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医食同源:薬膳

熱帯夜が続いている。

本年度七月の熱中症による救急搬送車数は1万六千人を超え、昨年度の夏の総搬送者数をすでにしのぐ勢いである。テレビなど各種メディアで注意を喚起されていることで、受診頻度が増加していることもあろうが、それにしても寝苦しく、過ごしにくい猛暑が続いている。

そんな折、夏の薬膳料理をいただく機会があった。冬瓜と豚肉のスープ、ハト麦の炊き込みご飯、茗荷と生姜・ズッキーニを包んだ水餃子、緑豆寒天などなど、翠のものは見た目にも涼やかで、食した後、体の重苦しさが払われたような爽やかさが残った。

中医学に使われる漢方薬は、我々も病院でも処方することの多いなじみの薬剤である。元々、漢方薬と、薬膳と呼ばれる日々の食事療法とは、地続きである。選ばれるのが食材か、普段は食さない草根木皮か動物由来・鉱物等などの材料かの違い、そして効力の強さ・速さの違いであり、どちらも中医学の陰陽五行説に根拠を得ている。

陰陽五行というと何やらいかめしいが、要は人間を含めた万物は、陰と陽、木・火・土・金・水などの、自然の要素の変化や働きによって成り立っているという、私達日本人にもおなじみの自然観・健康観なのだと思う。 

 その土地の風土から四季折々生み出される食物には、その季節をしのぐために必要な栄養素が凝縮されており、それを私たちの体内に取り込むことによって、自然と調和し、英気を養えるという医食同源の発想は、自然の一部に当たり前のように「人間」をも含んでいる点で、実に東洋的自然観である。

中医学では、熱さ、寒さなどの天候も、「暑邪(しょじゃ)」「寒邪(かんじゃ)」と呼んで、邪気が体に入ってくるという言い方をする。

 興味深いのが、臓器の症状として出る前に、味覚に症状が出るという話。夏、暑邪(しょじゃ)が体に入ってくると、苦みを欲することが多くなるとのこと。沖縄の苦瓜(ゴーヤ)、東南アジアの香菜(パクチー)など、暑い土地では苦みの強い料理が多いことを考えると、うなづける話である。夏の麦酒がとりわけ美味に感じるのも、ひょっとして同じ理由かもしれない。

胡瓜や冬瓜や茗荷などは、体内の湿気をとる働きがあるという。麦茶にも、熱を散らす力があるという。盛夏のきゅうりの三杯酢、冬瓜の葛引きなど、日本人も伝統的に、食材の持つ力を経験で知っていたのであろう。

熱中症予防に飲水を心がけるのはもちろんのこと、涼味あふれる夏食材を日々の食卓に積極的に取り入れて、美味しく楽しく、猛暑をしのいでいきたいものである。