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APLのcoaglopathy 出血と血栓症

APLの完全寛解率は90%を超えるが出血による早期死亡率はまだまだ高く、9.4%というレポートもある。しかし出血だけではなく血栓症もAPLでは多いのである!!

1. Microgranular form APL(M3v)は全体の25%くらいになるがWBCが増加することもあり、出血のリスクは高い。

2. APL coagulopathyのメカニズム

  1. procoagulant:
    他の白血病細胞と比べてTF(tissue factor)とCP(cancer procoaglant)が多く表出されている。TFは正常組織でも悪性疾患でも凝固の始まりであり、またCPはcycteine proteinaseで第X因子を直接活性化する。ATRAの使用によりTFとCPの活性が低下する。
  2. Fibrinolysis:
    APLにおいてもFibrinolysisが大切な役割。ではFibrinolysisはDICにより2次的に起きているのか、それとも1次的なのか。これには議論がある。2次的という点はD-dimerが上昇しているという点から。また1次的という点はAPLではu-PA、t-PAが上昇し、plasminogen、α2-antiplasminが減少していることからきている。またAnnexinIIというplasminogenとt-PAに親和性の高いタンパクがAPLでは表出されていて、これがplasminogenからplasminへの転換を促進し線溶亢進に働く。さらにこれは脳の微小血管に多いとされ、APLで脳出血が多いことと関係しているかもしれない。
  3. Proteolysis:
    Elastaseやchymotrypsinといったgranulocytic proteaseが凝固因子やfibrinogenの分解に関与し、APLの出血に関係しているという考えがある。
    だが大きな関係はなさそうな実験結果である。
  4. cytokines
    色々なサイトカインが関係するが、なかでもAPL細胞から分泌されるIL-1β、TNF-αはapoptosisを誘導し、血管内皮におけるTF(tissue factor)の表出を上げる。また、これらのサイトカインはthrombomodulin(anticoaglant cofactor)を減少させ、つまり凝固に傾く。

3. APLの採血データ

  1. FBG(finrinogen)が特に下がる。61%で低下がみられる。DICの程度や凝固因子の補充が足りているかどうかの指標になる。FBGの寿命は非常に短くなっている(ふつうの輸血では90時間位あるが、それが17時間以下になる)。
  2. aPTTは正常のことも多く、PTは44%で下がる。
  3. D-dimerはかなり上がる。2次的な線溶の結果として上がるのである。FDPとともにDICのマーカーとして良い。
  4. PLTは著しく低下。入れても数時間しかもたない。
  5. その他の凝固、線溶マーカー
    TAT, Prothrombin fragment1+2, fibrinopeptideA これらは凝固活性化の マーカーで上昇する。またFDP上昇、u-PA上昇、plasminogenn減少
    α2antiplasmin減少は線溶活性亢進。
  6. protein, ATIIIは正常のことが多い。

4. 治療後のデータの変化

ATRA開始後7~14日で線溶活性亢進は改善傾向を示す。TAT,F1+2,D-dimerは改善してくる。

5. 臨床症状 出血

  1. FBG<100となるのが全体のAPLのうち1/2~1/3
  2. Creが増加している、末梢血の芽球が>30000、凝固異常ある、が寛解導入時の出血時のリスクファクター
  3. APLの治療前にどの位の人が出血で治療に入れないか?
    ・・・イタリアからの一つのデータでは5%
  4. アメリカのサーベイランスでも早期死亡は17.3%で、これはATRA導入前と後とで比べて(1992年から2007年)変化していない。Swedenのデータでも14日以内の早期死亡は26%
  5. 出血で多い場所は脳出血65%、肺出血32%、消化管出血である。
  6. トラネキサム酸を予防的に使用すると血栓症の比率が高い傾向にある。
  7. 脳出血にはPLT、 PT、aPTT、 FBGは直接関係なく、関係あるのはWBC数が多いこと。
  8. 日本のJALSGからのデータ
    重度の出血は6.5%にみられ、平均治療開始後5日以内。脳出血が多く、次に肺出血。FBG<100,WBC>20000,PSが悪い、RA症候群、肺炎の人により多くみられた。5年生存率は出血した人31%、出血なしでは68.1%と大きな差がみられた。

6. 臨床症状 血栓症

後方視的な研究719人のデータ
2.09%に静脈血栓症 APLで実は多かった。

観察研究AML 379人のデータ
全体では6.3%にみられ、症状があったのは3.4%、うちAPL9.3%と頻度が高かった。6か月後の累積の血栓症の率は8.4%だった。ATRAは直接血栓症のリスクとはならなかった。

その他のデータでも16~19%
剖検したら15-25%に血栓があったという報告がある。

血栓症がATRAそのものによるのか疾患からくるのかは分かっていない。
RA症候群と血栓症の比率が高くなるという報告もある。

  • 124人の観察研究 (イタリア GIMEMA)血栓症8.8% リスクとしてWBCが17000以上と多い、bcr3 transcript type、FLT3-ITD、 CD2、CD15陽性が関与。
  • 759人の観察研究(PETHEMA study)5.1%が血栓症
     18人 DVT、7人 CNS, 肺3人、心筋梗塞3人、他2人
    単変量解析ではFBG<170,Hb>10,M3v type, WBC>10000.
    多変量解析するとM3v,FBG低下がリスク
    ただしFLT3-ITD,CD2,CD15には関係が見られなかった。
    RA症候群では血栓症が起きやすく、トラネキサム酸の併用は血栓症が多くなる。

7. 26%がRA症候群に罹患、血栓症が起きやすいともされる。1-3週間後にみられる。

WBCが増加してくるときに起きてくる。発熱、体重増加、肺炎像、胸水などの血管透過性亢進症状がみられる。ATRAでAPL細胞が分化誘導されると1L-1β、IL-6,IL-8,TNFαが分泌される。これらはapoptosisを誘導。このapoptosisがthrombinを産生する。血栓に傾くというわけである。

8.RA症候群と血栓症

  1. PLTは3万/μL以上には保つ。3-5万/μLにできればした方が良い。
  2. FBG>150に保つ
  3. ヘパリンは一般的にルーチンに用いることは推奨されない。CR率、生存率に差はなし。初期死亡にも差はなし。
  4. 抗線溶療法は必要ない。
  5. リコモジュリンに対しても効果はまだ不明。

参考文献

  1. ChoudhryA et al. Bleeding and thrombosis in acute promyelocytic leukemia
    Am J Hematol.2012 Jun;87(6) 596-603
  2. Hau c Kwaan. Abnormalities inhemostasis inacute promyelocytic leukemia
    Hematological Oncology 2002;20:33-41
  3. Hau c Kwaan. Thromboembolic and bleeding comlications in acute leukemia
    Expert Rev.He,atoll 3(6)719-730 (2010)
  4. Robert.Kaplan et al.
    Mechanism of Coagulopathy associated with acute promyelocytic leukemia
    American Journal of Hematology 59:234-237 (1998)