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帯状疱疹 Herpes Zoster(HZ)

雑誌名

The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 2013.07.18 369;255-63

<疫学>

1. HZは年齢とともに頻度が高くなる。アメリカでは1年間に1000人あたり3-4人の発症率
2.リスク:年齢、女性、白人、HZの家族歴がある人。胎児や乳児のときに水痘を発症するとその後の小児HZと関連があり。T細胞性の免疫が低下している人、つまりリンパ腫、白血病、HIV、造血幹細胞移植後
3.ヘルペス後神経痛:10-50%に発症するが、不眠、食欲低下、威力低下、うつ、生活の維持が難しくなるなどの問題は大きい。他にもBell麻痺やRamsay Hunt syndromeや横断性脊髄炎、TIA、脳卒中などをおこしてくる。
4.眼科的合併症:角膜炎、胸膜炎、急性網膜壊死など
5.免疫抑制状態の人ではアシクロビル耐性ができたり、全身播種性の皮膚病変を呈する、慢性に疣贅病変が広がるなどの問題がおき、また肝臓、肺、脳、消化管などの多臓器に病変が広がることもあり、発疹がでる前に肝炎や膵炎になることもある。

<戦略とエビデンス>

(1)症状:発疹が出る2-3日前からちりちりしたり、痛みがその領域に生じる。皮疹ははじめ丘診として生じ、そこから水疱や膿疱へと進行する。それが3-5日続く。これは抗ウイルス薬を投与しても広がる。7-10日で痂皮化して乾燥する。一部には痛みは出ても発疹のないことがあり(zoster sine herpete)、診断に苦慮する。免疫の落ちた人はウイルス血症とともに全身播種性に皮疹が広がり、2週間以上続くこともある。一般的にそう痒症がでることもしばしばある。神経症状としては焼けるような感じやちりちりする感じ、触覚の異常、痛み刺激ではないのに痛みを感じたり、痛みが延長したりということがみられる。

(2)診断:多くは臨床的に診断されるが、非典型的な皮疹ではその病変の底部をVZV の免疫蛍光法に出したり、PCR法に出してみるとよい。PCRは感受性95%、特異性100%、免疫蛍光法 感受性82%、特異性76%。単純ヘルペスの広がりがデルマトームに沿って広がっているときや非定型な皮疹、免疫低下の人で播種性の発疹のときにはこれらのテストが参考になる。中枢神経系の血管障害のときには髄液のPCRが参考になる。また血液中と髄液中のVZVの抗体の比が上昇していることも有用である。免疫不全の肝炎や膵炎では臓器障害をおこしたHZを考えるが、そのときにも血液中のPCRを測定するとよい。また発疹のない痛みだけのVZ(zoster sine herpete)の際にも有用である。

(3)治療 
●抗ウイルス治療:年齢50歳以上、中等度以上の痛み、重度の発疹、顔面や目の領域、ほかにHZの合併症があるとき、免疫抑制状態では抗ウイルス薬による治療の対象となる。
経口薬でのbioavailabilityは1日3回のvalacyclovir, famciclovirのほうが1日5回のacyclovirよりもよい。これはVZVが単純ヘルペスよりもこれらの抗ウイルス薬に対して感受性が低いことからしても大切なことである。またvalacyclovir, famciclovirはHZの痛みに対してもacyclovirよりも優れているとされる。しかしvalacyclovir, famciclovirはほぼ同等である。
 抗ウイルス薬はa)病変の回復を早める b)新病変の形成を減らす c)ウイルスが隠れるのを抑制 d)急性疼痛の重症度を軽減するとされる。しかし抗ウイルス薬は後神経痛の頻度を減らすことはないというメタ解析がある。
 治療開始時期は発疹から72時間以内に始めるとされてきたができるだけ早いほうがよい。また72時間以上たっていても新病変がでているのなら抗ウイルス薬を開始してもよい。治療継続は通常7日間。
点滴でのアシクロビルの治療は入院を必要とする免疫抑制の患者や重症な神経合併症を伴う人にすすめられる。

●glucocorticoids: 免疫が正常の人のステロイド使用についてはcontroversial.
しかしrandomized control trial(RCT)ではa)急性疼痛を減らすb)日々の生活の活動性をあげるc)早期治療を加速させる d)完全治癒までの時間を短くする(あるスタデイでは否定)という結果がでている。ただし後神経痛の頻度を減らすことはなく、また抗ウイルス薬なしで単独で使用すべきではない。また糖尿病、高血圧、胃潰瘍、骨粗鬆症、高齢者では控えるべきであろうとここでは述べられている。中枢神経系の合併症たとえばベル麻痺などではステロイドが使用される。

●急性疼痛:軽症であればNSAIDs,アセトアミノフェン、重症であればオキシコドン。オピオイドはガバペンチン(ガバペン)よりも効果的であるが一部のスタデイではガバペンチンも疼痛を軽減するとある。またリドカインパッチも病変のない部分にははることができる。RCTでは三環系の薬剤では急性疼痛には効果がないとされるがオピオイドが効果がないときには使用されている。

●眼科的合併症:V1(三叉神経)領域、前頭部や上眼瞼、さらに鼻の横や視力症状があったときには眼科にかけるべきである。瞳孔を散瞳させてscarにならないようにしておくための点眼が必要だったり、ステロイド点眼が必要になることもある。免疫抑制の人で網膜壊死を起こしたら硝子体の中に抗ウイルス薬をいれることもある。

●後神経痛:局所リドカイン、pregabalin (リリカ)。オピオイド、3環系抗うつ剤、カプサイシンなどが治療薬として用いられる。この論文では詳細に述べられていない。

(4)予防
●ワクチン(日本にはまだないが・・・)
60歳以上にはワクチンが推奨される。高齢者になるとVZの頻度が高くなることと、後神経痛に悩まされることが多いからである。FDAでは50歳以上に打つことを薦めている。ワクチンの効果は50-59歳で70%、60-69歳で64%、70-79歳で38%である。ヘルペスの既往がある人も打っていいが、いつ打つのが良いかは定まっていない。VZに罹患して3年程度はワクチンを打ったのと同等の免疫があるとされているので、3年くらいしてから打つのがよいかと述べている。
 造血器腫瘍の人で寛解になっていない人、3か月以内に化学療法をしている人、T細胞を抑制する治療をしている人(CD4<200,)リンパ球<15%、PSL20mgを2週間以上使用しているような人、TNF阻害薬を使用している人はワクチンをうつべきではない。

●感染コントロール
 VZの発疹から感受性の人には移る可能性があり、免疫状態が正常の人では接触感染に注意するように局所的にカバー出来るならしたほうが良い。それでも移ることはある。また、罹患している人が免疫抑制状態だったり全身播種しているような場合には接触感染だけではなく空気感染にも注意して、病変がすべて痂皮化するまで管理(隔離)が必要である。

(5)まだ解っていないこと
どういう人が後神経痛のハイリスクでより積極的な治療をしなくてはならないのか。ワクチン禁忌の人の安全性と効果、ワクチンによる免疫の維持される期間、ブースターがいるかどうか。