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非典型溶血性尿毒症症候群 aHUS診療ガイド

雑誌名

2015 日腎会誌 2016:58(2)62-75より

血栓性微小血管症(TMA: therombotic microangiopathy)は微小血管症性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia), 消費性血小板減少症、微小血管内血小板血栓を3主徴とする疾患
代表的な疾患として
(1)溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome) HUS
(2)血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura): TTP が挙げられる。

 最近では志賀毒素を産生する病原性大腸菌によるものをSTEC-HUS(shiga-toxin producing E.colo), ADMATS13酵素活性が10%未満に著減するものをTTPと診断することになっている。
 HUSの90%では血性下痢を伴うSTEC感染によるものであるが残り10%では下痢を伴わず、志賀毒素も検出されないためかつてはD(-)HUSといわれていた。これらや家族性のHUSがatypical HUSと呼ばれるようになった。その後補体関連因子の一種であるH因子の減少やその遺伝子異常が報告され、2013年国内でaHUSの診断基準が作成された。そこではaHUSは<TMAからSTEC-HUSとTTPを除外した疾患である>と定義された。

■2013年のaHUS診断基準でのaHUSの定義は<広義のaHUS> ■
つまり遺伝性の補体制御異常や抗H因子後退によるもの(これが狭義のaHUS)だけではなく代謝性、感染症、薬剤性、妊娠関連、自己免疫疾患、骨髄移植関連といった2次性TMAを含んでいた。しかし・・・
(1)国際的には2次性TMAはaHUSに含まない方向である
(2)最近ではaHUSの原因として補体関連遺伝子異常だけではなく凝固系関連の因子の遺伝子異常も判明してきている。
(3)C5モノクローナル抗体であるエクリズマブが本来の適応である補体制御異常ではなく2次性TMAにも使用されてしまっている。(エクリズマブは非常に高額である)
(4)難病指定であるaHUSはあくまでも補体制御異常が対象であること
これらがあってaHUSの診断基準改定がおこなわれることとなった。

現時点での2015年診療ガイドではTMAを含む代表疾患として
(1)TTP
(2)STEC-HUS
(3)補体関連aHUS:先天性 後天性の補体制御異常のみをaHUSとする。
(4)2次性TMA
 (2)と(4)は腎障害が多い。
このガイドラインでのaHUSに含めるものとしては
(1)2015年現在判明しているCFH,CFI, CD46, C3, CFB,THBD, DGKEの7遺伝子異常
(2)後天性aHUSとして抗H因子抗体陽性
(3)TMAを呈しSTEC-HUS,TTP,2次性TMAが否定的で上記遺伝子異常がないが臨床的にはaHUSが疑われる例
   ・・・というのも頻度が稀であり、不明な遺伝子異常がまだあると考えられているため

疫学

 sHUS 100万人に2人程度、18歳未満の発症が40%程度。日本では2015年現在で100-200例前後。家族性は20%とされているが浸透率が100%ではない。1/3が腎不全になる。後天性は抗H因子抗体が出ることが多いが、これは全体のaHUSの10%位である。

※本物のHUS 志賀毒素をえた15%くらいがHUSになるとされる。抗生剤投与によりさらに毒素が出てSTECが悪化するとも言われる。小児に多く夏に多い。O157が有名だがそれ以外の大腸菌O-26,O91なども頻度が高く、O157が出なくてもHUSが否定出来る訳ではない。HUSのガイドラインも出ている。

病態

補体のメカニズムの理解
  補体関連のaHUSは第2経路の異常活性化により発症する。
 第2経路:C3⇒C3a,C3b C3bは微生物などの細胞表面に結合、B因子、D因子などと反応してC3b⇒C3bBbに。
これがさらにC3⇒C3a,C3bを促進、C3bと結合してC3bBbC3b(C5転換酵素)となる。これがC5⇒5a,C5bに分解、C5bがC6~C9へと順次反応。膜侵襲複合体MAC:membrane attach complex)となり病原菌の溶菌、細胞膜融解をひきおこす。
 ところがC3bは自分の細胞膜上にもあり、自分のC3bにくっつかないためにH因子、CD46、 THBDという制御因子があり、またI因子はC3bの分解、不活化を速やかに行うなどして補体の障害から自らも守っている。
 aHUSではこれら後半の制御因子の異常としてCFH,CFI,CD46,THBDの変異、抗H因子抗体が挙げられ、これにより補体系が過剰に活性化してしまう。また活性化因子の機能獲得としてはCFB,C3変異が挙げられ、これらが補体系の活性化で血管内皮障害や血小板活性化を引き起こす。
 また面白いことに抗H因子抗体を持っている人はCFH関連(Complement factor H related CFHR)1~5の遺伝子異常を持っていることと関連していることがわかっている。感染を契機にH因子が高次構造を変えてCFHRとなるが、このCFHRがもともとおかしいとこのエピトープをもっていなければ異物と判断されて自己抗体が出来るのかもしれない。
 最近ではTHBD,DGKE,PLGなどの凝固系の制御に関連する因子の異常が報告されている。

症状

感染を契機に発症することが多い。腸炎が誘発となることもあるので、下痢をしているからaHUSが否定されるわけでもない。
 微小血管症性溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全
 家族歴がある人、かつてHUSやTTPと診断されたことのある人、原因不明の腎不全を呈するもの、TMAを再発する家族歴がある人などはaHUSを強く疑う。しかし遺伝性であっても発症するのは全体で50%程度といわれており、成人発症も多い。
 責任分子による症状の差はないが、膜型のタンパクによるaHUSは症状が軽症で腎障害が少ない。

診断

補体C3を調べればわかるか?・・・必ずしも減らないので診断には使えない。

(1)まずTMAの診断:溶血性貧血 LDH,破砕赤血球、ハプトグロブリン、クームス
(2)急性腎不全をきたす他の疾患除外
(3)DIC除外 PT,APTT,D-Dimer,FBG
(4)悪性貧血
(5)HITの除外
(6)STEC-HUS鑑別 血便が80%以上。血液成分の多い重度の血便。上行結腸壁の著明な肥厚、エコーの輝度が上昇。
小児ではTMAの90%がSTEC-HUSであることから、生後6か月以降で重度の血便を主体とした症状で発症したTMAではまずSTEC-HUSを疑う。
(7)TTP鑑別  ADAMTS13が10%未満、ADAMTS13に対する抗体があれば後天性TTP、 ADAMTS13が10%未満で抗体陰性であれば先天性を疑う。先天性の確定診断には遺伝子解析が必要である。aHUS、HUS、2次性TMAでもADAMTS13の軽度低下はおこるが通常は20%以上。

(8)2次性TMAの鑑別
◎コバラミン代謝異常 生後6か月未満では考慮 ホモシスチン、血漿メチルマロン酸、尿中メチルマロン酸
◎自己免疫性疾患除外 抗核抗体、抗リン脂質抗体、抗DNA抗体、抗セントロメア抗体、抗Scl-70抗体、C3,C4,        CH50,IgG,IgA, IgM,ANCA
◎加速型―悪性高血圧
◎悪性腫瘍 消化器系、乳がん、前立腺癌、肺がんなどの進行期
◎感染症 肺炎球菌感染症特に侵襲性肺炎球菌感染症ではTMAおこすことがある。小児に認められる。直接クームスが90%の例で陽性。血漿輸注で悪化することがあり、血漿交換は行わない。非洗浄血液製剤は投与しない。

その他HIV、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス、CMVウイルス、百日咳、水痘、重症溶連菌感染症などがTMAをおこすることが知られている。ただし補体関連aHUSの人でも感染を契機に悪化することがあるため、鑑別は難しい。

◎妊娠関連のHELLP症候群 妊娠高血圧に合併する溶血性貧血、肝障害、血小板減少 分娩により速やかに軽快。
 ただし妊娠契機のTTP,HUSもあるため鑑別が難しい。aHUSでは分娩後の発症も多いといわれている。
◎薬剤性TMA: 抗血小板剤のチクロピジン、クロピドグレル、キニーネ、バラシクロビル、マイトマイシン、ゲムシタビン、シスプラチン、VEGF阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス
◎急性膵炎:経過中にTMAを発症することがある
◎造血幹細胞、臓器移植後TMA:ADAMTS13活性は10%未満ほどにはならない。血漿交換の有効性は低い。免疫抑制剤のカルシニューリン阻害剤を減量、中止
◎小児:TMAの90%がSTEC-HUSなので生後6か月以降で重度血便があればまずSTEC-HUSを考え、便O157抗原、ベロ毒素、大腸菌O157LPS抗体
乳幼児では重症の肺炎球菌感染症などからくることもあり、また年長児ではSLE、抗リン脂質症候群を主とした基礎疾患を考える。
1歳未満のaHUS発症ではDGKE遺伝子の異常が多い。

aHUSの確定診断

◎C3低値、C4正常は第2経路の活性化を示唆される(全体の50%)。
◎羊赤血球を用いた溶血試験:CFH遺伝子異常、抗H因子抗体陽性例で高頻度で陽性
遺伝子検査が必要。血漿交換前に血漿4本、血清4本、便をー80度にて凍結保存しておくと良い。(クエン酸血漿:ADAMTS13活性、溶血試験)、EDTA2K血漿、血清)それをahus-office@umin.ac.jpに送ると(aHUS事務局)溶血試験をしてくれる。以下の抗H因子抗体、遺伝子検査も受け付けてくれる。
◎抗H因子抗体
◎最終的には遺伝子異常の確定 4割はまだ未知の人もいる。

治療

aHUSと診断されればエクリズマブ C5に結合してC5からの分解を抑制してC5a,MACの産生を抑制する。長期使用にても効果の維持が認められている。腎機能が低下していても減量の必要性はなし。aHUSでは使用後1週間程度で血小板の改善、LDHの低下がみられる。抗体があるaHUSでは免疫抑制剤、ステロイドの使用などが行われているが、どれが一番というものはなし。
ただし結果が出るまでの間はTTPに準じた形で血漿交換を行う。小児では血漿交換が難しく、血漿輸注も行われる。aHUSでは70%が一時的に寛解となるがTMA再発、腎不全の進行、死亡率が高い。
 エスリズマブ投与に関しては髄膜炎菌の感染リスクが高いとされワクチン摂取が推奨されている。2歳以上で適応。緊急で使用する場合には適切な抗菌剤投与を併用しながら行う。また髄膜炎菌ワクチンもすべての髄膜炎菌カバーではないことを知っておく。肺炎球菌、インフルエンザ菌のリスクも増大する傾向にある。
 また日本人にはC5遺伝子c2654G→Aの変異を持つ人が3%を占め、その人ではPNHにおいてエクリズマブが不応である。aHUSにもそのような症例が出る可能性がある。
 また効果が出た時いつ終了するかについてはコンセンサスはなし。CFH変異例では再発率が高いという報告がある。
血小板輸血は基本的には禁忌だが、出血傾向が強ときにはやむを得ず行うこともある。