病生存率(4yPFS 61% vs 34%)、平均増悪期間(43.6mo vs 21,5mo)においてレナリドマイドの有効性が認められた。 サリドマイドの維持療法については主に5つの臨床試験が行われておりいずれでも無病生存率に有効性が認められる。試験ではサリドマイドは50-400㎎が使用されていたが有害事象として末梢神経障害の副作用が強く治療中断も多くみられた(33-39%)。
    ボルテゾミブの維持療法については主に3つの臨床試験が行われており、いずれでも無病生存率に有効性がみられた。

    以上より副作用をみながら新規薬剤の維持療法を行うことは患者の予後を改善するといえる。レナリドマイドであれば10mg/日、サリドマイドであれば50mg/日
    ベルケイドであれば1-1.3㎎/m2を週1回程度を行う。

(3) 各種レジュメの副作用など

  • High dose DEX(大量デキサメサゾン):血糖値が高い患者ではその管理が問題となる。
  • MP療法:1960年代からあるレジュメで高齢者には忍容性があるが、移植予定患者には使用できない。また1-2年で効果がなくなってくることが知られている。血球減少が強い場合にはMDSを合併してくることもあるので注意。
  • BD療法(ベルケイド+デキサメサゾン) 腎障害があっても減量せずに使用できる。血球減少が問題になる。また特徴的な副作用としては神経障害により重度な場合は歩行障害がでることがある。早めに減量、中止をしないと不可逆的になることがある。
  • Ld療法(レナリドマイド+少量デキサメサゾン)レナリドマイドはサリドマイドの誘導体であるが、使用するには患者教育と届け出が必要である。内服でできる点はよいが高額である。腎障害があるときには減量が必要である。また移植を考慮する場合は3回程度までとしないと幹細胞採取がおこなうにくくなる。その他の副作用として血球減少、血栓症などが問題となる。
    血栓症予防にはアスピリンでも効果があるとされているため血小板数を考慮しながら投与をする。また長期臥床や血栓症の既往があるなどの血栓症のリスクが高い場合はワーファリンの投与を検討する。
    ★レナリドマイドの2次発がんについて:レナリドマイドには2次発がんが多いのではないかという報告が米国FDAより出された。MM015試験ではMPR+R維持、MPR+P維持、MP+P維持 (R:レナリドマイド P:PSL)の3群で比較が行われたがその後のフォローで悪性腫瘍の発現率はMPR+R8%、MPR+P5.9%、MP+P 2.6%でレナリドマイド使用群で高い傾向がみられた。血液系の悪性腫瘍も固形がんも増加していた。CALGB100104 試験でも同様の傾向がみられた。
    現在レナリドマイドの2次発がんについては最終的にはもうすこし長い年月での報告をみる必要がある。レナリドマイドを使用する患者には(特に若年者に対しては)副作用としての2次発がんの説明をしつつ治療薬として使用していくことが望ましい。また主治医は体重減少や急激な血球減少などの変化が見られた時はそれに留意して検査をすすめる必要がある。
  • TD療法(サリドマイド+デキサメサゾン)サリドマイドは使用前に患者教育と届け出が必要である。血球減少、血栓症、皮疹、神経障害が問題となる。

(4) 骨病変

Bisphophonate  ゾメタがもっとも強力である。
溶骨性病変がある、または骨塩減少、骨粗鬆症が認められた骨髄腫患者では投与の対象となる。これを行うことにより骨関連事象はあきらかに減少するとされる。また抗腫瘍効果もあるとされる。
具体的にはゾメタを3-4週に1回点滴静注する。1回15-30分程度で行う。腎障害があるときには減量が必要である。また顎骨壊死をおこすことがあるため抜歯を行う際には前もって中止する。また2年間投与して安定していれば投与を中止することを検討する。
★日本口腔外科学会よりビスフォスフォネート製剤を使用する医師にむけてのて提言書が出されておりホームページよりダウンロードすることができる。これによると、歯科治療後のビスフォスフォネート製剤の再開は14-21日後(抜歯部位の粘膜形成が完了するまでの期間)か骨が十分に治癒してからとし、また投与中に抜歯が必要になるときにはビスフォスフォネート製剤の投与延期を推奨するとある。またビスフォスフォネート製剤投与を中断したほうがよいかどうかを予見できるデータはないとある。

(5) 疼痛管理

骨髄腫では骨の疼痛のために鎮痛剤が必要なことが多いが、もともと腎障害を潜在的にもっていることが多いとされ長期のNSAIDsの使用は控えたい。
痛みが強いときには積極的にオピオイドを使用し、また腫瘤による疼痛が強いときには放射線治療のよい適応になるため放射線科のコンサルテーションを検討する。

8. 治療効果判定

sCR(stringent complete response 厳密な完全奏効)

CR基準と以下をすべて満たす。

  1. FLC(遊離軽鎖)比率が正常
  2. 免疫組織染色または蛍光抗体検査にて骨髄中からクローン形質細胞が消失

CR(complete response 完全奏効)

下記をすべて満たす。

  1. 免疫固定法にて血清と尿中のM蛋白が陰性化
  2. 軟部形質細胞腫の消失
  3. 骨髄中の形質細胞が5%以下まで減少

VGPR(very good partial response 非常によい部分奏効)

下記のいずれかを満たす。

  1. 血清と尿中のM蛋白が免疫固定法では検出されるが免疫電気泳動では陰性
  2. 治療前に比して血清M蛋白が90%以上減少し尿中M蛋白も100mg/24h未満に減少

PR(partial response部分奏効)

下記の条件を満たす。

  1. 治療前に比して血清M蛋白が50%以上減少しかつ24時間畜尿中M蛋白も90%以上減少するか、もしくは24時間畜尿中M蛋白が200mg/24h未満に減少
  2. 血清と尿中のM蛋白が測定感度以下の場合はその代わりに血清FLCの異常/正常の比率が50%以上減少
  3. 血清と尿中のM蛋白が測定感度以下でFLCも測定感度以下の場合は骨髄中形質細胞が50%以上減少(ただし治療前の形質細胞が30%以上の場合のみ)
  4. 上記の基準に加えて治療前の軟部形質細胞が存在した場合は測定可能病変の長径の総和が50%以上縮小していること

SD(stable disease 安定病変)

上記のいずれにの基準もみたさない場合。