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慢性骨髄性白血病(CML)  2012年1月

1. 初診時症状

健康診断でWBCが増加するのみで無症状でくることが多い。
脾腫のために腹部膨満、脾梗塞となり左腹部の痛みで来院することもある。

2. 末梢血

WBC増加、好酸球や好塩基球が増加していることが多い。NAPスコアが低下している。貧血はなく、血小板は正常かやや増加している。

3. 確定診断

末梢血か骨髄でのフィラデルフィア染色体(FISH法で提出すると1週間程度で結果がでる。)を調べることが必須である。それ以外の染色体異常をもつことがあるので、骨髄検査を行いG-banding法による染色体検査をおこなっておく。

4. 病期

慢性期、移行期、急性転化期がある。

移行期(WHO分類2008年より)

  1. 末梢血あるいは骨髄の芽球が10-19%
  2. 末梢血の好塩基球が20%以上
  3. 治療と関係しない持続性の血小板数の10万/μL以下への減少あるいは100万/μL以上への上昇
  4. 治療抵抗性の脾腫の増大、あるいは白血球数の増加
  5. クローン性の付加染色体異常

上記5項目のうち1項目以上あれば移行期とする。

急性転化期

  1. 末梢血あるいは骨髄の芽球20%以上
  2. 髄外腫瘍性病変
  3. 骨髄生検で腫瘍細胞の巣状の増殖

上記3項目のうち1項目以上あれば急性転化期とする。
上記以外は慢性期である。診断時のほとんどが慢性期である。

5. 予後因子 Sokal スコア 古くから用いられてきた。

年齢、脾腫(肋弓下cm)、末梢血芽球比率(%)、血小板数 (x109 /L) EXP( 0.016X (年齢-43.4))+0.0345x(脾臓サイズcm-7.51)+ 0.118x((血小板数/700)2 -0.563) +0.0887x(末梢血芽球%-2.10)) 低リスク≦0.8、中間リスク0.8-1.2 高リスク>1.2

Imatinibが投与されるようになってからもこのスコアは治療効果と相関性があるが、より治療反応性(細胞遺伝学的寛解、分子遺伝学的寛解)のほうが大切である。

6. 慢性期CMLの初期治療

  1. Imatinib (グリベック)400mg/日 1日1回  浮腫、吐き気、皮疹などが副作用として多い。
    もっともCMLの治療として長期のデータがありコスト的にも他の2剤よりも安い。標準的な治療である。
  2. dasatinib(スプリセル)100mg/日 胸水がたまる傾向にある。適時レントゲンにて確認を行う。
  3. nilotinib(タシグナ)800mg/日 食前1時間か、食後2時間以降にとらなくてはならない。
    肝機能障害、膵炎がおこりうる。血糖が高くなることがあるので耐糖能異常がある人は注意が必要である。

2も3もQT延長症候群がおこることがあるので心電図検査を前もっておこなっておくことが必要。また両者ともに2011年からCMLの初回治療に使用できることとなったが、費用は2、3のほうが高い。そして早く目標とする治療レベルまで腫瘍細胞を減らすことができる(完全細胞遺伝学的寛解に達するのが早いとされている。)コスト面、副作用を考えながら治療薬を選択する必要がある。

7. 十分な効果が得られない時(suboptimal response:詳細は次項参照)の治療

  1. Imatinib 600mg/日まで量できる。
  2. 十分な効果が得られない、もしくは副作用に耐えられない場合は薬剤(新規チロシンキナーゼ阻害剤:スプリセル、タシグナ)を変更して目標に達するまで試みる。

8. 副作用に対する対処

  1. 皮疹:抗アレルギー剤投与、ステロイド剤の塗布。
  2. 浮腫:利尿剤を適時使用。
  3. 吐き気:制吐剤の併用 食事とともに内服。
  4. 好中球減少:好中球<1000/μLにて中止し1500/μL回復するまで待つ。
  5. 血小板減少:5万/μLにて中止し、7.5万/μLまで待つ。

9. 薬剤の値段 2012.1月現在 いずれも高額である。

Imatinib: 100mg2749円 400mg10996円/日 30日で329880円
Dasatinib 50mg9214円  100mg18428円 30日で552840円
Nilotinib 200mg4607.2円 800mg18428円 30日で552840円

10. 治療効果判定

HR( hematologic response):血液学的効果

CHR(完全血液学的寛解) 以下のすべてを満たす

  • WBC<10000/μL, PLT<450,000/μL
  • 幼弱顆粒球の消失
  • 好塩基球5%未満
  • 脾腫を含む臨床症状の消失

CR(cytogenetic response) 細胞遺伝学的効果

骨髄液のPh染色体の割合で判定

  • CCR(完全細胞遺伝学的寛解) 0%
  • PCyR(部分細胞遺伝学的寛解)1-35%
  • Minor PCR(小部分寛解) 36-65%
  • Minimal PCR(微小部分寛解) 66-95%
  • 無効>95%

MR(molecular response) 分子生物学的効果

  • CMR(完全分子生物学的寛解) PCR陰性
  • MMR(大部分寛解) PCR 0.1%以下

11. 治療効果の評価のしかたと方法

  1. CHR(完全血液学的寛解) が得られるまでは血算と白血球分画にて2週間ごとに観察。達したら1-3カ月ごとに同様にフォローする。
  2. 骨髄検査はCCR(完全細胞学的寛解:FISHで0%)になるまでは6カ月ごと、その後は少なくとも1年に1回。 染色体検査は付加染色体異常をみつける目的もあり、Gバンド法とFISH法で行う。
  3. 3カ月ごとに末梢血の定量PCR法あるいはTMA法(AmpCML)を行う。

各チェック期間での評価

  • 診断後3カ月  無反応(failure):血液学的に効果なし
    効果不十分(suboptimal response) CHR未達成
  • 診断後6カ月  無反応:CHR未達成 細胞遺伝学的効果なし(Ph>95%)
    効果不十分: PCyR未達成(Ph>35%)
  • 診断後12カ月  無反応:PCyR未達成(Ph>35%)
    効果不十分 CCR未達成(Ph>0%)
  • 診断後18カ月  無反応:CCR未達成(Ph>0%)
    効果不十分 MMR未達成(PCR>0.1 %)
  • いかなる時期でも  無反応:CHRの消失、CCRの消失、
    効果不十分:付加的染色体異常の出現、MMRの消失

12. 移行期、急性転化になったときの治療

  • Imatinib 800mg/日 1日1回―2回
  • Dasatinib 140mg/日 1日2回 180mgまで増量可能
  • 急性白血病に準じた治療を行う。
  • 造血幹細胞移植 移植が可能な年齢(65歳)であればドナー検査を行うがこの時期における造血幹細胞移植の治療成績が悪く、長期生存は20%前後である。