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楽器から生じる肺炎?

ある楽器を演奏する患者さんから自分は大丈夫かという質問うけたので、その医学記事を紹介します。バグパイプで過敏性肺炎となり死亡した症例です。

今回報告されたのは、2009年に過敏性肺炎と診断された61歳男性の症例。男性は症状が悪化して呼吸や歩行が困難になり2014年に入院。過敏性肺炎と診断されていたものの、原因は不明のままだった。男性はハトを扱うことはなく、喫煙もせず、自宅にカビや水害の徴候はみられなかった。趣味としてバグパイプを毎日演奏しており、楽器内部の数カ所から検体を採取し検査したところ様々な種類の真菌Paecilomyces variotti, Fusarium oxysporum, Penicillium species, Rhodotorula mucilaginosa, Trichosporon mucoides and Exophiala dermatitidis.など多数認められた。

管楽器の内部は湿度が高く真菌やカビの増殖が促進され、これを日常的に吸い込むことで過敏性肺炎という肺の慢性炎症性疾患を引き起こした可能性があるとのこと。
男性は治療の甲斐なく死亡し、剖検の結果肺が著しく損傷していたことが判明した。これまでトロンボーンやサキソフォンの奏者では過敏性肺炎の症例が報告されている。バグパイプに関係する症例はこれが初めて。使用後はすぐに楽器を掃除し、乾燥させることでこのリスクを軽減できる可能性があるという

過敏性肺炎では、その菌が増殖して起こしている肺炎とは病態が異なる。本来病原性や毒性を持たないカビ(真菌)や動物性蛋白質などの有機物、あるいは化学物質などを繰り返し吸い込んでいるうちに肺が過剰反応を示すようになり、その後に同じもの(抗原)を吸入すると肺胞にアレルギー性の炎症が生じて発症する。この炎症にはTリンパ球や抗体とよばれる免疫分子が深く関わっている。
抗原にさらされると強い炎症が生じ、発熱やせき、呼吸困難感、だるさなどの症状があらわれ、環境から離れると症状が軽快・消失し、再びその環境に戻ると悪化する。このような状態が続くと肺に線維化とよばれる不可逆的(もとに戻らない)な変化が生じ、抗原にさらされていなくても常に咳や呼吸困難感で悩まされるようになってしまう。(日本呼吸器学会ホームページより抜粋)

日本に多い過敏性肺炎には、
1)夏型過敏性肺炎:高温多湿になる夏季に発症しやすく、風通しや日当たりが悪く湿気の多い古い家屋を好むトリコスポロンというカビが抗原です。
2)農夫肺:北海道や岩手県などの酪農家にみられ、干し草のなかの好熱性放線菌というカビが抗原です。
3)換気装置肺炎(空調肺、加湿器肺):清掃を怠ったエアコン(空調)や加湿器に生じたカビ類を吸い込むことによって発症します。
4)鳥飼病:鳩やインコなどの鳥類を飼育している人に発症します。抗原は鳥類の排泄物に含まれる蛋白質といわれています。
5)職業性の過敏性肺炎:キノコ栽培業者がキノコの胞子を吸入して生じる過敏性肺炎やポリウレタンの原料であるイソシアネートを吸入して生じる過敏性肺炎などが知られています。

肺に陰影があるとなにか感染症であろうとすぐ考えてしまいますが、このようにアレルギー的な反応としての肺炎があることを改めて意識して問診で詳しく聞くことが大切です。