湘南鎌倉総合病院
  • 湘南鎌倉総合病院ホーム
  • 湘南鎌倉総合病院アクセス
  • 湘南鎌倉総合病院お問い合わせ
  • 湘南鎌倉総合病院プライバシーポリシー

 

多発性骨髄腫

Q1. どんな病気?

多発性骨髄腫は、白血球の一種であるB細胞が分化・成熟して出来る『形質細胞』が腫瘍化する(“がん”に なってしまう)病気です。形質細胞は普通の人でも持っている抗体を産生する細胞です。いろいろな外部の菌、微生物に反応するための働きをしていますが、ある1種類の抗体を作る形質細胞が制限なく増えてしまった状態が多発性骨髄腫です。

男性に多く、女性に少ない高齢者の病気です。以前はあまり多い病気ではありませんでしたが、高齢者の 増加に伴って増えてきています。

他の血液のガンと大きく異なる点は、骨髄の中でガン細胞が増えた結果、骨の構造が壊れてしまうことです。 骨を溶かす細胞を活性化させる物質を分泌して、骨折や骨痛などを引き起こします。ちょっとしたことで骨が折れる病的骨折を起こします。背骨(脊椎)の圧迫骨折で腰痛や背中の痛みが出やすくなることもあります。 骨が破壊され続けることで血液中のカルシウムが増えて意識がボーッとしたり(高カルシウム血症)、カルシウムが腎臓に沈着して腎機能が低下したりします。さらに骨髄腫細胞が増えると正常な血液細胞が作られなくなり、貧血や出血、病原菌に対する抵抗力がなくなり感染症を引き起こすなどの症状も出てきます。

血液の働きを損なう

ガン細胞が骨髄を占領してしまい、正常な血液細胞が造られなくなる。それにより貧血や出血傾向など血液の異常による症状も起こるようになります。

  • だるさ、息切れ、動悸などの貧血症状
  • 出血しやすくなる(青アザ、鼻血など)
ガン細胞がM蛋白という特殊なたんぱくを作るため血液中の総たんぱく量が増える。

骨をもろくする

骨髄で増えたガン細胞が骨の仕組みを壊しながらどんどん増えていきます。そのため骨がもろくなって痛みなどが起こります。

  • 腰や背中の痛み
  • 骨折
骨の痛みは安静にしていると弱く、身体を動かすと強くなる。症状が進むと身体を動かした等のほんの軽いきっかけだけでも骨折するようになる。腕を振り下ろしたりくしゃみしたりしただけで骨折するケースもある。また骨が壊れて大量のカルシウムが血中に流れてしまう。

多発性骨髄腫の年齢別罹患率2005年度

Q2. どんなときに骨髄腫を疑うか?

  1. 腰痛が長く続く
  2. 病的圧迫骨折、くしゃみなどで強い腰痛がある
  3. 体型が年齢の割に著しく胸椎後弯である
  4. 高齢者で腰痛、貧血がある
  5. 腎障害がある(高齢者の原因がない腎障害では必ず鑑別する)
  6. 高カルシウム血症
  7. 感染症の繰り返し

Q3. 多発性骨髄腫の検査と診断

  1. 血液検査
    多発性骨髄腫の初期はほとんど無症状ですが、健康診断などの血液検査で見つかることもあります。はじめは貧血だけのことが多いですが、進行してくると白血球減少や血小板減少もみられます。血液生化学検査では、高カルシウム血症や腎機能障害が認められます。総蛋白が増加することが多いです。(BJP型では低下します。)
  2. 骨髄検査
    骨髄の中に異形成の強い形質細胞(骨髄腫細胞)が増殖しています。10%を超えることが多いです。骨がもろく、骨髄が取りにくいこともあります。
  3. 蛋白分画検査
    血清蛋白電気泳動という検査で血液中か尿中に「M蛋白」が認められるのを確認します。多発性骨髄腫になるとM蛋白が血液中や尿中に増えてくることから特徴的な所見となります。最近ではより感度のよい免疫固定法という方法や遊離軽鎖(フリーライトチェーン)も使われます。
  4. 骨X線検査
    骨病変を調べる、最も一般的かつ必須の方法です。頭部正側、胸椎、腰椎正側、骨盤(大腿骨も含めて)などを撮影します。背骨の圧迫骨折や頭蓋骨の打ち抜き像(丸く穴のように溶けた像)、骨の破壊像が認められます。

免疫電気泳動

 

免疫固定法

 

蛋白分画

作成者:信州大学医学部保健学科 藤田清貴

その他にもCT(コンピューター断層撮影)検査)やMRI(磁気共鳴画像)検査などを行うこともあります

Q4.多発性骨髄腫のいろいろな種類

多発性骨髄腫には色々な種類があり、どのタイプかを診断する必要があります。

  1. 症候性骨髄腫
    臓器障害がある骨髄腫であり、多発性骨髄腫のほとんどがこの病型です。臓器障害とは、高カルシウム血症、腎障害、貧血、広範な骨病変、アミロイドーシス、頻回の感染症です。 抗がん剤治療を要します。
  2. 無症候性骨髄腫
    臓器障害のない骨髄腫です。化学療法の適応とはなりませんが、たんぱく量は多く将来症候性に発展する可能性が高いため、定期的な採血によるM蛋白のフォローが必要です。
  3. MGUS
    M蛋白は存在するが量は少なく、また臓器障害がないことが必要です。またリンパ腫が否定されていることも重要です。(リンパ腫でもM蛋白がでることがあるからです。)ただし骨髄腫へ進展する可能性があり(10年で12%、20年で25%)、3~6ヶ月に一度採血をする必要があります。

Q5.進行度と治療方針は?

まず検査によって病気がどの程度進行しているのかを判断します。その進行の度合いを示すのが病期分類です。 『病期』とは、がんの進行の程度を示す言葉で『ステージ』とも言います。段階を表すのにはローマ数字が 使われています。
多発性骨髄腫は①腫瘍の量②その後の経過を左右する要因(予後因子)によってⅠ~Ⅲの3段階に分けられます。 病期分類には1960年代から使用されているDurie and Salmonという分類(図1)と、2000年以降に作られた ISS(International Staging System)(図2)があります。両者ともに臨床では使用されています。 病期Ⅰでは血液検査や骨X検査ではほとんど異常がなく、M蛋白も少量です。軽症であればすぐに治療を始めず 様子をみた上で症状があらわれたら治療にはいります。病期Ⅱ、Ⅲは治療の対象となります。

骨髄腫の病期分類

■Durie&Salmon分類(図1)

病期Ⅰ 以下のすべてを満たす
ヘモグロビン>10g/dL
血清カルシウム正常
全身骨撮影が正常あるいは孤立性骨病変
M蛋白  IgG<5g/dL 
             IgA<3g/dL
               BJP<4g/日
病期Ⅱ 病期Ⅰ、Ⅲのいずれにも属さないもの
病期Ⅲ 以下のいずれかを満たす
ヘモグロビン<8.5g/dL
血清カルシウム>12mg/dL
広範囲の骨病変、骨折
M蛋白  IgG>7g/dL
               IgA>5g/dL
               BJP>12g/日
亜分類A
亜分類B
血清クレアチニン<2mg/dL
血清クレアチニン≧2mg/dL

■ISS分類(図2)

 

Q6.第一選択となる薬物療法は?

多発性骨髄腫はゆっくり進行していくため、病期Ⅰでは通常経過観察するだけで治療は行いません。 治療を開始するのは病期Ⅱになってからです。多発性骨髄腫の治療の中心は薬物療法でがん細胞の根絶を目指し て行われます。治療方針は65歳を境に変わり、比較的若い65歳以下の患者さんでは造血幹細胞移植を前提にした薬物療法が標準的治療とされています、

化学療法

この4~5年多発性骨髄腫の治療は大きく変わりました。それまで標準治療となっていたVAD療法はほとんど使用されなくなりました。それに変わって新規薬剤(ベルケイド、レナリドマイド、サリドマイド)を用いて、デキサメサゾンなどのステロイドと併用したり、これまでのMP療法(メルファラン、プレドニン)と組み合わせたりして治療を開始します。ただし日本の現在の保険上は最初からレナリドマイド、サリドマイドを使用することはできないので、まずはベルケイドを用いた治療から入ることが多いです。当院ではBD療法(ベルケイド、デキサメサゾン)による治療から入ることが多いです。しかし、全身状態が悪い時やベルケイドによる神経障害(歩行障害がおきることもある)のリスクが高いときには、大量デキサメサゾンによる治療だけをまず行い、全身状態をみながら次の薬剤を選択していくこともあります。また1960年代から使用されているMP療法は、外来にて内服で出来る治療であり、まだ外来でしばしば使用されます。
初期治療としてのそれらの治療が上手くいかなかった時にはレナリドマイド、サリドマイドをデキサメサゾンやMP療法と組み合わせて治療を行うことを検討します。どれを選ぶかはその患者さんの持っている合併症、生活状態などを考えて医師が判断します。レナリドマイド、サリドマイドは患者登録制になっており、治療開始前に患者教育と手続きが義務付けられています。
治療は抗体(グロブリン)の値をみながら継続して行います。抗体の値がある程度正常値になった場合には、その後「維持療法」としてレナリドマイドを減量して投与することが効果ある、と最近わかってきました。
従って長期に治療を継続していくようになってきました。

ビスフォスフォネート

多発性骨髄腫では骨病変が生じることが多く、骨折の合併症を減らし、骨痛を減らすためにビスフォスフォネートの点滴が用いられます。ゾメタが使用されることが多いです。3~4週間に1回程度の点滴ですが20分程度で済み、簡便です。しかし腎機能障害がある人は量を減量する必要があること、また顎骨壊死という特徴的な副作用があるために、抜歯や歯科治療は控えなくてはなりません。それらが必要な時には早めに主治医に相談しましょう。

造血幹細胞移植

大量の化学療法によって破壊された造血機能を回復するために、患者さん自身またはドナー(提供者)の造血幹細胞(自分の血液細胞のもととなる細胞)を点滴することを「造血幹細胞移植」といいます。
造血幹細胞移植は「自家移植」と「同種移植」があります。多発性骨髄腫に対して行われるのは、自家移植が一般的です。

  1. 自家末梢血幹細胞移植
    患者さん自身の組織(造血幹細胞)を移植する方法です。何度か化学療法を受けてがん細胞が減った時に 患者さん自身の血液から造血幹細胞を取り出して冷凍保存しておき、移植のための前処置をしたあとで解凍して再び患者さんの体内に戻します。患者さん自身の細胞なので拒絶反応は起こりませんが、採取した造血幹細胞にがん細胞が含まれている可能性があります。
    若く各種臓器機能が保たれている場合には、自家移植がもっともよい治療成績を残しています。一般的には65歳くらいまでが対象となります。
  2. 同種移植
    他の人から造血幹細胞を提供してもらい、移植する方法です。兄弟や両親など血縁関係にある人から提供してもらう場合と、骨髄バンクに登録して非血縁者から提供を受ける場合があります。
    拒絶反応が起こりやすいのが問題であり、そのコントロールのために免疫抑制剤などが使われます。
    骨髄腫ではこの治療は難治性の場合に一部の施設で行われます。