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ikarosと急性リンパ性白血病と分類不能型免疫不全症

細胞は自然に成長・分化するのではなく様々な因子によって制御されており、その制御分子に<転写因子>というものがある。したがって、転写因子の異常は細胞分化を抑制し、ひいては癌をひきおこす一つのメカニズムとなる可能性がある。
<Ikaros >は血球分化、とりわけリンパ球の正常な分化(幹細胞からリンパ球への分化)に必須の転写因子である。我々血液関連の疾患と関連があることが解ってきている。実験レベルでは骨髄球系の白血病細胞、T細胞性の白血病細胞にはIkarosの遺伝子発現に異常はなかったが、B細胞性の白血病細胞では転写因子として機能するための大切な場所(DNA結合部位)が欠損していることがわかっている。この機能欠損とB細胞性白血病の発症が関係しているのではないかと考えられていて、実際フィラデルフィア染色体陽性の、予後の悪い急性リンパ性白血病の80%でIkaros遺伝子の変異があるとの報告もある。
そんなIkaros であるが、最近の論文で(N Engl J Med 2016; 374:1032-1043)分類不能型免疫不全症(CVID)とIkarosとの関係が発表された。 CVIDは成人前後で頻回の副鼻腔炎や呼吸器感染などを繰り返す原因不明の疾患で低ガンマグロブリン血症を呈し、時に自己免疫性疾患を呈したり悪性リンパ腫などの腫瘍を合併する。家族性もある。Bリンパ球数は正常だが形質細胞が低下し、抗体産生がうまく行われない。NIHのKuehnらは6家系26名の患者を対象として全エクソーム解析、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション等により、B細胞の減少したCVID患者の遺伝子基盤を解析したところ、転写因子IKAROS遺伝子IKZF1に6種のヘテロ変異を同定した。またヘテロ変異がある29名中2名でALLが発症した。著者らはCVIDとIkarosとの関連を結論づけた。
ここでリンパ球の分化に関連する転写因子ikarosの変異がCVIDという免疫異常にも関連し、また急性リンパ性白血病とも関連しているという、わくわくする面白い繋がりがみられた。