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亜鉛について

#1 血清亜鉛は日内変動を示し、午前中に高く午後に低下する。 
#2 貯蔵蛋白が存在せず。日々必要量を補給しなくてはならない。成人の1日必要量15mg。
#3 血清亜鉛は全体の亜鉛量の約1%を占めるにすぎないが、亜鉛欠乏の指標として有用である。
   身体活動やストレスにより肝臓その他への体内シフトがみられる。亜鉛濃度は午前8時が最高で午後3時に最低
   になる。また赤血球中には血清の10倍、白血球中には赤血球のさらに10倍の亜鉛が含まれ、採血後速やかに
   血清分離することが重要であり、採血時の溶血にも注意が必要。またWBC数が多いような白血病のような
   時にも値を考慮する必要がある。亜鉛欠乏時には亜鉛酵素の代表であるALPも優位に低下する。
  (ALP低下時に鑑別の一つになるかもしれない)


#4 亜鉛の吸収と臓器分布
   亜鉛は十二指腸、小腸上部で吸収される。吸収後はアルブミンやα2マクログロブリンと結合して細胞内亜鉛
   濃度の恒常性維持に寄与している。細胞内の維持は亜鉛トランスポーターとメタロチオネインなどの亜鉛結合
   性蛋白が担う。細胞が刺激による細胞の分化、増殖、機能発現などのシグナル伝達経路の制御に亜鉛が深く関
   与している。
   亜鉛は広く体内臓器に分泌して細胞内に存在する微量元素としては最も多く、筋肉に60%、骨に30%、残り
   の10%が肝臓、膵臓、腎臓、脳、皮膚、前立腺にある。

#5 生理的な作用:
  (1)細胞新生や組織の再生、創傷治癒過程の情報伝達に必須:つまり外科の術後にも大切。
  (2)免疫能の保持:亜鉛欠乏の主要症状の一つに重篤な免疫不全と易感染性がある。高齢者の呼吸器感染に
     おいても亜鉛投与が重要である。老人性肺炎の予防と重症化の抑制にも亜鉛有効。
  (3)顕在性の亜鉛欠乏症で食思不振、味覚障害、舌痛、褥瘡などの亜鉛欠乏症状は亜鉛投与により改善する
     ことがある。

#6 年齢と亜鉛
    高齢者では血清亜鉛は低下傾向。米国での研究で高齢になるに従って亜鉛は低下することがわかった。
    日本の研究でも全性人の20%が基準加減の65μg/dL以下。(亜鉛の正常値:84-159μg/dL。60-79μg/dL
    は浅在性欠乏症、59μg/dL以下は欠乏症とする。

#7 疾患と亜鉛:腸性肢端皮膚炎(Acrodermatitis Enteropathica):発育遅延を伴う難治性皮疹 
          先天的な亜鉛結合蛋白の欠損による亜鉛吸収障害をきたす常染色体劣性遺伝性疾患
          亜鉛内服により回復。

#8 肝臓関連:慢性肝炎から肝硬変にすすむと亜鉛が低下する。それ以外にもCa,Mg、P低下、Cu上昇。
         非代償性肝硬変では著明に低亜鉛となるため夜盲症、味覚障害などがおきる。
         また亜鉛は肝臓の線維化を抑制する。非代償性肝硬変など亜鉛欠乏の状態では、成人の1日必要量
        15mgの数倍から10倍の100-150mgの亜鉛投与が必要である。

#9 胃疾患:ピロリ菌がいるときには亜鉛を投与しておくとピロリ除菌の効果を高めておくことができる。

#10  炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、Crohn病では亜鉛低下する。獲得免疫の抑制機構を制御するT細胞機能の増強
   させるため、病勢のコントロールには亜鉛の濃度を保つことが重要ではないかと意見もある。

#11 膵疾患:亜鉛は膵液中に分泌される。膵外分泌機能が低下する慢性膵炎では低亜鉛となる。
        亜鉛は膵酵素の合成にも重要、またインスリンの合成、貯蔵、分泌にも関与。
        グルカゴンの分泌にも関与。慢性膵炎では膵酵素の大量補充に加えて亜鉛を投与するとよい。

#12 AMIと亜鉛:発症後1-4日亜鉛は優位に低下するが、虚血だけなら正常範囲というデータもある。
         心筋梗塞後に合併した不整脈の重篤度がますほど、不整脈、心不全、ショックなどの合併症が
         増すほど亜鉛低下が著明。MI後の低亜鉛はストレスによる体内シフト、壊死の修復に動因されて
         おきると考えられているが、補充が救命率を上げるかどうかは解っていない。

#13 腎不全と亜鉛:非透析慢性腎不全、血液透析、血液濾過いずれも亜鉛低下。
           亜鉛補充療法により腎性貧血に対するエリスロポエチン投与量の減量が可能

#14 慢性関節リウマチ:リウマチにおける関節痛、関節腫脹などの症状が亜鉛投与に改善することが知られて
             いる。

#15 放射線照射時の口腔粘膜障害:亜鉛を含むうがい薬を放射線治療開始後4週間に投与したところ、著明に
                  粘膜障害発生率が低下した。

#16 感染症:亜鉛は免疫能を保持するためになくてはならない微量元素。
        老年者に亜鉛投与(75mg/日)をすることでの12ヶ月の感染頻度をみてみると、優位に亜鉛投与群
        にて低下している。

#17 加齢、慢性炎症、ステロイドの服用にて潜在的に亜鉛欠乏となると感染の率が高くなるとVitDの作用不全が
    発生しやすい。骨量の維持のためにはCaのみならず、亜鉛の存在も必要。

#18 褥瘡:亜鉛は免疫能を高めるだけではなく組織修復、創傷治癒を促進するが、Albの上昇が十分でなくても
       亜鉛濃度が上昇すれば褥瘡は治癒傾向を示すため難治性の褥瘡では亜鉛補充も検討すべし。

#19 亜鉛は1.5%が脳内に存在し、とくに海馬のシナプス間隙に高濃度に存在し、神経終末のシナプス小胞は活発に亜鉛をとりこんでいる。アルツハイマー病の能では減少することが知られている。

参考文献:(1)諸疾患における亜鉛測定の意義 内科領域を中心として  宮田學   
                           亜鉛栄養治療 1巻1号 2010 5-25
     (2)血清亜鉛濃度に関する調査  一時的身体ストレスによる影響 小坂和江
     (3)UP TO DATE