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AML(急性骨髄性白血病)の病態生理

雑誌名

臨床血液 Vol.57(2016)No.2 p.118-128      東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 合山 進 先生

1.AMLの病態生理
 AMLのゲノム異常 AMLのシークエンス研究によりAMLについて平均5個の疾患関連遺伝子変異が認められ、
 全症例で最低1つの疾患原因遺伝子があることもわかった。
 遺伝子異常のカテゴリー
 (1)ミエロイド分化に関係する転写因子:RUNX1,CEBPA
    これらが異常になると正常な白血球分化を阻害してそれがAML発症の引きがねとなる。
 (2)エピゲノム異常:DNAメチル化=DNMT3,IDH1/IDH2,TET2
    クロマチン修飾=ASXL1,EZH2,KMT2A,DOT1L
 (3)スプライシング関連遺伝子の変異:SRSF2,SF3B1,U2AF1,ZRSR2
    メカニズムはよくわかっていない
 (4)コヒーシン複合体遺伝子:STAG1,STAG2,SMC3,RAD21 機序は不明ながらこの異常が不適切な染色体
    分配に関係している?
 (5)NPM1異常 頻度が高い 機序はまだ不明
 (6)シグナル遺伝子の異常:FLT3,NRAS/KRAS,KIT,CBL 頻度が高い
 (7)TP53 がん抑制遺伝子の変異 ほかの固形がんに比べると少ないが予後不良因子となっている。

  いずれも単独でAMLをおこすことはないと考えられている。

2.2ヒットモデル:AMLの発症モデル (マウス)
   Class I変異 ミエロイド分化を阻害する
 ClassII変異 細胞増殖を促進する
 ヒトはマウスよりも腫瘍化しにくい生物である。

3.AMLの複数クローン
 AMLは診断時からすでに複数のサブクローンがいることがわかってきた。
 つまりAMLは単一クローンからだけなっているのではなく、異なる遺伝子変異のある細胞の集団なのである。
 これが抗がん剤が途中で耐性となったり再発することと関係があると考えられていて、実は再発時のクローンは
 初発時から存在することもわかってきた。

4.AMLの予後予測の遺伝子、染色体
 (1)ELM(European Leukemia Network)  
   予後良好:t(8;21)(q22;q22) inv1(16)(p13.1q22) t(16;16)(p13.1;q22)
        NPM1変異あり+FLT3-ITD陰性(正常核型)
        CEBPA変異(正常核型)

   中間型I   NPM1変異あり+FLT3-ITDあり(正常核型)
        NPM1変異なしFLT3-ITDあり(正常核型)
        NPM1変異なしFLT3-ITDなし(正常核型)

   中間型II  t(9;11)(p22;q23)
        予後良好にも予後不良にも含まれない遺伝子異常

   予後不良:inv(3)(q21p26.2)
        t(3;3)(q21;q26.2) GATA2-MECOM
        t(6;9)(p23;q34)DEK-NUP214
        t(v;11)(v;q23) KMT2A-rearranged
        -5ordel(5q);-7;abnl(17p), comlex karyotype

 (2)その他の予後不良:TP53,ASXL1,RUNX1

5.クローン性造血と前白血病幹細胞
 健常高齢者にもクローン性造血がみられることがあり、65歳以上では約10%で認められる。
 これがあるヒトはその後造血器腫瘍を発生する確率が有意に高い。またおもしろいことにそれらのクローン造血を
 認める人には冠動脈疾患や脳卒中が発生する頻度も高い。
 クローン性造血に関係する遺伝子変異は3つ。DNMT3a,tet2,asxl1 いずれもamlのエピゲノム遺伝子である。
 また最近ではAMLの中に前白血病幹細胞をいうべき細胞が存在すると言われ始めていて、それは造血幹細胞と
 同様に多系統に分化する能力と比較的強い幹細胞活性をもち、DNMT3Aなどの造血器関連の遺伝子変異がある。
 これらが体内で増殖して、さらにそこに遺伝子変異が加わることでAMLが発症すると考えられている。
 しかしクローン性造血があってもすべての高齢者がAMLとなるわけではなく、予防投与すべきかどうかは不明で
 ある。