臨床血液 Vol.57(2016)No.2 P.91-97 金沢大学附属病院血液内科 山崎宏人先生
1.テロメア
小児患者ではテロメアの長さが短い場合には長い場合に比べて免疫抑制療法の反応性が低くなる。
またPNH血球陰性でテロメアが短い日とはそれ以外に比べて免疫抑制療法の反応性が低い。
またMDSやAMLに移行する患者ではmonosomy7がでる前にテロメアの著明な短縮が認められる。
移植のドナーを選ぶ際にもテロメアの長い若年者のほうがいいかもしれない。
2.制御性T細胞
再生不良性貧血の患者では有意にTregが減少しており、重症なほど減少の程度が強い。
またSDF-1αによる末梢血Tregの遊走能は健常人に比べて低下していて、Tregの機能異常もあるとされる。
またCXCR4の発現が重症度と関連して低下している。
ウサギATGとT細胞への影響としては、自己反応性のT細胞を直接抑制するだけでなく、もともと減少傾向のある
Tregを増加させる働き、Th1,Th17を抑制する働きがあると考えられる。
Th17は自己免疫疾患の発症に関係するエフェクターヘルパーT細胞で、再生不良性貧血の患者ではTh17 は増加し
ており、免疫抑制療法後にはTregと逆相関して低下してくる。ここで抗IL-17抗体を早期に投与するとTregが増加
してTh1が減少して血球回復することが示されている。
3.遺伝子変異とクローン性造血
再生不良性貧血の患者の1/3で経過中に白血病やMDSで認められるような変異をもった細胞が出現する。
その遺伝子とはPIGA,BCOR,BCORL1,DNMT3A,ASXL1で全体の75%をしめる。これら遺伝子異常は年令とともに
増加。この中でもDNMT3A,ASXL1は白血病を発症し、予後不良の傾向がある。
これらをみてみると再生不良性貧血とMDSを遺伝子異常のありなしで鑑別できないことがわかる。
4.ウサギATG
ウマATGよりも免疫抑制効果が強いとされる。ウサギATG治療後ではEBV再活性化によるEBV-DNA量が極めて
多くなり、再活性化の期間がウマATGよりも長い。発症の予知にEBV-DNA量のモニタリングをしたほうが良いと
されるが保険適応はなし。測定は全血、血漿、単核球のどれでも出来るが、また病変がリンパ節、臓器などの限局
しているときには血漿を用いたほうが良く、スクリーニングは全血が多い。
リツキサンを先行投与することで効果が期待できるが、EBV-DNAがいくつになったら始めたほうが良いという
基準はなし。
5.Eltrombopag
トロンボポエチン:巨核球、血小板のTPO受容体であるc-MPLに血法することで血小板産生を促す。
肝臓で産生されるが、血小板の数に関係なく一定で産生されている。
c-MPLは造血幹細胞やその他の前駆細胞にも票絀しているため、未分化な造血細胞にも作用
して造血を促進させる可能性がある。
難治性再生不良性貧血に対して16週のeltrombopagを投与したところ40%に1系統以上の造血が回復し、
最終的に3系統造血したものは16%あったと報告されている。
ただし経過中に染色体異常が発現。G-CSF併用時にも問題となる7番染色体については注意が必要である
(13q-は免疫抑制療法が奏功しやすい染色体異常とされる)。
■monosomy7の免疫抑制療法前、G-CSF前の注意
■ウサギATGのときのEBV-DNA量のモニタリング リツキサン投与のタイミング検討
■再生不良性貧血に対するEltrombopag