2017年
5月
12日
金
シクロスポリンは我々の領域では免疫抑制剤として、主に再生不良性貧血や赤芽球癆に用いられる薬剤である。経口剤は主に小腸で吸収されるが、体内薬物動態は個人差が大きく、血中濃度をチェックする。また脂肪に溶けやすい性質から脂肪の多い組織での局所濃度が高い(例えば肝臓、膵臓、腎臓、甲状腺、副腎、皮膚など)。脳血液関門は通過しない。
シクロスポリン投与中は血圧が急に高くなってくる人がいる。それにより頭痛などが生じる可能性もあるが、それ以外にも血中濃度の増加で振戦、しびれ、頭痛やけいれん、幻覚、小脳失調、白質脳症などまで神経障害を起こすことが知られている。
シクロスポリンを飲んでいる人は他にも複数の薬剤を免疫抑制に対して飲んでいることも多いため、それらの影響も考えつつシクロスポリンによる腎障害、腎臓からのマグネシウム再吸収低下で低マグネシウム血症になるなども関係しているかもしれない。臨床では様々な原因を同時に考えつつ、でもシクロスポリンそのものでも中枢神経副作用が起きることを知っておくことが必要である。
2017年
3月
21日
火
初期研修医1年目の小野亮平です。内科研修の1ヶ月間を血液内科でローテート研修させていただきました。
血液内科として過ごした1ヶ月間、客観的に血液内科の先生方の診療を見させて頂いての感想を述べさせて頂きたいと思います。
僕自身は現時点で内科志望でありますが、この1年間で内科のみならず色々な科を回りたくさんの患者さんと接する機会がありました。
その中でも背景疾患として血液系の疾患を有する方も多く、そのマネジメントや評価に難渋することもあったことが正直なところです。
この1か月を通じて血液内科の”疾患”を学ぶことよりも、血液内科としてのアセスメント方法や予測医療としての側面を学べたことが僕自身は一番勉強になりました。
血球が減少している方、DICの方、FNの発熱など教科書で勉強するよりも実際に患者さんを目にして遥かに重症であり、対応に慎重を要することが何度もありました。
そのような事態に備えて、事前策として様々な予防を施す医療を実践しており、個々人に対してpersonalized and predictivemedicineを施している面が印象的です。 <次へ>
2017年
1月
10日
火
「白血球をあげる食事はありませんか?」「血小板をあげる食事はありませんか?」
血液内科の患者さんの中には、免疫力を担当する白血球が少なくなったり、血の色の元になっている赤血球が足りなくなる方が多い。
外来で、よく受ける質問が食事の質問だ。日々の食事の中で滋養を養い、病を少しでもよくしたいという患者さんやご家族の心情が伝わってきて切ないのだが、残念ながら今のところポパイのほうれん草は見つかっていない。
よく貧血にはレバーがいい、鉄分がいいと言われるが、貧血にもいろいろな種類があり、鉄分は足りているのに赤血球が増えないといったタイプもあるため、一概に言えないこともある。
しかし古今東西、この私たちの悩みの種となっている血液の製造工場=骨髄そのものを食べる料理はたくさん存在する。
イタリアではオッソ・ブッコという子牛の骨付き肉を骨髄ごと煮込む伝統的な料理があるし、フランスでは ロス・ア・モアルという、牛の骨髄をそのままオーブンで焼いて食べる料理もある。昔の貴族はカニの身をすくってすくうスプーンよろしく骨髄スプーンを持っていたそうだし、アメリカ料理の母とも言えるマーサスチュワートも骨髄スプーンご愛用と聞く。
日本でいうなら、一番なじみが深いのは「豚骨スープ」だろう。豚の骨の骨髄を煮だしたスープで、白濁しているのは溶けだした脂肪分とコラーゲンが乳化して溶けあっているためだ。脂肪分、タンパク質、ビタミンやカルシウムを豊富に含んだ栄養価の高いスープである。
沖縄では、沖縄そばの出汁を取った後の豚の骨を、さらに煮込んで「骨汁」として食する。文字通り骨髄の滋養を「骨の髄まで」味わっているのだ。沖縄がかつて長寿の国だった一因ももしかしたら骨髄かも?
鎌倉在住の料理家辰巳達子さんが紹介しているように、スープは食欲、咀嚼機能、消化機能が衰えた方でも召し上がれる。四季折々の食材に含まれる魚介、野菜、豆、穀類などに含まれるミネラルやたんぱく質やアミノ酸が熱によって溶けだし、単純なカロリー計算では測定できない雑多な滋養が含まれる。鼻腔に届く芳香も食欲をそそる。
家庭で手軽に「骨髄」を味わうなら、手羽先や骨付き肉の鍋などだろうか。
通院帰りに駅前で豚骨ラーメンをすするもよし、ご家庭で骨付き鶏の水炊き鍋を囲むもよし、骨髄料理を満喫するのもまた一興である。
今年も一年間、健康で無理なく過ごせるよい年になりますように。
2016年
9月
21日
水
今回は実際に患者様のご家族から頂いた質問に対してお答えします。緩和的治療を受けながら在宅で生活されている患者様に対して、何とか立ち上がりや立位が維持できるようにしたいとお話がありました。
実際のところ、在宅で生活されている患者様は病気の進行などによる様々な症状があります。その中でも食事摂取量が低下してしまうことが多いです。身体の中に栄養がない状態で、過剰なトレーニングを行うと却って筋力低下を起こす可能性もあります。
このような状況で立ち上がりや立位をどのように維持するかですが、介護者も行えるいくつかの方法を説明します。
上記のような患者様はベッド上で過ごすことが多く、下肢を曲げた安楽な姿勢で過ごすことが多いです。立つことを考える場合、下肢が曲がったままになってしまうとそれを保持するためにより強力な筋力が求められます。そのため最低限の関節可動域、筋力の維持が必要と考えます。
2017年
4月
29日
土
新入職・新入学にあたって、社会場面において「自己実現」という言葉を耳にすることが多いのではないでしょうか。また、これまでも「自己実現」という言葉に様々な場面で出会ってきた方がいらっしゃると思います。
今回は「自己実現」について簡単に説明していきます。
2016年
5月
27日
金
臨床血液 Vol.57(2016)No.2 p.118-128 東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 合山 進 先生