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HO-1清水です。血液内科で学んだこと

血液内科のブログをご覧の皆様、はじめまして。湘南鎌倉の初期研修1年目の清水大です。簡単に自己紹介と宣伝をさせていただきます。出身は広島県、出身大学は岡山大学です。SMかと聞かれれば、Mです(笑)。激務と噂される湘南鎌倉を研修先に選んだのも、僕がMだったからに他なりません。ただ、集まってくる同期の仲間、研修医の先輩方に間違いはありません。志の高い、やる気に満ちた仲間に必ず出会えます。だって、みんなMだからです(笑)。このブログを読んでいる医学生のみなさん、是非見学に来てください。素敵な実習を保証しますよ。
さて、僕はこの
7月、田中江里先生のもとで血液内科を回らせていただきました。そこで少し長くなるかもしれませんが血液内科での研修の感想と、最近僕の考えたことを述べさせていただきます。
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ところで、みなさんはジブリの最新作『風立ちぬ』はご覧になりましたか?戦時中の日本のゼロ戦の設計者である堀越二郎をモデルとし、堀辰雄原作の『風立ちぬ』のストーリーとを融合させた、ちょっと不思議な映画です。映画のあらすじを知りたくない人のため、原作の小説について簡単に紹介します。

小説『風立ちぬ』は、結核に侵されている婚約者を主人公が彼女に寄り添って支えながら、しかしいずれ訪れるであろう彼女の死を予感しながら死ぬことの意味、そして生きることの意味を描いたものです。『風立ちぬ』という句は、ポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節Le vent se lève, il faut tenter de vivre” を堀辰雄が訳したものである、『風立ちぬ、いざ生きめやも』から引用した句だそうです。直訳すると、「風が(Le vent)立つ(se lève; 起こる、目覚めるの三人称)、生きようと試みなければならない(il faut; ~しなければならない、tenter; 試みる、de vivre; 生きること)。」今回の映画も、ただのラブストーリーではなく、生と死をテーマに描かれた素敵な作品でした。

この句の云わんとしている意味は私には良く分かりません。しかし映画を見て、この句は「生」に対する希望と、そして同時に、自分や愛する人を待ち構えている「死」に対する恐怖感や覚悟、さらに「死」の受容までも、すべてを凝縮したような響きがあるなぁ、と感じました。

血液内科の話に戻ります。血液疾患は決して不治の病ではありませんが、やっぱり病棟には亡くなっていく患者さんもいらっしゃいます。この7月はそんな患者さんから「どのような最期を迎えるか」ということを学ばせてもらった1か月でもありました。ある患者さんはとても可愛いおばあちゃんで、夜眠れないとき話をしに行くと「先生のおかげで眠れたよ」と言ってくれたり、ちょっと様子を見に部屋に行ったら、「もう帰っちゃうの?」と言ってくれたりする、思い入れのある患者さんでした。しかし病状の進行に伴って次第に意識も朦朧となり、以前のような会話も出来なくなってしまいました。その方に対しての私たちの方針は、自然の経過に任せるというものでした。亡くなる直前は少々呼吸は早かったですが、多くの家族に囲まれて、その病室にとても安らかな時間が流れている感じがしたのを思い出します。田中先生は毎朝の回診で、「最期を迎える瞬間のシチュエーションがとても大切」とおっしゃっていました。自分の大切な人が息を引き取るその瞬間は、見守っている人たちにとって当然のことながら一生脳裏に焼き付くものです。きっと寄り添う方々一人一人が、その人の「生」を振り返って様々な意味付けをし、大切な人を失うことへの恐怖を感じながら「死」を受け入れるのだろうと思います。そんな重要な瞬間を美しい姿で迎えてもらえるようにサポートしていく、ということも医療の大切な役割なわけです。この患者さんとの出会いのおかげで、最期の美しいひとときを僕も共有させていただくことができました。

 8月に入って産婦人科のローテーションが始まりました。今は新しい命の誕生の瞬間を共有させてもらっています。やはりこの瞬間も、そこにいる人にとって忘れられない時間であるし、美しくあってほしいですよね。だって新たな「生」に対する希望に満ち満ちた瞬間ですから。

 『風立ちぬ、いざ生きめやも―』

きっと一人一人に風は立っていて、それはその時の時代であったり、その人の運命であったり、気まぐれに吹くがゆえ吹くがまま受け入れなければならない風なんだと思います。そんな風の中に立つ人の、歓喜や希望、不安や悲しみ、色々な思いに寄り添っていける医療人でありたいです。

 まだまだ未熟な私を指導してくださった田中先生、玉井先生、稲垣先生、上田先生、14階スタッフのみなさん、そして多くを教えてくださった患者さん方にこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。